83 地竜とオークが戦った
遅くなりました。
<(_ _)>
余程信頼されていたのか、巨大ダックを倒されたのが信じられないといった表情をする他のダック達だったが、その中の一匹が逃げ出したのをきっかけに、我先にと味方を押し退けて逃げ出す始末。
大混乱となった。
「逃げるグワ!」
「悪魔グワッ」
「助けてグワッ」
そこでアオが剣を鞘に納めながらつぶやく。
「悪魔は酷い」
オーク達の方の戦闘も終わったようで、ダック達が逃げ出して行くのが見える。
結局は俺達の圧勝だった。
これでアオとベルケの大体の実力は分かった。
まだ何か取っておきを隠してるかもしれないが、現時点でこれだけ知れれば十分だ。
もしこの二人と戦う事になっても、ラミとハピなら問題ない。
金等級といっても所詮は人間。
この程度か。
ダックからの戦利品として武器を集めていると、アオがせっせとダックの羽をむしっているのが見えた。
羽なんかどうするのかと思えば、矢の羽部分で使えるのだそうだ。
大した金額ではないが、少しは金になるらしい。
ふと、その横を見ると、ラミとハピも必死に羽をむしっている。
だが、こいつらの目的は矢羽ではない。
喰う為だ。
その証拠に、抜いた羽はそこら辺に放置している。
俺はラミとハピに小声で忠告した。
「人間のいる前では、ダックを喰うのは無しの方向で」
「え~、マジかぁ」
「それは無いですわ~」
人間の前では印象の悪い事は避けたい。
魔物といえども、人間のいる前では知性のある魔物は食べないようにしたい。
知性のある物を喰う習慣が、人間には無いからだ。
獣魔としての印象を出来るだけ、良くしておきたい。
ラミとハピは渋々羽だけを回収した。
そこへベルケが俺の横にやって来て言った。
「次はお前の強さを見せてもらう番だからな」
そう言われても、俺は魔物使いって事になってるからな。
ラミかハピに戦わせれば良いだろう。
俺が自ら戦いに出ることもない。
敵によっては、ダイにやらせても良いしな。
ダイもそろそろ新しい身体に慣れた頃だらうし。
それにベルケ、お前もゴーレムの戦いしか見せてないだろ?
そして俺達は川を渡って、再び道を進みだした。
オーク達もしっかりついて来る。
そういえば、俺の自宅のオークキャンプには、十人までと伝えているはずだ。
それで今あそこにいるのが十人、つまり全員が俺について来たのか。
となると俺の自宅の留守番はいないのか。
ちょっと心配だな。
そうなると鉱山の監視には、一人も行ってない事になる。
良いのかそれで?
まあそれは帰ってから聞いてみるか。
そこからは特に魔物に出会うこともなく、無事に目的地に到着する。
ここで馬車を置いて、繁殖地までは歩いて移動だ。
ここが俺達のベースキャンプ地となる。
オーク達もこの近くで野営の準備を始めた。
ある程度に野営地が出来たところで、遂に地竜の卵を目指して出発となる。
目指すは歩いて半刻ほどの場所だ。
オーク達は二人を野営地に残して、八人で俺達について来る。
それもかなりの重武装だ。
太い投げ槍を二本ずつ持って、大きな盾を装備している。
地竜をかなり恐れているようだ。
強敵かもしれないが、今回のお目当ては卵である。
討伐しなくても、卵を手に入れられれば良いのだ。
俺が考えるに、ハピに卵を持たせて空中に逃げさせれば、地竜は手が出せない。
それで俺達の勝ちだ。
そして意外と早くに地竜の巣を見つけた。
巣には親と思われる地竜が一匹いる。
周囲は岩場と低い草他のような場所だ。
その岩の隙間に木の枝を集めて作った、まるで鳥の巣の様でもある。
茶色の肌をしているのだが、表面がゴツゴツしている。
凄く硬そうに見える。
人間の五人分ほどの長さがあるか。
やはりデカイな。
まずは親の地竜を巣から離さないといけない。
やり方としては囮役が親地竜を威嚇して、巣から徐々に離れさせる。
その隙に強奪役が卵を持ち去る。
これが一般的なやり方らしい。
アオもベルケも地竜は初めてという。
だからこの作戦の経験者無し。
ダメ元でオークにも聞いてみたら、なんと経験者がいた。
地竜の卵は旨いとまで言う。
折角だからオーク達のやり方を見てみようという話になり、それをオークの隊長に話すと快諾。
俺達は離れた所で腰を下ろした。
オーク達は巣の周囲を取り囲む様にして、その輪を徐々に狭めて行く。
囮は無いようだな。
しかしどこまで輪を狭めて行くのだろうか。
このまま行くと、地竜に触れる距離まで近付いてしまうぞ。
そこで地竜に変化があった。
突然頭を高く上げる。
オーク達は一斉に姿勢を低くする。
地竜はそのまま周囲を警戒するかのように首を回す。
そして立ち上がった。
次の瞬間だった。
「ウラー!」
オーク隊長の掛け声で突撃が始まった。
作戦なんか無い。
単なる突撃だった。
だがある一定の距離を保ち、オーク達は持っていた投槍を次々に投げ放つ。
標的は大きいから確実に命中する。
だが投げた槍が突き刺さるのは、その内の半数以下だ。
硬い皮膚が槍を拒むのだ。
刺さったとしても深くまでは突き刺さらず、地竜が動けば抜けてしまう程度。
始めは何て無謀なやり方だと思ったのだが、しっかり距離を取っているのを見ると、しっかり考えてはいるんだな。
それに地竜は卵を守る為に、その場から離れない。
距離を取って槍を投げているだけならば、全く問題無かった。
それを見てベルケがつぶやく。
「オークは頭が悪いと思ってたが、こう見ていると、そうでもないんだな」
実は俺も同意見だが、口には出さないでおこう。
オーク達は卵を盗ろうと接近しようとするのだが、中々させてもらえない。
特にあの尻尾が脅威だな。
尻尾を振られると、かなり遠くまで届いている。
その内、無理に接近しようとしたオークが、尻尾の一振りをまともに受けてしまう。
空中に浮いたそのオークは、木に激突して口から鮮血を吐き出した。
その攻撃でオーク達の輪が広まる。
どう見てもオーク達は卵を取れそうにないな。
そこでベルケ。
「お前の番だよな?」
そう言って俺を横目で見た。
次の投稿は明後日(明日?)の夜の予定です。
「いいね」引き続きお願いします。
ブックマークが遂に1000件超えました。
ありがとうございます!