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73 新たな襲撃者が現れた








 俺は右腕の筋肉を隆起させると、その腕でもって掛け声と共に槍を投げ放った。


「ヴァゥフッ!」


 俺の槍は背中をこちらに向けたワイバーンに命中した。

 オークの矢を胸に受けた個体だ。


 広げた翼を貫き、刺さったままの状態で槍は留まる。


 やや遅れてラミの投げた槍が同じワイバーンを襲う。

 俺と考える事は一緒か。


 ラミの槍はそのワイバーンの首筋を切り裂き、地面に突き刺さった。

 「ちっ」っと舌打ちするラミだが、切り裂いたワイバーンは相当な出血だ。

 外れなんかではない。

 ラミの放った槍も命中だ。


 傷付いたワイバーンはその場で翼を羽ばたかせるが、空に舞い上がる事は出来ないでいる。

 出血も酷いから放っておいても死ぬ。


 しかしそこへ、ハピの弓矢攻撃が続いた。

 連射だ。


「矢ですわ、矢ですわ、矢ですわよ!」


 マジックミサイルの矢が次々に飛んでいく。

 前の時よりも大分上手くなったな。

 かなり当たるようになっている。


 しかし殆んど効いていないように見える。

 マジックミサイル程度の威力じゃダメか。


 しかし効果はそれ以外であった。

 他のワイバーン達が上空へ逃げ始めたのだ。


 傷付いた一匹だけを残して……


 ダイは自分の牙でロープを咬み切り、こっちに「キャンキャン」鳴きながら走って逃げて来た。

 『俺の役目は終わったよな?』と言っている。


「今だっ、(とど)めを刺しに行くぞ!」


 そう叫んで俺は先頭を切って走り出す。


「よっしゃあ、やってやるぜ」

「ぶち殺しますわ」


 ラミとハピも俺に続く。


 そして翼が傷付いたワイバーンの目の前まで来た所で、後方の異変に気が付いて振り返る。


「止まれ、あれを見ろ」


 ゴブリンの集団が、森の奥からこちらに向かって進んで来る。

 たかがゴブリンなのだが、その数が尋常じゃない。


 いち早くハピが、上空へと舞い上がりそれを確認する。

 そして俺達に大声で伝えた。


「す、すごい数ですわ、百匹以上はいますわよ!」


 何でこのタイミングで、そんな数のゴブリン集団が迫って来るんだよ。

 まさかワイバーンを助けるためとか?

 この地のゴブリンは、ワイバーンと共存している。

 もしかしてそういう関係があっても、おかしくはない。

 ゴブリン自体はザコだが数は暴力だ。

 獣魔達も騒ぎだす。


「私が蹴散らしても良いけどよ、数が多すぎるんだよな」

「ライさん、どうしますの、どーしますの?」

『ライ、今度はお前が(おとり)をやれ!』


 どう見ても逃げ切れないな。


 だったらやる事はひとつ。


「全員、対音響防御!」


「マジか!」

「待って下さいですわっ」

『この体で耳を塞ぐのは大変なんだぞ!』


 俺は変身を始めた。


 獣魔達は耳を塞ぐから無防備になる。


 目の前にゴブリンの集団が迫る。


 腕の変身完了。


 ゴブリンの先頭が斬り込んで来た。


 狼と化した手の爪を振るう。


 顔面が血みどろになったゴブリンが地面に伏す。


 足の変身完了。


 くるっと回転して回し蹴り。


 頭が陥没した二匹のゴブリンが吹っ飛んでいく。


 頭の変身完了。


 縮こまるダイにゴブリンが迫る。


 牙を剥き出しにしてそのゴブリンの首に噛みつく。


 首をぐるりと回して、そのゴブリンを投げ捨てながら首を喰い千切る。


 生暖かい血が俺の口から垂れる。


 ゴブリンの集団の奥の方で何かが光る。

 

 ゴブリンシャーマンか。


 何かの魔法を放ってくるようだ。


 ならば、こっちもいく!


 



「ヴォオオオ~~ン!」





 ハウリングだ。


 ほぼ同時だった。


 数本の氷の刃が俺に迫る。


 手で払う。


 左腕に痛みが走る。


 だがハウリングは続ける。


 ゴブリン集団の歩みが止まる。

 

 シャーマンが崩れ落ちる。


 俺の勝ちだ。


 ゴブリン程度の魔物なら最初の一声で終わりだ。

 直ぐにゴブリンの集団は地面に転がりピクピクし始めた。

 上空にいるワイバーンは逃げ出していく。


 あまり長時間やると味方に被害が出るからな。

 この辺にしておくか。


「おい、ゴブリンどもの戦利品を集めてくれ。俺はワイバーンの……」


 獣魔達は耳を押さえたまま気を失っていた。

 なんかまたハウリングの威力が増した様な……


 取りあえずヒールポーションで獣魔達は治癒しておく。

 これで手持ちのヒールポーションは無くなったが仕方ない。


 それでも直ぐに全快で動けるようになるわけでもなく、しばらく獣魔達は森の中で休憩だ。


 俺は翼に槍が刺さったワイバーンの所へ行く。


 虫の息だった。

 ワイバーンの手にあたる部分は翼だ。

 つまり翼のある二足魔物。

 そうなると体の作り的にも耳を塞げないから、音響系の攻撃は絶大な効果があったみたいだ。


 空を見上げたが、他にワイバーンは見当たらない。

 今がチャンスだ。


 ワイバーンは止めを刺して血抜きする。

 こういった処理は人間のやり方が一番だ。


 血抜きするとか良く考えたものだ。

 魔物じゃ絶対に考え付かないし、亜人の中でもそういった細かい芸当が出来る種族は数少ない。

 人間は食い物に関しては、恐ろしいほど味への追及をするんだよな。

 調理方法があれほど多い種族は人間だけだ。


 しかし近くで見ると本当にワイバーンってデカい。

 デカいのだが、喰えるところはモモ肉だけ。

 他は筋が多くてスープの材料にしかならないらしい。

 モモ肉はアグリッパの店へ卸すとして、他の部分はギルドに持って行くか。

 

 俺は一人解体作業に移った。


 しばらくして獣魔達がやって来た。


「ライさん、悪いな。もう大丈夫だ。何か手伝うよ」


 最初に来たのはラミだ。

 そして次に来たのがハピ。


「お待たせしましたですわ。もう動けますわ」


 ニ人はゴブリンの戦利品集めだ。

 数が多いから角でも結構な金額になる。

 それにゴブリンシャーマンなら、何か持っているかもしれない。


 解体が終わると、肉はかなり少ない量になった。

 身体の大きさに比べて肉部分が、恐ろしく少ないからだ。

 これなら持って帰れる。


 だがやはりモモ肉以外は持ちきれない。

 馬車と何往復かすれば良いのだが、それもここでは危険だ。

 なんぜドラゴンも生息しているからな。


 なのでモモ肉は全部持つとして、他は無理しない程度で持った。


 しかしラミとハピは、少しでも多く持って行こうと必死だ。

 二人の表情を見れば一目瞭然だ。

 人間はモモ肉しか食べないかもしれないが、魔物ならそれ以外の部位でも食べるからな。


 絶妙なバランスと馬鹿力で、大量のワイバーン部位を担いで歩くラミとハピ。


 こいつら、喰う事にかけては手を抜かないのな。








次の投稿は明後日の朝の予定です。



引き続き「いいね」をよろしくお願いします。




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