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56 献上品が紛失した



遅くなりました!










 恐らくダックの待伏せは、ハピの竜巻魔法で全滅だろう。

 結果的に味方は無傷で待伏せを突破出来たのだが、俺はハピに話し合いで解決するように言ったはずだ。

 それが何故か大乱闘。

 勝手にハピが暴走した感じだ。

 それで俺は、思わず「飯抜き」と言ってしまった。


 それからというもの、馬車の中でハピはずっと落ち込んでいる。


 俺としても一度口に出した事だ、今更取り消すのも何だか違う気がする。

 間違っているのはハピだ。


 レンドン子爵からも「話し合いじゃなかったの?」って言われたし。

 返答に困ったよ。


 この事が原因でこの街道でダック族と全面戦争とか笑えない。


 そして昼頃になって、隊列が街道の脇で停止した。


 食事の時間だ。


 ハピとは対照的に、ラミがいつになくはしゃいでいる。


「いやあ、今日の昼飯はホーンラビットのスープみたいだぞ。ああ楽しみだな。熱々のスープにパンを浸して食べると、あの固くて不味いパンがな、旨く感じるから不思議だよなぁ。な、な、ハピ、どう思う?」


 こいつ、性格が人間っぽくなってきたな。


「おい、ラミ。それ以上言ったらお前も“飯抜き”にするぞ?」

 

「もうしゃべりません、それだけは勘弁だ!」


 食うことしか楽しみがないのか。

 人間の料理の味を覚えてから、だんだんと意地汚くなっていく気がする。


 食事の時間になると、ハピが隅の方で小さくなっている。


 さすがに可哀想になった。


 俺はハピに歩み寄り声をかけた。


「ハピの食事は無しだから、代わりに俺のを半分やる」


 そう言ってパンとスープを半分渡した。


「ライさん……お気持ちは有難いのですが、ハーピー族とライカン族との間には、卵は宿せないのですわ」


 こいつ、何か勘違いしとる。

 ったく!


「やっぱ気が変わった」


 俺は食事は渡さずにクルリと反転した。

 

「あら、ライさん? わたくしのお食事は……」


「何の話か見当もつかないな」


「え、え、そ、そんな酷いですわ。求婚しておいてそれは無いですわ!」


「何でそうなる!」


 するとラミが横から出てきた。


「ああ、スープがうめえっ。ハピ、今日のスープは格別だぞぉ」


 こいつら、駄目だなこりゃ!


 俺はイラっとしてラミに体当たりしてやった。


「おっと、悪いな。足元がふらついた」


「ひえ~~、スープが、私のスープがこぼれたぁ!」


 どうやら俺の性格も、すっかり人間っぽくなってきたようだ。


 そこでダイから念話。


『ハーピー族の求婚は、男が女の所へ行って食事を半分渡すことだよ。それは将来共に食事を分かち合おうという意味らしいよ』


 俺は身震いした。




 後で聞いた話だが、ハピが竜巻魔法でダックどもを蹴散らしている間に、数匹のダックが隊列の後方から接近したらしい。

 しかしそいつらは、兵士達が追い払ったそうで問題ないそうだ。







 そして遂に王都が見えてきた。

 思った以上にデカイ。

 城壁で囲まれた街なんだが、城壁の外にも街が広がっている。

 貧困層の街だ。


 貴族専用の門を通って城壁の中へと入った。

 なんと街中を川が流れている。

 その川が輸送手段になっているようだ。

 多数の船が行き来しているのが見える。


 そして街の中央にそびえるのが王城だ。


 俺はダイに小声で話し掛ける。


「魔王に会う前に、人間の王に会う事になるとは思わなかったな」


『俺も会えるのなら、人間の王を見るのは始めてだよ』


 そんな話をしている内に王城に到着。

 荷物の積み降ろしをしていると、使用人達が騒ぎだした。


「そんな筈はない。ちゃんと確認して積み込みましたから」

「それでは何で無いんだ!」

「捜せ、捜すんだ!」


 失くし物らしいが、俺達には関係ない。

 と思っていたのだが、騒ぎは大きくなるばかり。

 終いには、俺達の馬車までその手が及んだ。


 兵士数人が申し訳なさそうに、俺の前に来て頭を下げた。


「ライ殿、大変申し訳ないのだが、荷物を改めさせて欲しい。べつに疑っている訳ではない。ただ、こちらの馬車の荷物に間違って混入している可能性もあるというだけです。どうかお願いします」


「構わないが、何を捜しているんだ」


 俺の質問にその兵士は、言いづらそうに話し始めた。


「実は王様への献上品が見つからないのです」


 早い話が“お土産”だな。

 といっても、王様に渡すくらいだから、かなり高価な物か珍しい物なんだろうな。


「それでその献上品って何だ?」


「はい、それがライ殿がダンジョンで見つけた、水が湧き出るコップなんです」


 それは珍し過ぎる品物だな。


「代わりの物は無いのか。ここは王都だし、その辺で買ってくれば良くないか」


「ライ殿、ダンジョン産の魔道具のコップに匹敵する品物が、その辺の店で売ってるとお思いか?」


 確かにな、売ってる訳ないか。


「売ってないよな。なら、もし見つからない時はどうするんだ」


「いや、見つけ出す。何としてもだ」


 そこへハピが横から口を挟んできた。


「それって多分ダックの仕業ですわ」


 それを聞いて有り得なくもない気がする。


「ハピ、説明してくれるか」


「ええ、わたくしが竜巻で敵を吹っ飛ばしている時ですわ。後ろの方でダックが数匹馬車に近付いていましたわ。上空からは丸見えですわ。そいつらがきっと盗んだのですわ。あいつらダックは、そういう抜け目ないところがあるのですわよ」


 その話を聞いた兵士が、納得したように言った。


「確かにあの時に隊列の後方で、数匹のダックが近寄って来ていました。今考えると馬車から出てきた様にも思えます。そうなると、ダックに盗まれた可能性が高いですね。これは直ぐにレンドン子爵に報告します!」


 兵士は走って行ってしまった。


 王様への献上品だから、どうせ高そうな箱にでも入れてたんだと思う。

 そんな箱なら、真っ先に盗まれる。

 ダックも知らずに盗んで大当たりだ。

 今頃は大喜びしてるだろう。


 そうなると、献上品はどうするつもりだろうか。

 ダンジョン産の品物に匹敵する物なんか、そう簡単に見つかるはずが――


 そこまで考えて思い出してしまった。


「あ、俺、ダンジョン産の召喚石、持ってるな」












日間アクション部門でなんと一位になりました!

ブックマ、評価、ありがとうございます。

徐々にではなく、一気に上がったのでちょっとびっくりです。


ストックが少なくなってきましたが、これでもう少し頑張れます。

ありがとうございます!




面白かったら「いいね」ボタンよろしくお願いします。




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