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44 勇者は隙だらけだった








 ダンジョンに潜ってそれほど時間は経ってないが、俺達には大きな収穫があった。

 それは“勇者はトラップに引っ掛かる”って情報だ。

 つまり勇者は隙が多い!


 このダンジョン、まだまだトラップは沢山ある。

 こんなんで勇者が死ぬとは思わないが、あの野郎が苦しんでる姿を見るとワクワクしてしまう。

 どうにもあの勇者や、その取り巻きの女の性格は好きになれない。

 そもそも勇者は敵だしな。


 そんな思いをいだきながら、先へと進んで行く。

 この先は魔物に良く遭遇するポイントだ。

 そして最初の魔物と遭遇した。


 ダイはかなり前から気が付いていたが、勇者は直前まで気が付かなかったようだ。

 斥候系のスキルは、誰も持ってないのかもしれないな。

 しかし出現した魔物は最弱クラスだ、残念!


「ジャイアントラットだ、気を付けろ!」


 やっと気が付いた勇者が叫ぶと、後ろの二人の女が魔法の詠唱を始める。


 数は三匹なんだが、わざわざ魔法を使うとは、なんて贅沢なんだよ。

 魔力に余裕があるのかもしれない。


 勇者がジャイアントラットの攻撃を盾で弾くや、直ぐにその場で身を低くして叫ぶ。


「リン、頼む!」


 神官戦士の女が魔法を放つ。

 

 するとジャイアントラットの動きが急に遅くなる。

 地面に足がくっついたようになった。

 動けなくはないが、動作は非常にゆっくりだ。


 続いて勇者が声を上げる。


「ヒマリ、今だ!」


 今度は魔法使いの女が杖を振りかざすと、ジャイアントラットがいた地面から炎が上がった。


 逃げるに逃げれないジャイアントラットは、鳴き声を響かせて苦し悶える。

 

 最後には煙と化して消えていった。


「二人ともいいぞ、中々の連携だったな」


 勇者が褒めると二人の女は嬉しそうだ。


 確かに連携は良い。

 狭い通路で三人が上手く立ち回ったとは思う。

 でもだ、たかだかジャイアントラット三匹だぞ?

 そんなザコ倒して喜んでるレベルなのか?

 実はこいつら弱いんじゃないのか。


 ちょっと気になってきたな。


「ええっと、勇者……タナカだったか。聞きたいことがあるが良いか」


「ハルトで構わないよ。で、聞きたい事って?」


「そうか、ならハルト。勇者になってどのくらいになるんだ」


 すると勇者ハルトは二人の女を見る。

 そして代わりに女達が答えた。


「私達って初めから加護持ってたよね。それ考えたらさあ、ハルトが勇者なのって異世界転生した時からじゃないの?」

「そう、そう、だから半年くらいじゃない」


 転生しただと?


「おい、ちょっと待て。転生したってどういうことだ」


 すると勇者ハルト。


「流行の異世界転生ってやつだよ。ってこっちの世界じゃ珍しいんだっけ」


「異世界転生とは何だ?」


「うーん、何だと言われるとなぁ。その辺は僕にも詳しく分からないんだよな」


 色々と質問したが、帰って来た内容は俺の理解を超えるもの。

 なので早々に質問をするのを止めた。


「ダイ、分かるか?」


『分らん』


 ダイでも分からないものは俺には分からん。


「時間を取らして悪かった。先を行こう」

 

 俺はダンジョンの奥へと勇者一行をいざなった。


 ダンジョン内で話を聞きながら進んでいると、彼らは別世界の人間ということは理解できた。

 その別世界では魔物なんていないという。

 彼らの話を聞いていると、本当に別世界から来た人間らしく、考え方からが普通と違う。


 例えば魔物は基本的に悪い奴だが、中には味方する魔物もいると思っている。

 彼らの話の中では、やたらと“アニメの中では~”とか“漫画の中では~”とかというキーワードが出てきた。

 それが何だか分からないが、その情報によると魔物に転生する“チート”とかいうスキルや、魔物を召喚する“チート”というスキルがあるらしく、いつも魔物が敵とは限らないらしい。

 これを聞くと勇者だからと言って、必ず俺達の敵になるとは限らないか。

 少し安心した。


 だけどこいつら変わってるよな。


 そう言えば勇者になって半年くらいとかって言ってたな。

 元の世界では戦闘なんてしたことないって言ってたし、それならジャイアントラット相手のあの戦闘も理解できる。


 話を聞いてたら、何だかこいつらが可愛そうになってきた。

 知らない世界に連れて来られて、戦いも知らなかったのに戦闘訓練をさせられ、魔物と戦わされているんだからな。

 それで最終的には魔王を倒せと言われているんだから。

 今この場で魔王が出現したら、こいつら瞬殺だぞ?


「なあ、お前たちってさ、何の為に戦ってんだ?」


 思わず聞いてしまった。

 すると勇者ハルト。


「何の為って言われてもさ、異世界転生だよ。強くなって魔王を倒すでしょ、普通。それに前の世界ではさ、パッとしない生活だったんだよね。実はさ、外見もこんなイケメンじゃなかったんだよ。ははは、イケメンになってさ、勇者、勇者って持てはやされたらさ、それ以外に道はないっしょ?」


 女二人も同じようなこと言う。


「私もそう。実はね、アニオタでさ、ギャルに憧れてたんだよね。だからこっち来る時にギャルの外見を神様にお願いしてね。可愛くてアニメの主人公みたいでしょ。それにチート能力あるからね、皆がチヤホヤしてくれるんだもん」


「私なんかいじめられっ子だったんだよね。中学、高校とずっとブス、ブスっていじめられてて。でもそんな奴はここには誰もいないんだもん。それに可愛い顔になって生まれ変わったんだし。そりゃ頑張っちゃうよね」


 何か良く分からないワードがチョイチョイ出て来るが、前の世界では余り良い生活じゃなかったのは分かった。

 

 実は悪い奴らじゃないのかも。

 

 そんな話をしていたら、トラップ場所へとやって来た。

 足を踏み入れると壁の両側から炎が噴き出る仕掛けだ。


 そのトラップの場所だけ通路が広くなっている。


 勇者ハルトがその場所へと足を踏み入れようとする。


 その瞬間だ。














次の投稿は明日の夕方の予定です。



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