40 ダンジョン情報を教えた
「分かった、教えてやる。あのコップはダンジョン内で見つけたんだよ」
俺がそう言うと、ギルド長はつぶやく。
「信じられん。ダンジョンが出現したと言うのか。勘違いではないのか?」
「勘違いと思ってもらった方が俺達には都合が良いがな。証拠はその魔道具だ。ダンジョン内は迷路になっていてトラップがあったり、魔物が湧き出て来る。それに倒すと煙の様に消えてしまったな。普通の魔物とは違うだろ」
ギルド長はアゴに手を当て少し考えてから言った。
「確かに伝承のダンジョンと特徴は同じじゃな。それが本当にあるとすると一大事じゃぞ」
そうなんだ。
魔道具をギルドに持ち込んだのは迂闊だったな。
個人店で売りさばけば良かったか。
その前にラミを連れて来たのが失敗だった。
「で、どうなるんだ、あのコップ。それとダンジョン」
「コップは喜んで買い取る。魔道具としては素晴らしい品物じゃ。高値で買わせてもらう。今、鑑定員が詳しく調べているところじゃ」
俺としてはそれで十分だ。
とにかく金に換えておきたい。
ちょうどそのタイミングで扉がノックされ、ギルドの鑑定員とやらがコップを持って入って来た。
「ギルド長、鑑定結果が出ましたが……」
何か躊躇っている?
「どうしたのじゃ、鑑定結果は出たんじゃろ?」
ギルド長の促しでやっと鑑定員が続きを告げる。
「はい、それが変なんです。このコップは確かに魔道具なんですが、どこにも魔石らしいものが見当たらないんです」
「魔石はないじゃと? それならどうやって魔力を補充しておるのじゃ!」
「それが解からないのです。魔力が無い者が持っても水は湧き出てくるんです。全く不可解です」
良く分からないが、普通の魔道具じゃないらしいな。
そんなことより幾らもらえるんだよ。
そっちが早く知りたい。
「ちょっと良いか。真剣な話の最中で悪いんだが、結局いくらで買い取ってくれるんだよ」
待ちきれなくて言葉を挟んでしまった。
すると鑑定員。
「困りました。ダンジョン産と分かれば高価格で引き取りますが、今の所は難解な魔道具扱いですので、そうですね、金貨三十枚ってとこです」
金貨三十枚ってことは銀貨にして三百枚か。
となると借金が返せるじゃねえか!
これは凄い。
「売った!」
俺は即答した。
「本当によろしいので?」
「ああ、構わない。面倒臭いのは好まないからな。即金で頼む」
鑑定員はギルド長をチラッと見る。
するとギルド長は小さく頷く。
「分かりました。それでは買取金をお持ちします」
そう言って退室して行く。
そこでギルド長が再び口を開く。
「それでじゃ、ダンジョンはどこに出現したのじゃ?」
仕方ない、こうなったら話すか。
「俺が住んでいる場所のすぐ近くだ」
「そうか。ならば明日にでもその場所へ、ギルド員を案内してくれるか。恐らく領主様の兵士も同行すると思うがのう、どうじゃ?」
どうせ、断れないんだろうな。
「ああ、なら明日の朝にギルドに迎えに来る。それで良いな」
「分かった、待ってるぞ」
俺は受付で金を受け取り冒険者ギルドを出た。
その足で商業ギルドへと向かう。
目的は家を買った時の残金の支払いの為だ。
残金は銀貨三百二十枚。
今なら払える!
俺はラミと一緒に商業ギルドへと行った。
そこで借金の返済だ。
これで俺は借金はなくなり、あの家と敷地は正式に俺の物となった。
証書も貰った。
つまりあの敷地は俺の土地だ。
ということは、あのダンジョンも俺の土地。
そうなればそう簡単に手を出せないだろう!
ふははははは、俺の頭脳勝ちだ!
甘かった。
俺の考えが甘かったのだ。
翌日の朝、昨日に懲りて今日はダイを連れて冒険者ギルドへ行った。
ハピとラミは留守番でダンジョンの見張りだ。
冒険者ギルドには領主の文官と兵士が十数人、それにギルドから派遣された金等級冒険者パーティーとギルド員がいた。
そこで文官に話を聞いて初めて知った。
何でも領内の土地は全て所有権は領主にあると。
領民は土地の利用権を買い取るだけだと。
領主はいつでもその土地を接収する事が出来るんだと。
その話を聞いた時、久しぶりに怒りが込み上げてきた。
その場で全員をぶち殺しそうになった。
その時はダイを連れて来て良かったと思った。
ダイが俺を制止してくれたからだ。
ハピやラミだったら、一緒になって大乱闘だっただろう。
ただ、ダンジョンかどうかの判断は慎重らしく、まだこの場では判断しないみたいだな。
だから土地の接収もまだ、判断は先送りだ。
しょうがないから馬やら馬車を引き連れて家へと案内する。
家に着くとハピとラミが驚いた顔をする。
まさかこんな大人数で来るとは思ってなかったんだろうが、それは俺も同じだ。
俺はハピとラミの二人には「勝手に暴れ出すな。俺が暴れるまで待て」とこっそり伝えた。
そして大人数を引き連れて例のダンジョンとやらへと案内する。
「ここがその穴だ。入りたけりゃ勝手に入れ」
俺はそう言い放つと、その辺の地面に腰を下ろしてくつろぎ始める。
ダイやハピやラミ達も、俺の近くで同様に寝転んだりしてくつろぎ始めた。
それを見た冒険者や領主の家来たちが慌て始める。
文官がギルド員に何か言ってるな。
そのギルド員が渋々俺の所に来て言った。
「ええっと、ダンジョンへは誰も入ったことが無い。すまんが先導してくれんか」
イラっとくるな。
だがそこは我慢だ。
「俺達も一度しか入ったことが無い。先導など出来るか。だいたいな、先導なんかしたらよ、命がけになるだろ。俺達に何の得があるんだ、教えてくれ」
すると困ったようにギルド員。
声のトーンを落として話しだした。
「領主の家来がいるんだぞ。あまり彼らを怒らせないでくれ」
「だが断る!」
言ってやったぜ。
ギルド員はすごすごと下がって行き、領主の文官の所でこっちをチラチラ見ながら何か話している。
すると兵士の隊長らしき男が、部下に何か指示を出し始めた。
そうなると兵士達は殺気だち、手早く装備を整え出す。
これは戦闘になりそうだ。
俺は黙って立ち上がる。
俺の気配で感じ取ったのか、ダイが立ち上がって首をぐるりと回す。
続いてラミが蛇の部分をSの字に曲げて、いつでも飛びかかれる態勢を取る。
手には盾とロングソードだ。
ハピも立ち上がり、若干空中に浮いた状態でハルバートを構える。
兵士達が号令の元で隊列を組んだ。
冒険者の金等級のパーティーもしょうがないと言った感じで立ち上がる。
ダイが念話を送って来た。
『兵士はザコだ。金等級のパーティーを先にやった方が良いな』
「了解だ」
これで人間社会とはおさらばだ。
俺達はオーク社会で生きる。
次の投稿は明日の昼頃の予定です。
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