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34 デブガエルを倒しに行った







 皆に『巨大毒ガエル』の討伐依頼の説明をすると、真っ先にラミが反対した。


「ちょっと待ってよ、それってデブカエルのことだろ。あれは私の毒が効かないんだよ。ダメだ、ありゃ止めた方が良い」


 つまりラミは、自分の得意の魔法攻撃が効かないからやりたくないって言ってるのだ。

 ワガママ言いたい放題だな。

 それにハピまで。


「あのデブガエルは触ると皮膚が溶けるのですわ。そうなると私の爪が使えないですわよ。だから私もあのデブカエルはお勧めしませんわね」


 二人とも反対だそうだ。

 しかしダイは違った。


『触らなければ良いのだろう。どうせ武器は舌を伸ばす攻撃だけだろ、射程範囲外から攻撃すれば良いだろうに』


 そうか、飛び道具があれば一方的に攻撃できるか。

 あ、そう言えば思い出したことがある。

 オークから貰った槍が十本だ。

 売って金にするつもりだったが、すっかり忘れていた。

 まだ馬車の中に入っているはずだ。

 その槍は十本もあるから、投げ槍として使っても足りそうだ。

 なんだ、やれそうじゃないか。


 最後までラミとハピは反対気味だったが、俺の説得で「そこまで言うならやってみる」とラミが言ったのをキッカケに、ハピも嫌とは言えなくなった。

 だいたいハピなんか、空中から石でも落とせば触れずに済むんだがな。


 こうして俺達は巨大毒ガエルが棲息する湿地帯へと、馬車を走らせた。


 道中この際だからと、ハピとラミにも馬車の操作を教える事にした。

 初めは獣魔達に馬が多少は怯えはしたが、結構長い間荷台に乗っていたのだ、直ぐに馬は怯えなくなった。

 そうなれば後は、獣魔のラミとハピの方が慣れるだけだ。


 順調に進み、昼過ぎには現場に到着した。

 馬車を置いて湿地の方へと歩いて行くと、あっという間に水かさが増して進めなくなる。

 俺達は膝くらいだとしても、姿勢の低いダイにとっては腹に水面が着くほどだ。

 やむなく浅い所をウロウロする。


 巨大毒ガエルはあまり移動する様な魔物ではないので、どこかで獲物が来るのをじっと待ち伏せしているはずだ。

 それを探すためにも、あちこち移動しないといけない。

 

 しかしこの辺りにいる魔物は、中級の魔物が多いと聞く。

 ゴブリンやホーンラビットの様な弱い魔物は少ない。

 油断は出来ないな。

 

 そこでやっと発見した。


「何かが水面から目玉を出しているな」


 するとラミは直ぐに分かったようだ。


「あれはアリゲーターシャークだよ。近付くと噛み付いてくる。腕くらいなら簡単に喰い千切られるから注意な」


 さらにハピ。


「確かお肉はまあまあのお味だったですわ」


 なに、肉の味は悪くないのか。

 ならば食事用に狩って置くか。


「よし、なら今日の食事で決定だ。倒すぞ!」


 直ぐにハピは空中へと飛び上がり、ハルバートを構える。

 そういえばハピは足の爪での攻撃ばかりで、折角貰ったハルバートを使っていない。

 そこでハピに忠告した。


「ハピ、ハルバートを使え。使わないと上手くならないぞ」


「確かにそうですわね。それなら使いますわ」


 ついでにラミにも言っておく。


「ラミも盾と剣を使ってみろ」


 するとラミ。


「我が種族は元々盾や剣を使うから大丈夫だ。腕前を見せてやる」


 ほほう、それは楽しみだな。


 ラミはアリゲーターシャークの正面から挑むようだ。

 その上空からは、ハピがハルバートを構えて迫る。


 だが、勝負は一撃で終わってしまった。


 アリゲーターシャークが大口を開けてラミに襲い掛かろうという時、真上にいたハピがブウンと音を発ててハルバートを振るった。


 それで終わりだった。


 アリゲーターシャークの頭がぶっ飛んで、その血肉をラミが浴びた。


 ハルバートを振るったハピ自身も驚いている。


「あら、凄い威力ですわね」


 そんなハピをギロリと睨むラミ。


「もうちょっと後先考えて行動しろっての!」


「あらあら、ごめんあそばせ」


「それに、剣と盾、使わずに終わったじゃねえか」


 ちょっと前ならこれで喧嘩勃発なんだがな。

 今じゃそんなことにはならない。


 食料となった肉を水の無い場所へ移動し、火を起こして食事の準備だ。


 良い匂いが漂う。

 肉汁が垂れて焚き火の火がジュッと音を立てる。

 その音までもが、俺達の胃袋を刺激する。


 肉を焼く匂いにつられてか、ハエが(たか)って来た。

 ハエと言っても人間の街にいるようなものじゃない。

 人間の大人の手の平よりデカいハエだ。

 通称“デカバエ”。

 特に大きな害はないが、汚ないし軽い物なら持って行ってしまうから、厄介者に代わりはない。

 そんなデカバエを手で払いながらの調理だ。


「本当に良い匂いですわ」

「うん、早く食らいつきたいぞ」

『ライ、まだか?』


 さっきからもう何度もこんな言葉を皆が言っている。

 焼き上がるまで待てないのか。


 俺は頃合いを見て、肉をナイフで切り分けにはいった。


 三人がヨダレを垂らしながら俺の手元を見つめるなか、ふとダイの獣耳がピクリと動いたのに気が付いた。

 

 するとダイは鼻を高く上げて何かの匂いを嗅ぎとり始めた。


「ダイ、どうした?」


 俺の質問にダイが念話で答える。


『何かが近付いて来るぞ』


「くそっ、食う時間くらいゆっくりさせろってんだ」


 俺はそう吐き捨てると、手早く肉を四等分して皆に言った。


「何かがこっちに来るらしい。ほら、肉だ。熱いから気を付けろよ」


 俺は切り分けた肉をそれぞれに投げ渡し、自分の分を口に咥えて立ち上がる。


「あら、前に食べた時よりも格段に美味しいですわ!」


 前に食べた時は生肉だったからだろうな。

 そんなことはどうでも良い。

 今は戦闘態勢が先だ。


 ダイが唸り声を上げ始めた。


 その方向は湿地帯の方向からだ。

 

 しばらくすると、徐々にその姿が俺にも見えてきた。

 

 茶色の塊が上下している。

 いや違うな、跳ねて移動しているのか。


 それが一つ、二つ、三つ……結構な数だな。


 あれは群れだ。

 カエルの群れだ。


 ラミがつぶやく。


「あれはデブガエルの群れだな。だけどよ、あんな数の群れは初めて見るぞ」


 なんかヤバそうだな。











次の投稿は明日の夕方の予定です。



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