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32 商業ギルドへ行ってみた








 入り口から誰かが入って来るようだ。

 その誰かが進んで来ると、パッと人波が割れていく。


「おい、そこで何をしている!」


 入って来たのは人間の衛兵隊長だ。

 子爵の屋敷にいたあのおっさんだな。


 衛兵はここの人間からは恐れられているのだろうか、客はサーっと道を開けていく。

 おかげで騒ぎは収まってきた。

 どの客も何事もなかったかのように、席に戻って行く。


 ダイとラミとハピも落ち付いて席に着いた。


 隊長の後ろにも何人か衛兵が来ているのが見える。

 これであの冒険者の男達も文句を言わないだろう。


 衛兵達は喧嘩の原因である俺達の元へと真っすぐに来る。


 そして困った顔をしながら「どうした?」と俺に聞いてきた。


 だが、俺が答えるよりも早く、隣のテーブルの冒険者達が衛兵隊長に文句を言い始めた。


「あのオーク野郎が先にちょっかい出して来たんだぞ!」


 うん、間違っちゃいない。

 この男の言ってるのは正論だがな、俺達にちょっかい出したのはこいつらが先だ。

 男達はああだこうだと衛兵に説明している。


 しかし俺達とのトラブルに関しては一切説明なしで、あくまでもオーク兵とひとまとめに「魔物野郎ども」が先にちょっかい出したで押し切ろうとしている。

 

 聞いてて腹が立つ。

 そこで俺が話に割って入って、聞きたいことを勝手に聞いてみた。


「衛兵隊長、今俺がこの四人をぶっ殺したらどうなる」


 眉間にしわを寄せる衛兵隊長。


 言われた冒険者野郎共は「なんだと魔物野郎が」と激憤するが、衛兵隊長が睨みを利かせると、素直にすっこんだ。

 相当この衛兵隊長のおっさんは怖いらしい。

 そして改めて隊長は俺に向き直り言った。


「よしてくれよ、ライ。今、お前をどうこうする訳にはいかない。代わりに責任問題で俺の首が飛ぶ。こんな雑魚に構わないでくれ」


 それが聞こえた男達が再び騒ぎ出す。


「おい、今の聞こえたぞ。どういう事だ!」

「魔物の味方すんのか!」

「そうだ、人間なら人間の味方しろってんだよ」


 文句を言う男達だが、一人だけ止めに入る男がいた。

 魔法使いの恰好をした男だ。


「待て、なんかおかしいぞ。鉄等級の冒険者風情が衛兵隊長と知った顔で話をしている。よせ、何かある。関わらない方が良いぞ。こいつたぶん、貴族がらみだ。ヤバい、構うな」


 正解じゃないが不正解でもない。

 俺は領主の客人扱いだからな。

 それにオーク領と子爵領の橋渡し役だし。


 そこで衛兵隊長が部下に命令する。


「おい、この四人を連れて行け!」


 衛兵に抑え込まれるようにして連れて行かれる四人の男。


「何でだよ……」

「俺達どうなるんだよ」

「人間領で魔物に追い出されるのかよ」

「少しは黙ってろ。折角の銀等級が剥奪されちまうぞ」


 あの魔法使いだけは少し頭が良いようだな。


 まあ、これでテーブルは大きく空きが出来た。


「オーク兵、テーブルが空いたぞ。まあ座れ!」


 俺の言葉にニヤリとしてオーク兵達が次々に席に着く。


「お~い、店主。彼らにエールを出してやってくれ!」


 オーク兵達は楽しく飲んで食べていたし、俺達も満足いくまで料理を味わえた。

 ちょっとだけオーク兵との距離が近付いた気がする。


 オーク兵達に挨拶をして、俺達は宿に戻る事にした。

 帰る時になって、店の外で衛兵が数人いたことに気が付いた。

 声を掛けると、オーク兵達の護衛だそうだ。

 全てのオーク兵のグループには、護衛を付ける事になったそうだ。

 やはり人間と他種族が上手く付き合っていくのは、相当難しいのだろう。

 オークと交流とか絶対無理だな。


 



 翌朝、俺達は一軒家を借りるために、あちこち聞いて回った。

 やはり皆で屋根の下で一緒に過ごしたいからだ。

 オーク領の宿に泊まったのが大きい。

 全員で同じ部屋で眠れるのは良い。

 

 そういえば俺達は、全員違う種族なのに仲間意識がある。

 もしかしてライカンスロープとバンパイヤも、仲良くなれるんじゃないだろうか。

 そんな事も考えてしまう。


 それで一軒家に関してだが、候補が幾つか有ったのだが、まずは賃貸物件は全て無理だった。

 賃貸だと獣魔はダメだと断られてしまうからだ。

 そうなると候補はひとつに絞られてしまった。


 街から結構離れた場所にある家だ。

 早速だが見に行ってみることにした。


 歩いて一刻ほど掛かる山の中にあるらしい。

 しかし俺達は、山賊からの戦利品である馬車があるから一刻もかからない。

 俺が変身して走れば馬車よりも早いがな。

 まあのんびり行くか。

 

 到着して見るとそこは山中ではあるが、近くに川がある広々とした場所だった。

 人の住む家の他に作業用らしい建物もある。

 ここはガーネットを採掘していた工房らしい。

 前に住んでいた人間は、ここでガーネットを採掘し、工房で加工して販売していたという。

 だが、ある夜に魔物に襲われて全滅したそうだ。

 用心棒も雇っていたにも関わらずだ。


 昔はこの周辺でも安全だったそうだが、ここ何年かでこの辺りでも夜は魔物が出現するようになって危険だという。

 住みたいという者は誰も現れず、何年も放置状態みたいだ。

 ガーネット程度の石くらいじゃ誰も寄り付かないし、採掘出来たガーネットの質も大したことなかったようだ。


 建物を見ると、かなり放置されていたらしく家の傷みが酷い。

 こんな家だが、売りに出されている。

 この家は貸家ではなく売家だ。

 だから買ってしまえば獣魔も住めるし、やろうと思えばガーネットも採り放題。


 肝心のその物件値段だが、金貨六十枚、銀貨に換算すると六百枚の値が付いている。

 高いのか安いのかも解らないが、俺達に一番手が届きそうな物件はここしかない。

 賃貸ではなく売家で人里離れているというのも、秘密の多い俺達には都合が良い。


 まずはこの家を購入するのが目標になった。


 この家は商業ギルドが持ち主となっている。

 それでまずは値段交渉をしに行くか。




 こうして俺達は再び街に戻り、今度は商業ギルドへと向かった。


 商業ギルドは冒険者ギルドほどではないが、そこそこ大きな建物だった。

 冒険者ギルドは小さな町にもよくあるが、商業ギルドはある程度の大きさの街にしかないそうだ。

 そこで獣魔達は馬車の中で待たせて、俺一人でギルド内へと突入した。

 だが馬車でお留守番させたのに、早くも獣魔らが騒ぎを起こしている。

 獣魔の札を付けてるし、面倒臭いから放って置くけどな。

 

 受付カウンターへと行き、早速物件についての交渉を始めた。

 少しでも安くならないかと。


 









次の投稿は明日の夕方の予定です。



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