表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/204

27 首を刎ねられた









 マーカスの全身が輝いている。


 まるで魔法を掛けたかのように……魔法か⁉

 あいつ魔法が使えやがるのか。

 くそ、隠してやがったな!


 それを見たオーク兵が直ぐに反応した。

 魔法が完成する前に行動に出ようとしたんだろう。

 しかし魔法は詠唱じゃない様だ。

 何かに呪符されていたのか魔道具を使ったかだ。

 そうなると詠唱はいらず、魔法は直ぐに発動する。


 それに構わずオーク兵の剣鉈けんなた)が、マーカスを襲う。


 しかし剣鉈けんなたは空を切る。


 そこにはマーカスはもういない。


 マーカスは恐ろしいほどの早さで、オーク兵の剣撃けんげきを避けたのだ。


 素早さか何かの身体能力を急激に上げるような魔法らしい。


 オーク兵は一瞬マーカスを見失う。


 その場で振り返り盾を構えるオーク兵。


 オーク兵は目だけをキョロキョロ動かしている。


 完全にマーカスを見失っている。


 だが俺の目にはしっかり追えている、マーカスは頭上だ。


 天井を蹴ってオーク兵の頭上に迫るマーカス。


 キラリと長剣がきらめく。


 オーク兵が咄嗟とっさに身を屈めた。


 部屋の中に火花が飛び交い、「キンッ」と金属がぶつかる音が響く。

 

 そのオーク兵のヘルムを掠めるように、マーカスの剣が空を切り裂いた。


 おお、ギリギリで反応したか。

 あのオーク兵も中々やるな。


 そこからは一転してマーカスの攻勢が続き、オーク兵は一方的に防御となって中々決着がつかない。


 そのうちマーカスの魔法が切れた。

 輝きが突然無くなったかと思ったら、マーカスの動きが遅くなる。


 あ、終わったな。

 マーカス残念。


 身体能力でオークには勝てない。

 もちろんスタミナでもだ。

 魔法が切れた上に肩で息をしているマーカスは時間の問題。


 結局は俺の出番かよ。


「そこまでだ!」


 俺が叫んで勝負を止めた。


 そうなると俺に注目が集まる。

 族長が何か言う前に、俺は言葉を続ける。


らちが明かない。俺が相手してやるから、とっとと終わらせてやる。時間を無駄にしたくないからな。そうだな、そこにいるお前ら全員、まとめて相手してやる。ほら、かかって来い」


 そう言って、俺は護衛のオーク兵全員に向かって指をクイクイと動かした。


 まあ、護衛のオーク兵は怒るよな。

 全員が剣に手を掛けている。

 そこで族長が何かを言おうとしたところで、マーカスと対峙していたオーク兵が、俺に向かって剣鉈けんなたを振るいながら突っ込んで来た。


 脳内筋肉は想像通りの行動をしてくれて助かる。

 頭に血が上った奴は単純だ。


 フェイントも小細工もない、渾身こんしんの一撃のようだ。


 単純故に軌道も読みやすい。


 オーク兵のモーションよりも一歩早く、俺は前方に跳躍。


 オーク兵は予想したよりも手前に俺が移動したものだから混乱する。


 とは言っても、振い始めた剣鉈けんなたは止められない。


 その時既に俺は、オーク兵の間合いの中だがちょっとだけ近い。


 オーク兵の直前の床を蹴って、俺は鋭角にひざを突き出す。


「ジャンピング・ニーアタック!」


 俺のひざがオーク兵のアゴに直撃。


「ぐひっ」


 オーク兵は振るった剣鉈けんなたの勢いのまま、クルっと一回転して床に仰向けで倒れ込んだ。


 相手が出て来たところへの攻撃、カウンターと言う奴だ。


 相手の突撃する速度や体重も相まって、思った以上に威力は高い。


 その証拠に、床に転がったオーク兵は白目を剥いている。


 呆気にとられる一同。


「ほら、残るはお前らだけだぞ。来ないのか?」


 俺の挑発に護衛のオーク兵が遂に剣を抜いた。


 敵は十人ほど、やってやれないことはない。

 俺は槍を構える。


 しかしそこでオーク族長の声が掛かった。


「それまで!」


 止められたな。

 俺は槍を構えたままで横目でチラリと族長を見ると、手で護衛のオーク兵達を制止している。


 護衛兵は命令に従って剣を鞘に納めて再び整列していく。

 しっかり統制は取れているようだな。


 それを確認した上で俺も構えを解き、先ほどの椅子に座った。


 そこで族長が改めて口を開く。


「中々良い戦いを見させてもらった。礼を言う。しかし本当に素手でうちの精鋭を倒すとは驚きだ。これでもこいつは今まで戦いで負けたことが無いんだがな」


 何か恐ろしいこと言ったな。

 そんなに強かったんだ。

 まともに戦わなくて良かったよ。


「族長よ、俺は戦いに勝ったんだ。話は聞いてくれるんだよな」

 

 俺の問いに族長は「何だ、言ってみろ」と返す。

 そこで俺はオンドレに代わってもらう。


 これで完全に俺の役目は終わったな。

 疲れたな。


 しばらくすると話し合いは終わったかのように見えた。


 だがそうではなかった。


「人間よ、話はそれだけか?」


 族長がオンドレにそんな事を聞いている。

 

「はい、どうでしょうか族長様。私どもの提案に悪いことはないと思うのですが」


「どうでも良い。問題はおのれが人間という事だけだ。話は聞いたぞ、直ぐにここから立ち去れ!」


 そう言う事か。

 初めから人間との話なんて聞く気がねえってことか。

 約束だから話は聞いたが、それ以上はないってこと。

 俺は人間じゃねえから良いんだけどな。

 何かしっくりこない。


 関係ない俺だが、沸々と怒りが込み上げてくる。


 それでも諦めの悪いオンドレが食い下がる。


「お待ちください。オーク領にもメリットは大きいはずです。是非、今一度、お考え直し下さい!」


「ええええいっ、うるさい人間だ!」


 そう言ったかと思ったら、族長は剣を抜いていた。


 ポーンと空中を舞うオンドレの首。


 叫ぶハピとラミ。


「それは最後に取って置いたお楽しみですわよ~」

「うあああっ、私の楽しみが~」


 二人は自分の手で、オンドレをぶっ飛ばしたかったようだ。












次の投稿は明日の夕方の予定です。



追伸:

「いいね!」のお願いです。

どういった話の時が面白かったのか、読み手側の好みを知りたいのです。

面白かった話の最後には是非「いいね」ボタンをよろしくお願いします。

一話に着き一度押せます。

全部ではなく、面白かったところで押していただけると助かります。


「いいね」が貯まったら順位の発表をしたいと思います。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ