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26 マーカスとオークが戦った







 夜中に見たこともない虫がカサカサと出て来て、ラミとハピが魔法を使いそうになって大騒ぎになったりしたが、オークの宿主から特に何か言われることもなかった。

 そう言えば夜中に他の部屋から奇声が聞こえたりしたから、その程度は日常茶飯事なのかもしれないな。

 さすがオークの街だな、良くも悪くも人間の街とは違う。


 オーク社会で貨幣は存在しているようだが、基本は銅貨での取引らしい。

 今の所は銀貨や金貨は見たことない。


 朝、宿を出て早朝市場とかいうのに寄ったんだが、多分物価が安いんだと思う。

 貨幣価値が人間社会のとは違うから何とも言えないが、銅貨の大きさから推定してもかなり安いじゃないだろうか。

 残念ながらオークと人間とは交易が無いので、人間の貨幣を両替してくれる所はない。

 とはいっても、多少の違いはあるが会話できるので、物々交換で欲しい物は手に入れた。

 馬車に積んであったなたおのを見せたら、大量の野菜や芋と交換してくれた。

 金属の刃物はどこへ行っても金になるようだ。

 これでしばらく食いつなげそうだ。


 このオークが言う“街”を出発すると、街道も往来が多くなってきた。


 しかし奴隷が多いな。


 




 そしてやっと到着した大都市、ここがこの周辺の部族を仕切っている領主の住まう街だ。

 人間でいうところの領都か。


 ここでも特に問題なく街中へと入って行けた。

 相変わらず馬車は珍しいらしくジロジロと見られる。


 この街なんだが、オーク兵に大都市と言われたが、人間でいうところの小都市程度である。

 それでも最初に立ち寄った街に比べると、だいぶ大きいし栄えている。

 それに街中の人の数が圧倒的だ。

 もちろんオークだけじゃなくゴブリンやリザードマン、それに知能のある魔物が堂々と通りを闊歩かっぽしている。

  

 建物の作りも三階建てくらいまであり、造りもしっかりしている。

 それと商店が連なる通りまである。

 かなりの賑わいだな。


 街の中央に大きな建物があり、そこが領主の屋敷だという。


 俺達はすんなりと中へ通され、領主は直ぐに会うという。

 数刻も待たせる人間様とは大違いだな。


 その間に、大慌てでオンドレが謁見用の服装に着替えている。


 そして遂に領主のオーク族長に会う事に。


 謁見の間に通されると、そこには対面で二つの変わった椅子が距離を空けて置いてあり、その一つにフル装備の革鎧を着こんだオークが座っている。

 その周囲には護衛のオーク兵が立っている。


 案内のオーク兵がそこに座れと俺に言った。


 は?


 一つしかない椅子に俺が座れと。

 まあ今はしょうがないか。

 オーク社会じゃ強い者が尊敬されるんだったからな。

 使者の貴族には悪いが、座らせてもらう。

 その変な椅子に座れというようだが、その椅子背もたれの板と座板しかないのだ。

 つまり床に座るのとあまり変わらない。

 領主の座り方を真似て、胡坐あぐらでその椅子に座った。

 

 何も言われないところを見ると、間違っていない様だ。


 さてと、話を切り出そうかと思ったところで、オーク領主が先に口を開いた。


「偵察隊長と副隊長を素手でぶちのめしたという人間は貴様か」

 

 その話題からかよ。

 嫌な予感しかしない。

 俺は横目でダイを見ると直ぐに念話を送ってくれる。


『分かってる、いつでも暴れる準備はしておくから安心しろ』


 よし、やれるだけやってみるか。

 

「ああ、冒険者をやっているライと言う。遥々ここまで来た理由と言うのは―――」


 早いとこオンドレに明け渡そうと思ったのだが話の途中で遮られた。


「まずはこいつと戦え。話を聞くかはその結果次第だ」


 そう言って横にいたオーク兵を指さす。

 

 見れば如何にもって感じのたくましい体つきのオーク兵だ。

 何で俺が戦う羽目になるんだか。


 だいたい話をしたいのはオンドレだぞ。

 戦わせるなら俺じゃなくオンドレに……そうか、マーカスならいけそうだな。

 あいつにやらせるか。


「族長よ、それならまずはそこにいるマーカスと戦って勝ったらにしてくれ。その程度の兵士ならマーカスで十分だ」


 こう言えばマーカスも戦わざるを得ないだろう。

 楽はさせないぞ。

 おおっと、マーカスが俺をにらんでる、怖っ。


「ほほう、言ってくれるな。良いだろう。マーカスとやら、こいつと戦え」


 観念したのか、大きな溜息をした後に前へと歩み出るマーカス。


「良いだろう。それでルールは何だ」


 そうマーカスが聞けば族長が不思議そうに言った。


「何を言ってる。そんなものはない。勝負が付くまでに決まってるだろ」


 木刀も刃引き剣もないところを見るに、真剣勝負がご所望らしいな。

 まあ、精々頑張ってくれよマーカス。

 俺の仕事はこれで終わりだ。

 さっさと帰りたい。


「良いだろう……」


 そう言ってマーカスが腰の長剣を引き抜く。


 マーカスの剣はどちらかと言うと、細剣の部類になるか。

 そうなると固い物を斬るのには不向きな剣。

 対するオーク兵は革鎧を着ている。

 革鎧と言っても急所部分は金属板が張ってあり、マーカスの剣じゃ斬れない。

 金属の無い部分を突き刺すか、鎧の継ぎ目を切り裂くしかないだろうな。

 

 そして革鎧に加えて金属製のヘルム、それと丸盾に幅広の長剣。

 この幅広の長剣だが、形が変わっている。

 刃先が平らなのだ。

 突き刺すことが出来ない剣らしい。

 両刃のなたを剣にしたような武器だ。


 マーカスが前に出ると、それに合わせる様にオーク兵が前に出る。


 オーク兵が盾の後ろに隠れるようにして剣鉈けんなたを構える。


 身長はマーカスの方が高いのだが、腕の太さや足の太さが圧倒的にオーク兵が勝っている。


 マーカスが剣を頭上に上げて、剣先を倒した形の構えを取る。


 先に動いたのはマーカスだ。


 トンと地面を蹴ったかと思うと、もう片方の足先で再び床を蹴る。


 他の奴らは一足飛びで移動したように見えただろうが、実際は二歩だな。

 だが、たった二歩でオーク兵の目の前まで飛んだ。

 

 マーカスの狙いは盾の下方からのぞく足先のようだ。


 そこでオーク兵は前に出していた足先を引きつつ、盾をマーカスに向かって突き出した。


 その時点でオーク兵の体重は前に移動する。

 その体重移動を利用してさらにオーク兵は前に出る。


 マーカスの剣は空振りし、目の前に迫る盾を避けようと後ろへと下がる。

 

 しかしそれは失策だった。


 後ろへ下がる為に床を蹴ったその足を狙われたのだ。


 オーク兵の剣鉈けんなたが音を立てて振るわれる。


 マーカスも必死で脚を引くが、わずかに剣鉈けんなたが掠めてパッと血が舞う。


 予想以上に剣鉈けんなたの切れ味は良いらしい。


 オーク兵がニヤリと笑う。


 マーカスはトン、トーンと床を蹴って距離を空けた。


 このオーク兵、パワーだけじゃない。

 素早さと鋭い目を持っている。

 恐ろしい相手だ。


 族長が推してきただけの事はある。

 この地域でも一、二を争う位の腕前なんだろう。


 マーカスの足先の傷は大したことはない。

 しかし足先の負傷は動きに大きく影響する。

 いきなりハンデを貰っての戦いと同じだ。

 この状態でマーカスが勝利するのは無理だろう。


 となると、俺が出ることになるのか、くそ。

 と思って、俺は床に手を置いて立ち上がり掛けたところで、マーカスに変化があった。



 



 
















 



次の投稿は明日の昼頃の予定です。



追伸:

「いいね!」のお願いです。

どういった話の時が面白かったのか、読み手側の好みを知りたいのです。

面白かった話の最後には是非「いいね」ボタンをよろしくお願いします。

一話に着き一度押せます。

全部ではなく、面白かったところで押していただけると助かります。


「いいね」が貯まったら順位の発表をしたいと思います。






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