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204/204

204 新大陸を求めた


最終回です!


ちょっと長いです。








 コボルト領でハルト達と観光などをしてしばらく滞在していたのだが、俺はどうにも海の向こうの大陸が気になって仕方無い。

 コボルト領の観光よりも、海の向こう側を観光したいんだがな。


 街中を見てまわっていると、ハルトがドッグレースを見たいと言い出した。

 女性陣と獣魔達はドッグレースに興味は無く、俺とハルトの二人で見に行くことになった。

 ドッグレースとはその名の通り犬のレースなんだが、順位を予想して金を賭ける遊びらしい。

 ハルトは興奮気味にそのレース券を何度も買っていた。


 そのレースを見ながらそれとなく、聞きたかったことをハルトに質問してみた。


「なあ、俺は海の向こう側へ行きたいんだけど、ハルトはどう思う?」


 ハルトはちょっと驚いた様子だったが、ちゃんと答えてくれた。


「えっと、そうだな、僕が思うに……おお、来た。今度こそ行ける。行け、行け!」


 そうか、海の向こうへ行った方が良いか。ハルトもそう思うか。

 それもかなり興奮気味の同意だ。

 そこまで推してくれるなら、もう行くしかないよな。


「ハルト、ありがとうな」


「え、えっと……あ、マズい、抜かれるっ。根性だせって、頑張れ、頑張ってくれ〜!」


 応援までしてくれるとか、やっぱハルトって良い奴だよな。


「ハルト、悪いけど俺、先に王城に戻るよ」


「え? まあ、良いけど……僕は次のレースで取り返すよ」


 俺は一人やる気満々で王城へと戻った。

 海を渡ると決まったなら、色々と準備が必要だ。

 まずは海を渡る船の確保。

 それに海の向こうの情報も集めないと。

 食糧に水の確保や船員の確保もだな。


 それから連絡方法の伝書カラスだが、海をまたいだ連絡は可能なのだろうか。


 そんな下調べをしていると、インテリオークを見つけた。

 そこでインテリオークに準備などを全振りしてやった。

 かなり困った様子だな。

 海に関しては余り詳しくないみたい。

 ちよっと良い気分。


 インテリオークが少し時間を下さいと言うので、俺なりに色々と調べながら日々を過ごした。


 一週間ほどして、ハルト達は俺の部屋に来ると、エルドラに帰ると言ってきた。

 次の仕事の予定が入っているらしい。

 だがヒマリの転移魔法の登録できる数が増えたとかで、このナバの街も登録したという。

 さすが加護持ちだ。

 転移魔法を使えばエルドラの街へも一瞬だそうだ。

 うらやましい。


 そこでハルトに一緒にエルドラに戻らないかと言われた。

 海の向こうへ行くのを勧めておいて、何を言ってるんだか。


「俺達は海の向こうの大陸に渡るつもりだからな。エルドラへはしばらく戻れないよ」


 俺がそう言うとハルトは驚いた表情で返答した。


「え、マジで海を渡るの?」


 あれ、変なリアクションだな。

 それを聞いたヒマリが大変だった。


「何それ、聞いてないんだけどっ。ライ、どういう事か説明してよ!」


 ヒマリが凄い剣幕で、ケルベロスに成りかけているんだが。


「ええっと、魔王探しでだな、海の向こうにある大陸へ行って見ようと思うんだ」


 するとヒマリ。


「魔王なんか見つけてどうするのよっ」


「どうするって……そうだな。和平交渉――――」


「無理に決まってるでしょ!」


 何か俺、怒られているんだけど。

 しかし俺はめげない。


「ヒマリ、もし魔王が現れたら君達は勇者パーティーとして、魔王の部隊と戦うよう強制される。そして人間と魔王の全面戦争だ。前にも言ったけど、その時に人間をなだめて戦争を止めさせるのが、勇者パーティーである君達の役目だよな。反対に俺達は魔王を止める役割。その為には少しでも早く魔王を見つけないといけない」


 それを聞いたヒマリは黙り込む。

 代わりにリンが口を挟む。


「ライ、もう少しヒマリの気持ちも考えてあげてよ。それともヒマリの事が嫌い?」


 一番苦手な状況に追い込まれたじゃねえか。

 どう答えれば正解なんだよ。


「えっと、べ、別に嫌いじゃないよ……」


 するとハルトに突っ込まれる。


「小学生かよ!」


 小学生ってなんだ?


 しかし直ぐにリンがそれをさえぎる。


「ちょっとハルトは黙っててよ。今、良い所なんだから」


 見世物じゃねえぞ!


 そこでヒマリが執拗しつように攻めてきた。


「ねえ、“嫌いじゃない”って言ったよね。それって好きってこと?」


 これは困ったぞ。


「そ、そうかな〜?」


「何で疑問形なのっ。もう、ちゃんと答えて!」


 ケルベロスの恐怖がよみがえる。


 俺は即答した。


「イエス!」


 リンが勢い良く突っ込む。


「ちゃんと言葉にして答えて!」


 しまった!

 選択肢を誤った?

 ノーだったら良かったのかな。


 ハルトがボソリとつぶやく。


「バッドエンドだよ……」


 俺はそおっとヒマリの顔を見てみた。


 あれ?

 嬉しそう……


「な〜んだ。イエスなのね〜。もう、告られちゃったよぉ」


 告ってねーし。


 ハルトがあきれながらも、会話に入ってきた。


「ヒマリ、リン、そろそろエルドラへ行かないと」


 するとヒマリ。


「ヤダ。私、ライと一緒にいる」


 腕を掴まれた。


「子供じゃないんだから、わがまま言うなよ」


 ハルトがそう言いながら、ヒマリの腕を引っ張る。


 するとヒマリと一緒に俺も引っ張られる。


 何だよ、この状況は。


「い〜や〜だ〜。ライとは離れないから〜」


 まるで駄々っ子だ。


 ハルトが強く引くと、ヒマリは俺の腕に抱き付き、土魔法で俺と自分の足を固定した。


 魔法の無駄使い!


 そこでリンが一言。


「ねえハルト、諦めようよ」


 ハルトは急にヒマリの腕を放す。

 勢い余って俺とヒマリは、足を固定されたまますっ転んだ。


 何かヒマリと変な恰好で倒れたままなんだが。

 足が折れそうだし……


 リンが言葉を続ける。


「ヒマリがここまで言うんだから、もう置いて行こう。今回の依頼なら二人でやれるよ」


 少し考えた後、ハルトは口を開いた。


「仕方無いな。それなら僕達も急いで船旅の準備をするよ」


 は?

 何それ、パーティーごと付いて来るの?


 そこでヒマリ。


「やった、ありがとう、ハルト、リン。それからよろしくね、ライ」


 俺は一言も意見してないのに、勝手に決まっていくんだが。

 それにヒマリが転んだままずっと抱き着いてるし。


 だけど勇者パーティーが一緒なのは心強い。

 特に転移魔法は便利だし。

 何かあっても戻って来れるというのは安心だな。


 それから急ピッチで準備が進められた。

 

 勇者パーティーは、一週間で次の依頼を終わらせて戻って来た。

 転移魔法のおかげだ。


 結局、船の準備するまでに一ヶ月掛かってしまった。

 その甲斐あって全ての準備が整い、俺達は船の前に立つ。


「もしかして、僕達もこれに乗るんだよね?」

「なんか可愛くないよ〜」

「やだ、ドクロのオブジェがあるじゃん」


 ハルト達から色々と声が上がってるんだが。


 どうしてこんなデザインになったか、責任者に聞いてみたい。


 文句を言いながらもハルト達は乗船して行った。

 俺達も乗船する。


 軍船ではなく商船らしいのだが、とにかく大きな船で、この大陸にはない構造らしい。

 荷物は沢山積めるから、数ヶ月は航海出来るという。

 

 獣魔達が船の上から手を振っている。

 特に挨拶する相手もいないんだがな。

 

 そして遂に俺達は未知の世界へと出港したのだった。



 

 ◇  ◇  ◇   ◇



 

 その日を最後に勇者パーティーとの連絡が絶たれたと、王都で騒ぎになった。

 エルドラの領主もライの失踪で、オークとの交渉が上手くいかず困っているらしい。


 そんな勇者パーティーと軍団長のライ達の失踪は、あっと言う間に大陸中に知れ渡った。

 「新大陸を発見して、大陸ごと配下にしたんだろう」と言う者。

 「遂に魔王を見つけて配下にしたんだろう」と言う者。

 「海で船ごと魔物に飲み込まれたんだよ」と言う者。

 どこの飲み屋でもそんな噂話が絶えなかった。


 しかし半年を過ぎた辺りからは、そんな噂話も聞かなくなった。


 そして誰もがそんな話など忘れた頃だった。

 ある街の海岸に、密封された小さな樽が漂着した。

 それを見つけたダックの子供はその場で中身を確認する。

 きっと宝物が入っていると期待して。


 開けてみると、中には手紙と絵が入っていた。


 手紙の字は海水が漏れていたらしく、にじんでしまって良く読めなかったが、絵の方は何が描かれているか判別出来た。


 その絵とは。



――――見知らぬ亜人達に囲まれて馬鹿騒ぎをしている、ライと獣魔達とハルト達だった。

 絵の隅の方にはインテリオークらしい姿も描かれている。


 しかしダックの子供にとっては、くだらない絵にしか映らない。


「宝物じゃないグワ!」


 ダックの子供は絵と手紙を投げ捨てた。


 こうして彼らの唯一の痕跡は絶たれたのだった。


 だが絵から察するにライと獣魔達やハルト達は、新しい大陸で面白おもしろ可笑おかしく暮らしていることだろう。




 魔王?




 それはライだったのかもしれないし、そうじゃなかったのかもしれない。



 もしかしたらラミ、ハピ、ダイの誰かだったのかも。



 それどころか、真の魔王の正体は眼鏡のオークだったという噂が、大陸中にまことしやかに流れていた。



 だが、真実は誰にも分からない。



 ただ、人間やオークの歴史書には「魔王消失」とだけ記録されていた。







 ――――完――――






一年ほど続いた連載でしたが、最後までありがとうございました。


誤字脱字の報告にブックマークそして評価と、感謝しかありません。


ブックマークと評価まだの方いましたら、ぜひよろしくお願いします。



応援ありがとう御座いました!




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― 新着の感想 ―
[良い点] 完結、お疲れ様です。楽しく見させていただきました。 [一言] 誰が魔王だとしても不思議じゃなかったです。案外、老コボルトに魔王の素質があったと言われても強さ的に納得してしまいそうでした。
[一言] 完結お疲れ様でした! 最後の絵を描いたのが誰なのか気になります。 ライは推しに弱すぎ。ヒマリが魔王だったり?
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