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197 自ら偵察に行った






 行軍を進めていくと、雪が降り始めた。

 それも本降りだ。

 これは予想していたが、雪が積もる勢いで降ってくる。

 もう少しでコボルトの首都が見える距離まで来たというのに、それをこばむのは敵兵ではなく大自然の脅威になりそうだ。


 しかし、敵部隊にはほとんど遭遇していない。

 ウォール砦と兵站部隊を襲われた時くらいで、それ以降は敵の姿も見ない。

 だが、偵察範囲を広げようかと思っていた矢先に雪だ。

 逆に偵察範囲がせばまる。

 

 先へ進みたいが、雪の降り方は激しくなる一方だった。

 仕方なく早い段階で行軍を止め、適当な場所を見つけて野営の準備をすることにする。


 近くに川が流れる平坦な場所を選んだ。

 雪に慣れている兵も結構いるらしく、片手間で雪ダルマを作るものまでいる。

 野営の準備が終わる頃になると、辺りは真っ白な世界へと変貌していた。


 そうなると寒いだけなので、その日はさっさと寝てしまった。

 そして翌朝になり天幕の外に出ると、雪は腰の辺りまで積もっていて驚かされる。

 野営地の周辺は部下の兵が雪掻きをしてくれたようで歩きやすいが、これから行軍しようとする方向を見るとやる気が失せる。

 実は俺自身、こんなに積もった雪を見るのは初めてだった。

 幸いなことに、今は雪が止んでいて晴れ間が見える。

 これ以上は積もらないだろう。 


 兵達は朝から行軍する先の雪掻きを始めている。

 いやいや、あの量は無理だろうとは思うが、何もしなければ前に進めない。


 そんなことを考えながら積もった雪を眺めていると、何かが飛び跳ねる様に移動しているのを見つけた。

 ゴブリンライダーの狼達だ。

 この寒さの中、大はしゃぎで仲間の狼達と積もった雪の中で遊んでいる。

 きっと狼に混じってダイも遊んでいるに違いない。

 勝手にそう思ったのだが、ダイの姿は見当たらない。


 それで獣魔達の天幕をのぞいてみると、毛布にくるまった三人は固まるようにして眠っていた。

 他の兵隊が朝早くから働いているのにこれか。


 俺はラミとハピの足を両脇に抱えて、二人を引きずる様に天幕の外に引っ張り出す。

 抱えられているダイも一緒に引きずられる。


 外まで引っ張り出して、やっと目覚める三人の魔物達。


「ひぃ〜、凍え死ぬ〜」

「凍死させる気ですの!」

「クゥ〜ン」


 一撃で目覚めたな。


「ハピ、この先の街を上空から偵察して来い。ラミは川へ行って水汲み、終わったら雪掻きだ。それからダイは森の中へ食料探しに行け。戻ったら飯だ。ほら行け!」


 三人は渋々と出かけていった。


 さてと、俺も仕事をしないといけないな。


 俺は狼の姿に変身し、雪原を走り出した。


 偵察の為なんだが、予想以上に前に進めない。

 これは俺の積雪への知識不足だろうと思う。

 だが狼に変身した俺なら、何とか前に進める。


 俺は雪が積もって歩きにくい地面ではなく、そこらに生えている木を蹴って前に進んで行った。


 これは良い方法を見つけたとばかりに、俺はどんどん目的地へと向かう

 ただ木が無い所もあって、そこはさっき見た狼の様に跳ねながら進んだ。


 一人で行動すると、あっと言う間に街が見える所まで来てしまった。

 徒歩で一日の距離でも、俺一人なら数倍の速度で到着出来るな。

 それもコボルトの斥候に遭うこと無しにだ。

 さすがに街へ近付く訳にもいかないので、離れた所から観察してみた。

 

 とにかく大きい街という印象。

 さすが首都である。

 身長の三倍はある高さの石の壁が、この街をぐるりと囲んでいる。

 随所に見張り塔が設置され、全部で四箇所ある門も頑丈そうな造りに見える。

 各門前には跳ね橋まである。

 さらに壁の周りには、水で満たされた堀が張り巡らされている。

 なるほどね、これは鉄壁な防御だ。


 その証拠に前回の侵攻での傷痕が随所に残りはするが、軍団の精鋭部隊でも落ちなかったのだ。


 そんな屈強な都市だが、壁の外にも建物が存在する。

 それは風が吹けば倒れそうな、掘っ立て小屋のような建物。

 この間行った村の家屋にそっくりだ。

 壁の中に住めない者達が集まる場所。

 それは人間社会でも見たことがある。

 貧民街と呼ばれる場所だ。

 四箇所ある門の周りには全て、この貧民街があった。


 貧民街なら直ぐに落とせるんだがな。


 俺はしばらくこの街を偵察したのだが、門を閉ざされたらお終いとしか言えない。

 そうなると和平交渉が遠のく。

 なんとか内部に入る方法を見つけないと、和平交渉のテーブルにさえ着けない。


 門の出入りを見ていたのだが、出入り出来るのはコボルト族だけのようだ。

 

 仮に和平交渉の使者が来たとなると、どういう対応をしてくるのか考えてみる。


 うん、攻撃してくるな!


 なんせウォール砦を陥落させたんだから、それは敵と見なされるか。

 それにこの鉄壁な壁の中に居れば、守る側が圧倒的に有利だし、逆に全面降伏しろって言ってくるよな。


 俺は作戦を思いつかないまま、野営地に戻ることにした。

 帰る途中最悪なことに、また雪が降り始めた。

 いや、良く考えたら足跡が消せるな。


 俺が野営地に到着したのは、日が暮れて大分経ってからだった。







197話の感想を誤って消してしまいました。

<(_ _)>

さーせん!


「穴掘ってもらって土中から侵入は出来ないんでしょうか」

という内容でした。

答えは「水が入った堀があるから、穴を掘ると水が漏れる可能性が高いのです」と書くつもりでした。

失礼しました!



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