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182/204

182 ゾエ探しに潜った







 

 城ダンジョン管理棟で一泊し、翌日の朝一で管理棟の玄関前に集まる予定となった。


 そして翌日の朝。

 陽が昇ってない暗い中、俺達は完全装備で玄関前で待っていた。


 まず初めに到着したのが、対アンデッド装備をした精鋭オーク兵八名だった。

 八名の内二人は呪術師だという。

 希少な呪術師を二人も出すとは、かなり本気レベルだな。

 彼らはついさっき、この地に到着したばかりだとか。

 少し休んだらと言ったんだが、大丈夫の一点張り。

 そこまで言うなら良いけど、自己責任だからな。


 その後に来たのがオークの案内人だ。

 城ダンジョン内でゾエを見たというオーク兵だ。

 城ダンジョン探索専門のオーク兵らしい。


 あとは魔道具の地図を見つけた者が来る予定だ。

 何でもそいつは、城ダンジョンでの荷物持ちの仕事も、たまにやっているとかで、今回はその仲間達も呼んで荷物持ちもやってくれるという。


 そして陽が昇り始めた頃だ。

 五人ほどの一団がこちらに向かって来る。


 ダチョウ達が五人。

 正確に言うとエミュ族だったか。

 その中に、昨日の「むさぼり亭」のダチョウ男が居やがる。


 エミュ達五人が俺の所に来ると、ダチョウ男が俺の存在に気が付き、目を丸くして言った。


「な、何でお前がいるんだよ!」

 

 こっちの台詞せりふだっ。


 ダチョウ男が怒鳴った瞬間、オーク兵が奴に殺到。

 あっと言う間に組み伏せ、喉元に剣を突き付けた。


 おお、さすが精鋭じゃねえか!

 緊急時の対応が迅速じんそくだな。


「痛い、痛い、どういうことか説明してくれ〜」


 もしかしてこのダチョウ男、俺の正体を知らされてないのか。


 押さえ付けてるオーク兵が俺に聞いてきた。


「この無礼者の首、ねていいか」


「待て、そいつは殺すな」


 そう命令した後、俺はダチョウ男に質問する。


「おい、お前。俺のことだが、何と聞かされている?」


「いや、何も聞かされてないよ。ただ、軍団幹部らしいってのは理解したよ」


 するとオーク兵がダチョウ男の腕を捻り上げて言った。 


「貴様、ライ殿、知らないのか!」


「いででで、待て、ライ殿って、あのライ様なのか?」


 そう言って改めて俺を見る。

 そのタイミングで顔だけ変身してやった。


 ダチョウ男の顔色が、見る見る青ざめていく。


「ひぃ〜、し、失礼致しました〜」


 こいつ、今までよく生きてこれたな。


「理解したみたいだからそいつを放してやれ。城ダンジョン内で地図を見つけた経緯を知りたいんだが、もしかしてお前が見つけたのか?」


 開放されたダチョウ男は、震えながら返答した。


「は、はい。そうです……」


 話を聞くと探索チームに荷物持ちとして参加したらしい。  

 その探索中に重装備のスケルトン数体に出くわし、部隊はバラバラとなり撤退。

 その時に「そのドロップアイテムを拾って逃げろ」と言われ、無我夢中でそれを拾い、一目散に逃げたんだと。

 その拾ったアイテムが地図らしい。

 

 だがそれなら地図は白紙のままのはず。

 このダチョウ男はきっと地図を広げて見たんだろう。

 その時に何らかの作用が働いて、魔道具としての地図が完成したと考えるのが妥当ではないか。

 そうなるとダチョウ男はウソをついているな。


「お前、持ち帰る途中、ドロップアイテムを広げただろ」


 ストレートに聞いてみた。

 するとダチョウ男の身体がビクンと跳ねた。

 分かり易い奴だな。


「し、知らねえ……ですよ」


 とぼけるダチョウ男だが、目が泳ぎまくっている。


「まあ良い。次回は命が無いと思え」


 そう言うと、ダチョウ男の身体は縮こまった。


 俺は改めて皆に向かって言った。


「良く聞け。悪逆のゾエの討伐が今回の目的だ。これは何より最優先する。忘れるな。では出発!」


 オーク兵からは「オオ!」の力強い掛け声があり、遅れてエミュー達からも「お、おお〜」と、弱々しい声が上がった。


 そこでダイが念話を送ってきた。


『あのエミュ族の男を連れて行くのは危険じゃないのか。俺はあいつをどうしても信用出来ない』


 俺も同じ意見だ。

 だが、それ以上の能力があのダチョウ男にはある。


「ダイ、むさぼり亭の厨房でな、あの野郎は俺の目の前から逃げ切った。あの俊敏な身のこなしは本物。恐らくエミュ族の中でも逃げ足なら、トップクラスなんじゃないか。城ダンジョンの入口さえ見張っておけば、逃げ切れないだろ。イザという時の連絡員だよ」


『なるほどな。でも奴の行動には常に気を配れよ』


「ああ、そうするよ」


 こうして俺達は城ダンジョンへと入って行った。


 先頭を歩くのは案内人のオーク兵と俺や獣魔達、次に荷物持ちのエミュー達、そして最後尾にアンデッド装備のオーク兵という隊列だ。


 俺達以外にも探索者チームが次々と入って行く。

 逆に戻って来たチームもいる。

 城ダンジョンには、まだまだ未踏破の場所が多くあり、日々こうした探索者チームが潜って行くのだ。

 たまに人間の冒険者も来るそうだが、荒れ大陸まで来る人間は少ない。

 その為、折角造った冒険者ギルドの支店は、常に暇そうにしてるらしい。

 だが少なくとも、人間と魔物の間に中立な立場として立ってくれている。

 暇でも無いと困る部署ではある。


 ダンジョン内は暗い所もあれば、明るい所もある。

 城の造りをしているからか、通路の壁に松明たいまつが掛かっているところまである。

 ただし松明たいまつを外すとあかりは消える。


 今、俺達がいる場所は暗い所にあたる。

 オークの祈祷師きとうしが、魔法の光を隊列の前後に出してくれて、おかげでかなり明るい。

 魔法職がチームにいると便利だよな。


 ダンジョン内に入って大分経つが、今のところ魔物には遭遇していない。


 そんな中、歩きながら後ろにいるダチョウ男に話し掛けた。


「お店の営業は良いのかよ」


 むさぼり亭は二人で切り盛りしていたから、こいつが抜けると営業出来ないのではと思ったからだ。

 するとダチョウ男。


「俺がいない日だけは知り合いを雇っているから、何とかなるんですよ。なんたって、こっちの収入の方が上なんすから優先してるんすよ」


 普段から三人でやれば、もっと客が増えて利益も上がると思うんだがな。

 料理の味も悪くない。

 ちょっと丁寧に作ればもっと旨いと思うしな。

 でもあの接客じゃ駄目か。


 そんな話をしていると、最初の魔物に遭遇した。


 曲がり角の先から出て来たのは三体のスケルトン。

 鎧などはなく、手に斧や剣を持っている。

 はっきり言ってザコである。


 ラミが「私に任せろや」と言って前に出る。


 一撃だった。


 ラミがクルッと回転するや、蛇の尻尾がスケルトン三体をまとめてぎ飛ばした。

 

 それだけでKOだ。


 壁に激突したスケルトン三体は、一瞬で砕け散って煙と化した。


「おい、おい、おい、もうお終いかよ〜」


 物足りないと愚痴ぐちをこぼすラミ。


 ゾエ探索はまだ始まったばかりだ。


 





良し、182話の投稿で間違い無い。

ちゃんと確認したぞ。




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