181 肉煮込み料理を注文した
180話を飛ばして181話を先に投稿してしまいました。
大変失礼しました。
さらに四半刻してから、やっと料理が出てきた。
そこでハピがつぶやいた。
「これ、注文していませんわよ」
獣魔達の前に次々に運ばれてくる料理は、注文してない腸詰め料理ばかり。
俺の前に出された料理もそうだ。
俺は肉煮込みを頼んだはずだが、目の前の料理は腸詰め料理にしか見えない。
獣魔達はステーキ系の料理のはず。
全員分の注文したのは俺だから、間違いない。
そもそもメニューの種類が少ないんだから、間違えるのもおかしいだろ。
「おい、店員、ちょっといいか」
俺が声を掛けると、店員の女がダルそうに来た。
「なに?」
「腸詰め料理は誰も注文してないんだが」
「何言ってんだよ。そんなこと言って金を払わないつもりかいっ」
こいつ……
いや、駄目だ。
ここでキレたら俺の威厳が無くなる。
紳士に対応しようじゃないか。
「分かった。これはこれで良いから、肉煮込みも作ってくれ」
そう言うと「ちっ」っと舌打ちして厨房へ知らせに行った。
「態度わりぃ店員だよなぁ」
「本当ですわね。こんな店、滅べば良いのですわ」
ラミとハピは良く堪えてるよ。
俺も堪えよう。
取り敢えず出ている料理を食べ始める。
腸詰め料理の味見をしたが、そこまで味は悪くなかった。
ちょっと工夫すれば、もっと美味しく出せる気がする。
パンはあまり質は良くないが、これは他で買ってきたパンのようだ。
そして、やっと肉煮込み料理が運ばれて来た。
「ほら、肉煮込みだよ。これで良いんだろ」
怒り度はマックスなのだが、俺は冷静に返答してやった。
「あ、ああ、それで良い。手を煩わしたな」
俺も大人になったもんだ。
大人の対応をしてやったぜ。
さて、待ちに待った肉煮込み料理だ。
シチュー料理の様だ。
デカい肉がシチューからはみ出している。
これは旨そうだな。
匂いもたまらん。
早速スプーンでシチューをすくうと、料理の中に有ってはならないものがスプーンにのっかった。
――――タバコの吸い殻。
厨房で吸ってたよな。
怒りが込み上げてくる。
俺は勢い良く椅子から立ち上がった。
獣魔達が何事かと俺を見る。
俺は気にせず歩き出す。
厨房に向かって。
厨房ではダチョウが二匹、タバコを吸っている。
厨房の中へと足を踏み入れる。
「おい、勝手に入って来るんじゃねえよ!」
ダチョウ男がほざき出したようだ。
「俺の肉煮込み料理にタバコの吸い殻が入っていた」
俺がそう言うと、ダチョウ男は「ふん」と鼻で笑う。
「自分で吸ったタバコじゃねえのかよ」
こいつ、もう無理。
俺は腰の小剣に手を掛けた。
するとダチョウ男。
「おい、おい、ここで剣を抜く気かよ」
その言葉で剣から手を放して言ってやった。
「なら剣無しでブチのめしてやる!」
目の前にあった鍋をダチョウ男にぶん投げる。
ダチョウ男は「おっと」と言いながらそれを避ける。
こいつ、意外と素早い。
だが俺の敵じゃない!
俺はダチョウ男に接近する。
ダチョウ男がダチョウ女に向かって、何やら合図を出した。
俺は構わず接近すると、なんと二人して走り出した。
それも裏口から店の外へと。
もの凄い速さだった。
もしかして逃げたのか……
まあ、良い。
せめて腸詰めだけでも食って帰るからな。
俺が席に戻ると、獣魔達はスッカリ料理を平らげていた。
「おい、俺の分の腸詰めは?」
俺がそう言うとラミ。
「ライさんは肉煮込み料理だったんだろ」
続いてハピ。
「そうですわよ。だから腸詰めはラミとわたくしとで、美味しく頂きましたですわ」
そして最後にダイ。
『ダチョウ達はどうした?』
「裏口から逃げたよ」
『それなら会計ただになったな』
そんなことを言ってきたが、おかげで俺は食事にあぶれたんだぞ。
仕方なく厨房にあったパンを見つけ、それを噛じる羽目になった。
そんなことをしていると、店の入口辺りが騒がしくなってきた。
何かと思って見に行くと、俺達を迎えに来た馬車に加えて、護衛のオーク兵達とオーク番兵が数人来ていた。
番兵の後ろには、ダチョウ二人が隠れるようにいる。
なるほど、そういうことか。
番兵を呼んで来たとは都合が良い。
俺は外に出て言った。
「そのダチョウ二人を捕らえろ」
俺の姿を見た番兵が大慌てで、ダチョウ二人を捕えるのだが、ダチョウ二人は意味が分からず、番兵のなすがままになっている。
番兵の一人が俺に聞いてきた。
「こいつら、何、した?」
俺は答えてやった。
「俺の料理に毒物を入れやがった」
するとダチョウ男が騒ぐ。
「違う、毒物なんかじゃない。タバコの吸い殻だよ、ただの吸い殻っ」
それを聞いたオーク番兵とオーク兵達は、ダチョウ男をボコボコにしていた。
それを見ていたら俺も段々冷静になり、ちょっとやり過ぎかと思い、ダチョウ二人を許すことにした。
「その辺で許してやれ。もう開放して良いぞ」
ダチョウ二人は震えながら、店の奥へと戻って行った。
それと入れ替わる様にして、獣魔達が店から出て来る。
結局、殆ど何も食べれなかったな。
俺は諦めて馬車に乗り込むのだった。
気分が悪いまま、俺達は城ダンジョンへと向かう。
城ダンジョンに到着すると直ぐに、管理棟に向かった。
管理棟には、城ダンジョンの管理責任者がいる。
管理しているのはオーク兵かと思っていたのだが、責任者の部屋に入ってみて驚いた。
そこに居たのは“翼の無い鳥連合会”の会長でダック族の、ドナ・ルードだった。
「これはこれは、長旅お疲れ様でございましたグワ」
相変わらず身なりの良い服装だな。
しかし何でここにいるんだか。
「まさか城ダンジョンの管理責任者って、お前なのか?」
誇らしげに返答するドナ・ルード。
「そうですグワ。ちょっと前に就任しましたグワ。これだけ役職を兼任する者は、魔物オウドール混成軍団の中でも、私くらいでしょうグワ」
多分それだけこいつは、暇そうにしてたんだろうな。
「明日、城ダンジョンに入るつもりだ。ゾエが居たという場所へ行きたい。案内役の用意を頼む。それから荒れ大陸の地図なんだが、発見者に会えないかな。話を聞きたい」
「全て可能ですグワ。明日の朝一で用意しますグワ」
良し、明日が楽しみだ。
ドナ・ルードは123話に出てきています。