180 ダイの秘密を知った
180話を飛ばして181話を先に投稿しちまいました!
取り急ぎ投稿しました!!
悪逆のゾエに似た魔物がダンジョン内で出現。
まず考えたのが似ているだけの勘違い。
確かに一度ゾエは城ダンジョンに行っている。
勝手に入ろうとして、オーク兵達と睨みあってはいるな。
つまり何人かのオーク兵と、顔を合わせている。
そのオーク兵がダンジョン内でゾエに似た魔物に会ったと言ったとする。
そうなると信頼性は高い。
いや待て、俺は確実に倒した。
魂に短剣を刺したんだ。
燃えて灰になったんだ。
そうだ、きっと似ているだけの勘違い。
驚かせやがって。
そこへダイが念話を送ってきた。
『伝書カラスに何が書いてあったんだ?』
俺は内容を説明すると、ダイが怪訝な表情をする。
「ダイ?」
黙り込んだダイに声を掛けると、ゆっくり視線を俺に向けて返答した。
『前にも言ったが俺は不死の存在だ。その不死の存在は俺だけじゃない。バンパイヤの始祖であるゾエが不死の存在だったとしても不思議じゃないだろ。元々不死、アンデッドなんだからな』
「ゾエも新しい肉体を得たというのか。でもな、何でダンジョンの魔物なんだよ」
『考えられることは、そうだな。例えば魂が弱っていて、依代を選べなかったとか』
心当たりがあるじゃねえか!
「ゾエを倒すのに“斬魂の短剣”を使ったんだ。魂に直接ダメージを与える武器な。それが原因かも」
『そうかもしれないな。魂が弱っていたとすると、元々実体を持たないダンジョン魔物は、受け入れやすい入れ物だったのかもしれない』
「それが不死のゾエだとすると、消滅させることは出来ないのか」
俺の質問に少し考えるダイだったが、ため息をついて話し出す。
『あまり教えたくない情報だがな、不死の存在でも死ぬ場合はある。それは魂に力が無くなった時だよ。その時は魂は消滅する』
そうか、ダイも死ぬ場合があるのか……
「どうやったら魂の力が無くなる」
『まず、生まれ変わる度に魂は弱まる。それから魂の状態のままでいても、時間の経過と共に弱まる』
ダイは一度、ハピを助ける為に肉体を変えている。
つまり魂が弱くなったのか……
これは二度とさせられないぞ。
さらにダイは続ける。
『それから魂に直接攻撃を与えると、かなり弱まるはずだよ』
これを聞いたらゾエの状況と合致する。
恐らくダンジョン内でオーク兵が見たのは、ゾエで間違いない。
「なあダイ。もう一度、斬魂の短剣で一撃を与えたらどうだろうか」
『消滅する可能性は高いとは思うが、ゾエの魂の力がどのくらいのものか分からんから、何とも言い切れないよ』
「それでも放置は出来ない。それと魂の力は回復するのか?」
『回復はする。バンパイヤなら、血を吸うことでより回復が早いんじゃないかな。俺はそのゾエとかいう奴を見たことないが、会ったら何か分かるかもしれない』
ここまで聞いたら行くしかない。
「そらなら話は簡単だな。ダイ、城ダンジョンへ行く。ラミとハピに準備させてくれ」
そうと決めたら準備は早い。半刻もしないうちに家を出た。
以前バンパイヤの襲撃があってからは、自宅内に対バンパイヤ用の武器や道具を用意してある。
それを馬車に積めば良いだけ。
今回の護衛はオーク兵が十人ほどで獣車が一台だけだが、現地で対アンデッド用の装備をしたオーク兵と合流出来るように指示した。
ちなみに太ってしまったラミとハピは、馬車から降りて付いて来てもらっている。
痩せさせるためのランニングだな。
「運動するか飯抜きかのどっちか選べ」と言ったら、迷わず運動を選んだ二人だった。
ラミはそんなに苦ではなさそうだが、ハピは翼が邪魔で脚で走るのは辛いようだ。
ドーズの街を経由し、地獄の裂け目に到着。
なんと橋が完成していた。
てっきり人間が作るようなアーチ状の橋かと思ったんだが、目の前にあるのは大きな吊り橋だ。
距離が長いから、普通の橋は難しかったのかもしれない。
とは言ってもかなり幅のある大きな橋で、揺れるのさえ気を付ければ馬車でも渡れる。
俺達は一台ずつゆっくりと馬車を通した。
俺達は一応、乗車はせずに歩いて渡ったがな。
そしてグースの街へと到着。
“グースタウン”だ。
前に来た時も驚いたが、今回もその発展ぶりに驚いた。
多くの建物が作り直されているし、人通りがまた増えている。
今までは鳥系亜人が主流だったが、それ以外の種族も多くなっている。
それに数は少ないが獣人も結構見かける。
さすがに人間は見かけないか。
交差点には高確率で番所が設けれていて、オーク兵が目を光らせている。
それにダック兵がチョイチョイ街中を巡回している。
だいぶ治安が良くなっているし、街が発展している。
人間社会と比べるなら、辺境の中都市ほどの規模だろうか。
一旦、ここで食事休憩するか。
メイン通りで食事の出来る店を探していると、この街にもあった、バルテクの支店。
その隣には最強亭の文字が見える。
やはりこの街にも出店したか。
ただ他の街と違うのは、用心棒が高ランク魔物ということ。
屋根の上には小型だが、グリフォンが睨みをきかせていた。
まあ、たまには違う店も良いかと、裏通りの良さ気な店を選んだ。
馬車を置くスペースが無いので、俺達と護衛のオーク兵四名と降りて、馬車は一刻してから来るように指示した。
店の名は「むさぼり亭」とあり、飲食店と宿のマークが描かれた看板が出ている。
オーク兵は外で見張りだそうだ。
なので俺達だけで中へ入る。
造りは人間の街の宿と似ているか。
一階が飲食店で二階が宿になっている。
決して綺麗な店内ではないが、汚いとまではいかない程度。
「空いてる席に適当に座んな」
一応、女性らしき亜人店員から声は掛かった。
見た感じだと、ダチョウ系亜人らしい。
確か“エミュ族”だったかな。
しかしかなり乱暴な口調だよな。
魔物の街だからこんなもんかと思い、俺達は隣り合わせのテーブルに四人ずつ座った。
他に客は二人と三人のニ組の亜人だけ。
店が狭いから、俺達が座るとカウンター以外は満席だ。
厨房を覗くと、料理担当は一人、接客も一人だから、たった二人で店を切り盛りしているようだ。
そうなると中々こっちに注文を取りに来ない。
しびれを切らしたラミが立ち上がりかけたが、おれはそれを制止した。
「やめろ。時間はあるから、少しくつろげ」
「ライさんがそう言うなら仕方ねえな」
大人しく席に座り直すラミ。
文句を言ったところで、二人しかいなければどうにもならない。
しばらくすると、二人客が食い終わり退店。
そして三人客の料理が出揃い、遅いと文句を言いながら食い始めた。
そこで店員が悪びれもせずに、やっと俺達の注文を聞きに来た。
「注文は?」
ラミとハピがキレそうである。
俺が全員分の注文を店員に伝えた。
まずは果実水から到着。
オレンジ色をしている。
柑橘系の香りがして、匂いからして旨そうだ。
初めて飲んだが結構美味い。
追加注文してしまうくらい美味い。
無愛想な店員に果実の種類を聞いてみた。
「この果実水は何と言う果実を使ってるんだ?」
「はあ?そんなの自分で調べなっ」
ちょっとだけムカついたが、ラミに注意した手前、声を荒げる訳にはいかない。
「そ、そうか。それなら仕方無いな」
ひたすら我慢だ。
三人客も帰り、店内は俺達だけになった。
にも関わらず、注文してから半刻ほど経ったが、まだ料理は出てこない。
厨房を再び覗くと、店員は二人してタバコを吸ってやがった。
これはきっと、料理を煮込んでいる間に一服してるだけだよな?
さらに四半刻してからやっと料理が出てきた。