17 バルバルで麻痺した
ラミアが俺の返答を待つかのようにジッと見つめてくる。
ハピとダイも俺をジッと見つめる。
困ったな。
俺としてはあまり加えたくないのだがな。
これ以上冒険者ギルドで目立ってしまっては、俺の正体がバレる可能性が高くなる。
ただでさえハーピーの特殊個体が珍しいと目立っているのに。
加えてラミアの獣魔となれば、さらに目立つこと間違いなしだ。
くそ、戦力としてはありがたいんだが、どうするか悩みどころだな。
よし、テストしてみるか。
「それならラミア、条件を出そう」
「条件? なんだ、言ってみろ」
偉そうだな、こいつ。
腕を組んでやがるし。
「まずはその巨乳を隠せ!」
ラミアは理解できないと言った表情をすると、すかさずハピが言葉を挟んできた。
「私を見るのですわ。人間の社会に入り込むには、胸は隠さなければいけないのですわよ。人間社会ではですよ、胸が大きければ偉いってことはないのですわっ」
確かに胸が大きくても偉くはない、偉くはないんだがな、人間のほとんどの女性は大きいのを望むんだぞ。
それにも増して、人間の男性は大きいのを好む傾向かあるぞ。
まあ、そこは良いか。
ラミアも人間社会にそこまで詳しくないようで、そこは素直に従う様だ。
「そうか、知らなかった。巨乳は隠さないとダメなのか」
ちょっと理解の仕方が違うようだが、まあ良いだろ。
俺はさらに条件を出す。
「それとだ。この後、俺達は冒険者ギルドの依頼をこなしに行くんだが、それに付いて来い。そこで依頼をしっかりこなせるのか見てから、お前を仲間にするのか判断してやる」
そこで不敵な笑顔を見せるラミア。
「面白い。私の実力を見たいのだな。分かった、見せてやる!」
自信満々だな。
まあ良い。
ラミアの呼び名は「ラミ」にして、お互いに名前で呼ばせるように伝えた。
それから、とりあえず胸を隠す布は渡した。
人間に出会わなければ良いのだが、何となく視線がいっちゃうんだよ。
長い人間生活のせいかな。
・
・
・
・
・
そして陽が大分沈んだ頃になって、やっと目的の場所へと到着した。
バルバルの繁殖地だ。
とは言っても範囲は広い。
この辺り一帯の森が繁殖地らしい。
その中から巣を発見し、さらに卵も発見しないといけない。
馬車は置いて森へと入って行く。
夜とあってバルバルは寝ているから動かない。
それはそれで良いのだが、動くものが見えないと探せないのが人間の顔を持つ魔物達。
ダイの嗅覚に頼るしかない。
俺も変身すれば良いのだが、ほとんど食事をしていない今は余計な体力は使いたくない。
俺だけじゃないが、ここに来るまでろくな食事をとっていない。
誰もが腹を空かしていた。
「ダイ、お前の嗅覚が頼りだ。頼むぞ。早く発見すれば、それだけ早く帰れるからな」
『任せろ。腹が減っている方が早く見つけられる』
ダイが直ぐに行動を開始する。
真っ暗な森の中を地面に鼻を寄せながら進む。
俺達はその後をキョロキョロしながら進む。
暗くなるとハピは役立たずな感じだ。
暗闇はあまり見えないらしい。
脚は鳥だから歩くのも余り得意そうじゃないしな。
ハピは地面の上では余り動きは良くない。
そこへラミが無駄口を叩く。
「ハピ、お前は地面の上じゃ不便そうだな。それに暗いと前が見えないか。ははは、不憫だな」
「そう言うラミは掃除が上手ですわね、お腹で森を掃除するなんて、普通じゃ出来ませんわ。ほーほっほっほっほ」
ラミアは下半身が蛇だから足はなく、地面を擦って移動するからしょうがない。
しかしこんなやり取りをしているが、ハピはラミが仲間に入ることに反対していないんだよな。
実に不思議な関係性だ。
しかし腹が減ったな。
限界に近い。
『ライ、近いぞ!』
おっ、ダイが見つけたらしい。
小走りになって行く。
俺とラミを速度を速める。
ハピは時々翼を広げて、空中に飛び上がりながら走る。
「ガルルルル!」
ダイが何かに飛びついた。
大木の幹に窪みがあり、枝が集められたような場所が見える。
そこが巣らしい。
さらにダイがそいつに食らいついた。
鳥の鳴き声が聞こえる。
同時にダイの悲鳴が……
「キャンッ、キャイーーン」
急いで走り寄ると、全身が麻痺してひっくり返るダイがいた。
バルバルは触れると麻痺する毒があるんだった。
それでもダイは咥えたバルバルを放さない。
腹が減っているからだろうな。
バルバルは卵だけじゃなく肉も食用にもなると聞いた。
全身に生えた麻痺毒の針さえ取れば食べられる。
ただ不味い。
まずはダイが咥えたバルバルの息の根を止める。
ナイフで一刺しと簡単だ。
ダイはしばらくすれば麻痺が解けるだろう。
バルバルの麻痺毒は死ぬような毒ではないから大丈夫だ。
ふと、背後に殺気を感じてそっと振り返ると、そこにはヨダレを流しているハピとラミがいた。
こいつらも腹を空かしている。
しょうがない、まずは腹を満たすか。
「しょうがない、これを捌いて喰うか。こいつの毒針の皮を剥がしてくれ」
そういって二人の間に放り投げる。
すると一瞬だけハピとラミが見つめ合う。
そしてーー
「私が先に手を付けたんだぞ!」
「何言ってらっしゃるのですわ、私が先ですわ!」
取り合いだ。
しかし死んでも毒針は有効だと思うぞ。
「あががががっ」
「な、な、な、なんですのっ」
見事に麻痺毒でぶっ倒れる二人。
やっぱりこういうところが魔物だな。
俺もだけどさ。
三人が麻痺している間にバルバルの巣を覗くと、大きな卵がひとつある。
まずは一個確保で小銀貨が一枚分の稼ぎだ。
次回投稿は明日の朝くらいの予定です。
追伸:
「いいね!」のお願いです。
どういった話の時が面白かったのか、読み手側の好みを知りたいのです。
面白かった話の最後には是非「いいね」ボタンをよろしくお願いします。
一話に着き一度押せます。
全部ではなく、面白かったところで押していただけると助かります。
「いいね」が貯まったら順位の発表をしたいと思います。