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冒険者になった魔物達〜気が付いたら魔王軍と呼ばれてた〜  作者: 犬尾剣聖


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165/204

165 襲撃の理由を知った








 ローランが口を開く。


「僕がまだ十才の頃かな。右腕の肘の辺りからうろこ状のものが生えてきたのは。直ぐに母親に見つかったんだけど、二人して隠すって決めてね。必死で隠したよ。でも隠し通せる訳ないよね。侍女に見つかって悲鳴を上げられた時には、うろこは指先近くまで広がってたんだよ。そこから僕の生活は激変したんだ。母親以外の全ての人の僕を見る目が変わったんだよ。ショックだったね。薬やポーションは全く効かなくてね、手の施しようがなかったよ。そしてさ、僕の指先までうろこで被われた頃かな、親戚が集まって話し合いにまでなったんだ。その結果どうなったと思う?」


 こういうお貴族様的話は苦手だ。

 俺は貧しい生活をしてきたからな。

 だから質問されても首を傾げるしかない。


 するとローランは話を続けた。


「会議の結果ね、命は助かったんだけど、他の貴族連中にバレないようにってさ、人里離れた小さな家に飛ばされたんだよ。一緒に付いて来てくれたのは、小さい頃から面倒を見てくれた老齢の侍女が一人だけ。そこから僕は平民並みの生活に転落したんだよ。僅かながらも生活費は送ってくれたから、なんとかギリギリの生活は出来たよ。それでしばらくすると父と兄が亡くなって、僕に継承権の話がきたんだよ。だけど叔父が反対したんだ。このうろこの腕を世間に知らせたくないってね。それで弟にがせて叔父が摂政をすると言い出したんだ。だけど母は僕に継がせようとしてるみたいでね、こんな事態に発展してるって訳だよ。なんか僕の関係ない所で色々動いてさ、やんなっちゃうよ」


 俺が「そんなこと話して良かったのか?」と聞くと、ローランは「もうどうでも良くなったよ」と返す。

 さらに。


「それにさ、僕はどの道ね、長くは生きられないと思うよ。叔父の力は強大だから、どう転んでも僕を生かしておくはずがないよ」


 つまり自分が後継ぎとなったら暗殺されるし、弟が継いでも邪魔な存在だから闇にほうむられるということだろう。

 どの道ローランはこの先、生きていくすべがないと思っている。

 そこまで覚悟しているのか。


 人間貴族は本当に面倒臭いな。


 さて、こんな所で時間を食ってる訳にはいかない。

 新手が来る前に、奴らが乗って来た馬を貰って先を急がなくてはな。

 ローラン一人を馬に乗せ、ひたすら街道を前進する。

 これで俺達の歩く速度は落ちない。

 残りの四頭も換金出来るかもしれないから連れて行く。


 これで期限までには余裕で間に合うはずだ。


 そこからローランは良くしゃべるようになった。

 特にラミとハピとは仲が良い。

 ローランとの共通点として、半人半魔だからだろうか。

 そんな訳ないか。


 ローランに魔物の腕の話は禁句だというのに、空気読めないハピがその話題に斬り込んでいる。

 

「魔物の腕が手に入ったのに、何でそんなに嫌がるのか分かりませんわね。私は身体の半分は人間ですけど、魔物の部分の方が全然強いですわよ」

 

 すると驚いたことにローランは、自分の右腕を前に出して袖をくった。


 うろこの右腕があらわになる。

 それは紛れもなく、緑色に光る魔物の手だ。

 

 爪は鋭くリザードマンの様な形状の手をしている。


 ローランはそんな腕を見せびらかす様に掲げる。


「何度見ても凄い腕だよなあ。まるで自分の腕とは思えないよ」


 と自分の腕を見つめながら、そんなことをつぶやくローラン。


 意外と気に入ってるんじゃないだろうか。


 そのローランの魔物の様な腕に対し、目を輝かせながら話すのはラミだ。


「凄いじゃねえか。見事な鱗肌うろこはだだな」


 そう言いながらローランの腕に手を伸ばすラミ。

 

 ローランは一瞬、手を引っ込めそうになるが留まった。

 するとラミが「おおっ」と目を輝かせながらうろこを撫でる。

 何だかローランは恥ずかしそうだが、満更でもない様な表情だ。


 すかさずハピも手を出しローランの腕を撫で始めた。


「まるでスケイル・アーマーみたいですわね」


 そのハピの発言に対してラミ。


「おお、確かにそうだな。私の蛇のうろこ部分もこれだったらどんなに良いか」


 ローランはニヤニヤしながら「そうかな」とか言ってるし。

 意外とチョロいのかも。


 その後、ラミの蛇のうろこ部分や、ハピの羽部分をローランに触らせたりと、なんだか楽しそうに見えるのは気の所為だろうか。





 その後は特に襲撃もなく山間の街道を抜けた。

 そこでやっと橋の駐屯兵の交代要員と遭遇した。

 獣魔達を見るなり戦闘態勢をとられたが、何とか説得するところから始め、橋での襲撃を説明した。

 半信半疑の様だったが、かろうじて信じてもらえたようだ。

 冒険者章とギルドの依頼表を見せたからだろう。

 それと現場までついて来いとは言われなかったのは助かった。


 さらに先を進み、段々とメイビの街へと近付いて来た。

 ローランをメイビの街の冒険者ギルドまで連れて行って、次の護衛の者に引き渡せば俺達の仕事は終わりだ。

 

 丘の上に立つと街が見えてきた。

 そして海も見える。

 港湾都市といった感じだろうか、そこそこ大きな街だな。

 エルドラの街と余り変わらない大きさだが、船が行き交っているから、エルドラよりもなんだか賑わっている感じがする。


 街の近くには大きな川が流れていて、その川は海へと流れ込んでいる。

 港もかなり大きく大小様々な船が停泊しているのが見える。

 ローランによるとメイビの街は、水上輸送で栄えた街で、街中は多国籍の人であふれかえっているという。


 そんな話を聞いていてふと考えたのだが、ローランはどこの街の領主の子なんだろうか。

 まさかこの街じゃ……


「あ、そう言えば言ってなかったっけ。メイビの街はオークレイ家が領主で、僕の名前はローラン・オークレイだよ。あ、メイビの街は領都でもあるね」


 やぱりそうか。 


「ってことはだよ。ローランにとってこの街が最終目的地ってことか?」


「うん、そうだね。多分だけど、冒険者ギルドには辿たどり着けないと思う」


「何言ってる。ここまで無事に来れただろ。どんな刺客でも返り討ちにしてやる」


 するとローランは悲しそうな顔で言った。


「相手が刺客や魔物なら返り討ち出来るけどさ、相手が人間の貴族だったらそれも無理だよね」


 どういう事だろうか。

 相手が貴族?

 

「相手が貴族でも攻撃してくれば反撃してやるまでだが、問題でもあるのか?」


 するとローランは指を差して言った。


「あそこに見える集団、多分だけど僕の叔父さん兵士達だよ。僕を引き渡せって言ってくるんじゃないかな」


 確かにこの街道の先の平坦地に、数台の馬車と兵士らしき人間達が休んでいるのが見える。

 ちょっとした休憩というよりも、野営地のようになっている。


 ああ、なるほど。

 俺達が来るのを待っていたんだな。











まさかの連続投稿w



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