152 リザードマンと戦った
オークボアライダーが、前方の通りを塞ぐリザードマンの一団に向かって走り出した。
その敵はというと、酒を飲んでいて足元がおぼつかない者や、略奪したであろう食器や壺などを抱えている者など、どう見ても雑魚集団。
中には武器も持たずに、酒を抱えて通りに出て来た者までいる始末。
そこへオークの中でも精鋭と言われる、オークボアライダーが得意の騎乗突撃を仕掛けたのだ。
結果は目に見えている。
リザードマンらは通り一杯に広がった騎乗突撃に、為す術なく蹂躙されていった。
後に残ったのは、血で染まった通りとうめき声だ。
後方を見ると、黄緑色肌のノロオーク三百人が必死に戦っていた。
やはり戦闘には慣れてないが、数で圧倒的に優勢なので、何とか互角以上に戦ってはいる。
敵が態勢を整えてきたら危険だが、今のこの状態ならば問題なさそうだ。
各個撃破出来る。
「よし、オーク兵先行しろ。俺達は城へ向かうぞ」
俺はそう告げて、オークボアライダーを先頭に、通りを進んで行った。
その先でもリザードマンと時折戦闘になったが、組織的な抵抗のない個々の戦いなど、俺達の敵ではなかった。
蹴散らしつつ城へ到着。
その頃にはすっかり陽が昇り、街中が明るく照らされ始めていた。
湖に朝日がキラキラと反射するのを眺めながら、俺達は城へと続く石造りの橋を渡って行く。
そして男爵の城前に来ると、入口は突破されて敵兵に侵入されてはいたが、城の内部の幾つかの区画では、未だに抵抗する者がいるようだった。
その証拠にリザードマン兵が、慌ただしく動き回っている。
「オークがいるぞ〜!」
城にいる敵からの突然の叫び声。
完全に見つかったのだが、良く考えたら今更だな。
しかしこれで城の中にいた敵兵が、俺達に集まって来た。
城の入口前で俺達は、リザードマン兵達と睨み合うように対峙した。
先程まで見てきたリザードマンとは、装備が違うな。
さっきまでの奴らはスケイルメイルアーマーだったが、こいつらは革鎧の軽装で統一されている。
水兵なのかもしれないな。
ジロジロ観察していると、隊長らしきリザードマンと目が合う。
そのリザードマン兵が、武器を構えたまま質問してくる。
「人間と魔物だと……貴様何者だ。この地は我々リザードマンが占領し、今やこの街は我々の街だ。貴様らが来て良い場所ではないぞ!」
魔物として強者であるラミとハピにビビってはいるが、しっかりモノを言えたところは褒めてやりたい。
俺は質問に質問で返す。
「俺はライという冒険者なんだがな。この街にはな、俺の息が掛かった店があったんだよ。お前達はその俺の店も自分達が占領したというんだな?」
「あ、当たり前だ。この街は我々リザードマンのモノだからな」
周りのリザードマン達も「そうだ、そうだ」と声を上げる。
するとラミが我慢出来ずにズイッと前に出た。
「おい、トカゲ共、さっきから聞いてりゃなあ。何を勝手な事を言ってやがんだよっ。よおく聞いとけよ。この街はな、初めからライさんのモノなんだよ!」
ちが〜〜うっっ!!
勝手に喋らせるとマズいと思い、俺が前に出ようとするのだが。
「おい、ラミ、そうじゃな――――」
横からハピがしゃしゃり出る。
「トカゲ達、良く聞くのですわっ。この地は我々“魔物オウドール混成軍団”が占領したことを宣言するのですわ」
静まり返る城の入口前。
リザードマン達は「こいつ何言ってんだ」的な顔をしている。
これは収拾がつかなくなる前に、俺が前に出ないとな。
「よ、よおしお前達、そのへんにして――――」
そう言って前に出ようとすると……
「これはこれは皆様、お揃いの様で。ライ様、大変遅くなりました。オーク戦士五百名に加えてその他雑兵達五百名、ただ今到着しました」
俺の横にインテリオークが立っていた。
こいつ、いつの間に!
しかし増援は助かる。
来た道を振り返るとと、確かに街中の至る所から戦闘音が聞こえてくるし、時折オーク兵やゴブリン兵、それにダック兵が通りを横切って行くのが見える。
これなら街中の掃討は任せても良さそうだ。
そして再びインテリオークが口を開く。
「さてと、後はこの城だけですが……」
そこでやっと俺は一番前に出て叫んだ。
「殲滅しろ!」
次の瞬間、リザードマンの首が鮮血と共に空中を舞う。
ラミが剣を振り抜いたのだ。
次いでハピが舞い上がり、脚の鉤爪を剥き出しにし、二人のリザードマンに襲い掛かる。
そしてあっと言う間にその頭部を握り潰した。
出遅れたオークボアライダー達も慌てて突撃し、戦闘に加わっていった。
「これは俺の出番は無さそうだな」
そうつぶやきながらも、ゆっくりと城の中へと歩を進めた。
それにダイとインテリオークも付いて来る。
俺達が入り口から城の中へ入って行くタイミングで、入り口前にいたリザードマン達は片付いていた。
良い仕事をしてくれるな。
城の中に入ったのだが、予想通り荒れ放題だった。
しかし略奪品は部屋に山積みされているだけで、持ち出しはされていない。
しかし俺がウロウロしてても邪魔になるか。
そこで暖炉の火がまだ着いていた部屋を見つけたので、窓から景色を見ながらくつろいでいた。
ダイは暖炉の前で丸まり、寒そうにしながらも寝る体制だ。
そして四半刻もしない内に、オーク兵の一人がが俺達を見つけて報告に来た。
「リザードマン、降伏!」
「そうか、人間の生き残りはいるのか?」
「開かない扉ある。生き残りかも」
「ほほう、開かない扉があるのか」
確かに生き残りの人間かもしれないが、お宝が隠されているかもしれないじゃないか!
俺は立ち上がり言った。
「よおし、その扉の前に案内しろ!」
ワクワクしてきたぞ!
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