150 陥落寸前らしかった
149話が抜けていました。
アップしました!
ハピが放った竜巻魔法は、対岸にいたリザードマン達に襲い掛かった。
だが既に散り散りに逃げていた為、数人を竜巻に巻き込んだだけで終わる。
そこでやっとハピが戻って来た。
「どうです、蹴散らしてやりましたですわっ」
自慢げに胸を張るハピには、いつもの言葉を言ってやった。
「今日明日と食事抜きな」
ハピはアゴが外れんばかりん大口を開けて固まった。
男爵の部下たちは怪我人を集めたり、湖に残された漁師や部下を救うのに忙しそうだ。
う~ん、どう言い訳したら良いんだろ。
やっぱり謝罪するべきだよな。
俺は岸辺にいるマヌの所へ行き声を掛ける。
「え~っと、マヌ。俺の獣魔がちょっとやり過ぎたようだ」
するとマヌが振り向き笑顔で言った。
「ライ様、何をおっしゃいます。素晴らしい働きでございました。さすが魔物使いの英雄でございます。味方の被害も軽傷程度で最小限で済みました。反対にリザードマン側を見てください。多数の捕虜を残して退散ですよ。こんな圧勝した戦いは何十年ぶりです」
俺とマヌが会話している最中も、近くに来た兵士や漁師が俺に挨拶をしていく。
そのだれもが笑顔だ。
俺を賞賛しているのだ。
これは結果オーライだろうか
その後、急にインテリオークは出店契約を結んだ。
赤字になりそうなのに良くやるな。
そこまでして人間社会に店を広げたいのか。
鉱山で金は儲けているんだろうし、赤字でも問題無いのだろう。
まあ好きにやらせるか。
その日、街や近隣を観光した後、翌日の朝にはエルドラの街を目指した。
オーク支配地域に入った時の野営時間に、インテリオークが地元のオークの族長を呼びつけ、何やら指示を出していた。
ウェイドの街で出店する為の指示らしいが、俺には関係ない事だ。
そして無事にエルドラの街に着き、依頼を探しにギルドに行くと、そこには勇者パーティーがいた。
俺を見つけたヒマリが真っ先に俺に駆け寄る。
「ごめーんライ。伝言見たんだけどね。依頼でずっと忙しくてね、全然ここに戻って来れないのよ~。もうバンパイヤがらみの依頼なんて受けるんじゃなかったー」
聞き捨てならない言葉があったんだが。
「バンパイヤが現れたのか?」
そこへ残る三人もこちらに来て会話に入って来た。
そしてハルトが口を開く。
「やあライ、ヒマリの言う通りだよ。バンパイヤが出没したって話があってさ、引き受けたんだけど、三人の内二人は倒せたんだけどな、残る一人が強いのなんのって。さっき退却して来たんだよ。それで今から装備を整えて、もう一度向かうところなんだ」
すまん、多分そのバンパイヤ、俺を探しに来たんだと思う。
前回、凄い強敵倒したからな。
恐らくそれ以上の強敵が俺を倒しに来てるんだと思う。
是非とも勇者パーティーの全力で倒してほしいぞ。
「ハルト達を苦戦させるなんて、相当上位クラスなんだろうな」
俺がそう言うとリンが答える。
「私達より先にね、バンパイヤ・ハンターのチームが向かったんだけどね、全滅なのよ。それで私達が呼ばれた訳。もうやんなっちゃうよねえ」
バンパイヤ・ハンターのチームが全滅って……
俺はハルトの両肩に手を当て言った。
「ハルト、それはもう君らしか対抗できる者はいないな。頼むからそいつをブチ殺してくれっ」
「お、おう。任せてくれよ。だけどライ、いつになく力入ってるな……」
そのバンパイヤ、俺へのヒットマンだからな。
「俺もバンパイヤには苦労させられたからな」
そんな話をして勇者パーティーは出掛けて行った。
俺がそれを見送り、ギルドの依頼掲示板で仕事を物色していた時、外にいたダイから念話が送られてきた。
『緊急とかで、オークの伝令が来ているぞ』
何だろうかと外に出ると、オークの伝令が直ぐに近付いて耳打ちする。
「ウェイドの街、リザードマン、攻められている」
緊急の連絡とか言うから何事かと思えば、ダース男爵領の湖の小競り合いかよ。
「そんな小競り合いは、俺達がいた時も有っただろうが。今更いちいち報告しなくても良いよ」
俺はそう返答したのだが、どうやらそんな生やさしい事態とは違うようだった。
「ダース男爵領、陥落寸前」
伝令オークその言葉に、俺は返答できなくなる。
そこへオークの獣車が猛スピードで来て、中からインテリオークが飛び出して来た。
「ライ様、ダース男爵領のウェイドの街が落ちそうです。あの街には建設中の我々の店があり、我々が雇った獣人達もいます。魔物オウドール混成軍団の店なのです。リザードマン如きに舐められる訳にはいきません。直ぐに出兵の準備を!」
一気にまくしたてられた。
いやいやいや、勝手に話を大事にしてねえか。
たかが建設中の店一軒だろ。
まあ、蹴散らしに行くのは良いがな。
「分かった。俺達は直ぐに出発する。お前達も準備をして後から来い」
「ははっ」
そう言ってインテリオークはいなくなる。
そうした中、ギルド内も騒がしくなってきていた。
冒険者ギルドにも、ダース男爵領がリザードマンに侵攻を受けていると、たった今連絡が入ったようだ。
大騒ぎになっている。
ギルド員が対応に忙しそうだ。
この様子だと暫くして偵察依頼が出るだろう。
もしかしたらだが、レンドン子爵が周辺の領主と話し合って、連合軍として兵を出すかもしれないな。
だがそれには時間がかかり過ぎる。
現状で陥落寸前ならば、どの道到着する頃には街は陥落している。
俺達がオーク支配地域の近道をしても五日掛かる。
それでも街の陥落には間に合わないかもしれない。
取り敢えず急ぐか。
「馬車に乗り込め、出発するぞ!」
俺の声に獣魔達が、勇んで馬車に乗り込んで行く。
「よっしゃ、久しぶりに暴れてやるぞ」
「雑魚など蹴散らしてやるのですわ」
『ああ、面倒臭い……』
俺達は再びダース男爵領の、ウェイドの街を目指すのだった。
149話を飛ばして150話を先に投稿してたようです。
取り急ぎ投稿しました。