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149/204

149 出店候補地へ行った

149話が抜けてました!










 翌朝になって目が覚めて分かったのだが、ここの朝はかなり気温が下がるようだ。

 部屋の中だというのに吐く息が白い。

 狼であるライカンスロープの俺には、これくらいの寒さじゃ何ともないがな。

 とは言いつつ、暖炉にまきを足す。

 窓の外を見ると、山間が徐々に朝日で明るくなってきたところだ。

 その頃になると湖には船が幾つも浮かび始める。

 ザリガニ漁を始める時間らしい。


 しばらくして部屋に朝食が運ばれて来た。

 ザリガニ料理を期待したが、朝食にはそれがなかった。

 う~む残念。

 それならと、サッサと食事を済まして部屋を出た。

 あ~、早いとこ帰りたい。

 俺の仕事は男爵に挨拶することで、それさえ終わればここに用はない。

 後はインテリオークに任せて帰ろうと思っていたのだが、そう簡単な話ではなかった。

 最終的な契約のサインは俺でないと駄目と言われたのだ。

 理由は簡単で、ダース男爵領ではオーク族の地位はまだ確立していないからだった。

 つまりオーク族は信用されていない。

 この依頼、断わるべきだったと後悔した。


 俺は渋々ながら出店候補地へと行くことにした。

 街の住民はオークに慣れていないから怖がると言う事で、オークはインテリオークだけを連れて行く。

 そのインテリオークはマヌと部下の兵士が乗る馬車に乗り込んだ。

 街中を走りながら建物や人の動きの説明を聞くためだ。

 俺は獣魔達と一緒に男爵所有の別の馬車に乗り屋敷を出た。


 ラミとハピも街が気になって馬車の窓から顔を出すのだが、上半身は人間だから街の人々は驚かない。

 ダイも気になるらしく、顔を出して鼻をクンクンさせている。


 小さな街らしく商店の数は少ないようだ。

 大きな店もなく、どの店もこじんまりとしたものばかり。

 しかし冒険者ギルドを見つけた時にはちょっと驚いた。

 小さな建物だが、こんな地方の小さな街にもあるんだな。


 陽が昇り始めると人々も動き出し、街が活気付き始めた。

 気温もグングンと上がり、過ごしやすくなる。

 

 一通り街中を見て回った所で馬車止まる。

 出店候補地に到着したらしい。


 マヌがここだと指差す場所には、誰も居ない空き家があった。

 防壁の近くの不人気な場所っぽい。

 直ぐにインテリオークと共に空き家を調べるのだが、広さ的には問題ない。

 それにこの空き家は元が飲食店だったようで広い厨房もしっかりあるし、テーブルやイスもまだ残っているから、大して改築する必要もなさそうだ。

 初期費用が安く済むし、出店までの準備も早いとインテリオークは言う。

 ただ問題はひとつ。

 街の門から遠く、街の中心地からも外れている。

 これは俺みたいな素人でも分かる。

 この立地じゃ客が来ないだろう。


 インテリオークも同じ意見で、住んでいる人の数が少ないし、この街を訪れる人も少ないから客が集まらず、売上は期待できないだろう。

 早い話が儲からない。


 それならこの出店依頼は却下だなと思ったのだが、インテリオークは必死に儲かる方法を考えている。

 どうしても人間社会にオーク勢力を広めたいらしく、それにはオーク族の影響のある店を出店させるのが合法的で良いという。

 まさか人間社会を合法的に乗っ取ろうとしてる訳じゃないよな?


 そんな時だった。

 街中にカンカンと鐘の音が鳴り響いた。


 途端にマヌとその部下達が慌て始めた。

 どうしたのかと聞くと「敵との戦闘が起こった」と言う。


「敵って誰の事だ?」


 マヌにそう聞くと。


「クレイ湖の対岸にむリザードマンです」


「リザードマンがか?」


 俺にしたら雑魚なんだがな。

 話を聞くと、昔からクレイ湖を挟んで男爵陣営とリザードマン陣営との漁場争いが絶えないらしい。

 ここ数十年間は全面戦争にはなっていないが、小競り合いは続いているという。


 ちょっと面白そうだな。


「マヌ、ちょっとだけクレイ湖を見に行っても良いか」


「しかし今は戦闘中で危険と思いますが……」


「安心しろ。遠くから見てるだけだ。クレイガニの漁場も見たいしな」


 こうして俺達は戦闘中の湖へと向かった。



 

 クレイ湖畔に到着すると、戦闘はまだ続いていた。

 湖の中央辺りで軍の船が戦っている。

 リザードマンからも軍の船が出ていて、お互いに弓や投石で攻撃しているようだ。

 時々だが魔法での攻撃もあるのだが、それは非常に少ない。

 魔法攻撃が出来る者が少ないようだな。


 その光景を見ていたインテリオークが突如、俺に向き直るや小声で話し掛けてきた。


「助けて恩を売っておいた方がよろしいかと」


 そう言って不敵な笑みを浮かべて眼鏡をクイッと上げた。


 確かにそうだな。

 俺はマヌに告げる。


「ちょっとあのリザードマン共を静かにさせる」


 マヌは「は?」とした表情を見せる。

 俺は返答を待たずにハピに命令した。


「ハピ、蹴散らせ」


「待っていましたですわ!」


 そう言って空中に飛び上がるハピ。


 クレイ湖の中央辺りまで飛んで行ったハピは、空中でホバリングしながらマジックミサイルの弓を取り出す。

 そして戦闘中の者達に向かって叫んだ。


「ライ様が訪問した街に戦闘を仕掛けるとは、不届きにもほどがありますわ。その結果がどうなるか思い知らせてやるのですわ!」


 そう告げると、リザードマンの船に向かって魔法の弓を連射し始めた。

 慌ててリザードマン達も空中のハピに応戦するが、リザードマンの攻撃はハピまで届かず、逆にハピの矢は届く。

 それにハピの魔法の弓は無限に矢を射れる。

 正に一方的な攻撃となった。


 突然のハピの登場に、男爵の兵士達も戸惑っている。

 しかしリザードマンが一方的に倒されていく姿を見るや、兵士達の間で徐々に歓声が起こり出す。


 それを見ているラミが落ち着かない。

 一応ラミは蛇のように水上を泳げるのだが、残念なことに水上での戦闘は苦手らしい。

 この距離だと毒球も届かないしな。


 兵士の歓声に気を良くしたハピが、遂には魔法を発動させた。


「わたくしの必殺魔法を受けてみるのですわ。トルネード!」


 湖の中央付近で竜巻が起こる。


 竜巻は一気に大きくなると周囲の小舟を転覆させていった。

 数人のリザードマンが竜巻に巻き込まれて、空中へと舞い上がる。

 でもよく考えると地上と違い、石や砂がないから竜巻に巻き込まれてもあまり被害が無い。

 それに竜巻から落下しても、下が水だとダメージが少ない。

 それに一番の問題は、竜巻が男爵兵士を巻き込み始めたことだ。

 


「あわわ、マズいですわ。食事抜きになってしまいますわ!」


 ハピが空中で狼狽うろたえている。

 しかし発動した竜巻は込めた魔力が切れるまで止まらない。

 幸いな事に竜巻は、逃げるリザードマンへと向かって行った。

 そして暫く暴れた後、竜巻は消えたのだった。


 ひとまずこれで大丈夫かと思ったのだが、何を思ったかハピが逃げるリザードマンを追いかけて行く。


「わたくしから逃げられると思ったのですか!」


 ハピめ、味方兵士を竜巻で巻き込んだ失敗を挽回ばんかいしようとしてやがるな。


 そしてハピは湖の対岸へと竜巻を放った。














失礼しました!


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