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146 オーガ連合が来た










 う〜む、仕方ない。

 俺は空席であるお誕生日席、つまり上座に座った。

 腰を下ろしたところで周囲を見回す。


 誰がどう見ても俺がこの集まりの首領にしか見えねえ!


 ため息しか出ない。

 そこで俺の膝の上にダイがちょこんと座り、両側にラミとハピが睨みを利かせながら立つ。

 いつもの態勢だな。


 そんな俺の正面の席にはギルド長が座っている。

 レンドン子爵の部下は、部屋の四隅に立つようだ。


 場が落ち着いたところでギルド長が口を開く。


「ライ、これはどういう事じゃね」


 ギルド長はいつになく真剣な表情だ。


「ギルド長、これを見てくれるか」


 俺はそう言ってレンドン子爵の書状を取り出し、ギルド長に向かってテーブルの上をすべらせる。


 書状を上手くキャッチしたギルド長が、それを広げて読み始めると、それに合わせるようにインテリオークの説明が始まった。


 説明を聞くギルド長の表情の変化が物凄い。

 書状を見て俺を見てこめかみをヒクつかせる。

 オウドールを見て俺を見て、いぶかしげな顔をする。

 そしてツバッサー連合を見て俺を見て、顔の筋肉をヒクヒクさせる。


 ここから逃げたい!


 くっそ〜、早く終わらねえかな。


 どのくらい経ったのだろうか。

 俺は睡魔との戦いでウトウトしていたらしい。


「ライ殿、全て終わりました」


 インテリオークの声で我に返った。


「お、おお、終わったか」


 俺は立ち上がり会議室を出ると、魔族達も俺に続いて部屋を出た。


 後は飯食って帰るかとギルドを出ようとすると、ホールでギルド員に声を掛けられる。


「ライさん、これをお願いします……」


 そう言ってギルド員が俺に何かを渡してきた。


「首輪? これをどうしろ――――」


 そこまで言いかけて気が付いた。

 首輪に獣魔用の札が付いている。

 つまりオウドール用の獣魔の首輪ってことだ。

 相手がオークキングだから気を利かしたのかか、大型魔物用の首輪が最初から付いている。

 通常は獣魔の札しか貰えず、首輪は自己負担だ。


「――――まさか、オウドールにこの首輪を着けろと?」


 俺がつぶやくと、ギルド員が恐る恐るうなずいた。


 う~ん、ルールだから仕方ないが、オウドールが嫌がりそうだよな。


 俺はその首輪を受け取り、オウドールに声を掛ける。


「オウドール、ちょっと来てくれるか」


 オウドールが直ぐに俺の元へ来て「何用だ」と聞いてきたので答える。


「冒険者ギルドがな、この首輪を貴様に着けろと言ってきた。嫌ならレンドン子爵に話してみるが……」


 そこで突然片膝を突くオウドール。


「そうか、そうか、それは喜んで受けよう。ライ殿がまさか俺に獣魔の証をさずけてくれるとは!」


 えっ、いいの?

 っていうか、喜んでいやがる?


 オウドールは片膝のまま俺から首輪を受け取ると、それを自ら首にはめた。

 

 ギルドのホールにいた冒険者達からどよめきが起こり、ざわつき始めた。

 

「オークキングを獣魔だと、信じられねえ!」

「あの鳥系の魔物らも手下みたいだぞ」

「遂に本物の魔王軍になったな……」


 聞きたくない言葉が、あちこちから聞こえてくる。

 さらに。


「これは本格的な魔王軍だよな」

「リアル魔王軍!」

「こっえ〜、魔王軍」



 ちが〜〜〜うっ!



 俺は「撤収〜!」と叫んで、そそくさと冒険者ギルドを後にしようとしてふと思い出す。

 勇者パーティーにいるヒマリとの約束だ。

 戻って来たら連絡しろと言われていたな。

 思い出して良かった。

 忘れたら後で何を言われるか……怖っ


 そこでギルド員にヒマリ宛の伝言を頼み、逃げるようにギルドを出た。

 

 街の外壁門まで来ると、まだ門の外で沢山のオーク兵やらが野営していた。

 レンドン子爵の部下はここまでみたいで、街の門で見送るみたいだ。


 俺はここでオウドールに、全ての兵士を連れて帰るように指示を出した。

 撤収作業中もレンドン子爵の部下は帰らず、オーク兵の作業をジッと見ている。

 撤収作業を終えて隊列が動き出そうとしたところで、隊列の先頭からオーク兵が俺の所へ走って来た。

 何事だろうか。

 

 オーク兵が俺の馬車の前で止まる。


「前方、魔人族一団、来る!」


 ここへ来て魔人族かよ。

 嫌な予感しかしない。


 俺が馬車から降りてしばらく待つと、見覚えのある連中が牛車で近付いて来た。

 ピロリとかいう、緑色の肌をした女魔人族の牛車だ。

 だが、それだけではなかった。

 その後ろから人型の魔物が、何人か付いて来ているのだ。

 

 身長は人間一人半ほどの巨体。

 オーガ族だ。


 肌の色が赤味がかっているところを見ると、野良ではなく荒れ大陸に棲むオーガ族だな。

 そのオーガが十人ほどいる。

 その中には明らかに、身なりの良い格好したオーガもいる。


 俺の前で牛車が止まり、中からピロリが出て来るや俺の前で片膝を突く。

 一緒に付いて来た魔人族やオーガ達もそれに習い、片膝を突いてこうべを垂れた。


「ライ殿、大変遅くなりました。本日はお約束していた我が魔人族の忠誠心を証明するために参りました」


 忠誠心の証明?

 そんなもの見せられるものなのか。

 ちょっと気になる。


「面白い、その証明とやらを見せてみろ」


 そう俺が言うと、ピロリが部下の魔人の一人に合図する。

 するとその魔人は、オーガの一人を俺の前に連れて来て平伏させた。

 そいつは身なりの良かったオーガだ。


 そしてピロリが「ライ殿に挨拶だ」と一言。

 するとそのオーガが平伏したまましゃべり出す。


「わ、わしは荒れ大陸のオーガ連合代表のテロと言います。ライ様の配下に加わりたく、ここへ参りました……」


 まさかのオーガ連合。

 荒れ大陸のオーガ族をまとめ上げている集団、それがオーガ連合だ。


 しかし明らかにこのオーガ、言わされているよな。

 俺はピロリをにらみつけて言った。


「ピロリ、どういう事かちゃんと説明しろ」


「はっ、魔人族の忠誠心を証明するために、荒れ大陸でも強大な勢力を持つ、オーガ連合を我々魔人族の力でライ様の配下にしてきました!」


 それと俺への忠誠心が、どうつながるのか理解できないんだが。

 しかしオーガ連合を配下にするとか、恐ろしいほど魔人族は強いってことだ。

 待てよ、オーガ連合を配下にしたってことは、ツバッサー連合やオークの支配地域を考えると、荒れ大陸の半分以上が俺の配下ってことじゃねえか!


 そこで俺は思い出したように後ろを振り返る。

 

 そう、俺はすっかり忘れていたのだ。

 後ろに部外者がいることを――――



 そこにはレンドン子爵の部下の兵士達が、青ざめた表情でこちらを見ていた。












再び不定期投稿となります。


<(_ _)>





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