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143 自宅が変貌した






 護衛のオーク兵にこの店について聞いたのだが、全然知らないようだ。

 ずっと俺達にくっついて来ているから、知らないのは当然か。


 取り敢えず俺達はその“究極武具屋”へと入ってみることにした。

 外見はきらびやかな外装。

 とても武具屋には見えない。


 店内に入って分かったのだが、一階で武器を扱い、二階では防具を扱っている様だ。

 三階は事務所や倉庫らしい。


 一階の武器屋を見て回ると、店員が全員若い獣人女だった。

 品物を見ると、どれも安い値段で売られている気がする。

 隣りの老舗しにせ武器屋に対抗しているのだろう。

 かといって品質が悪いことはない。

 特徴としては仕上がりが荒いが、作りが頑丈な武器。

 まるでオーク製品の様な……


「インテリオークの差し金か!」


 思わず口に出してしまった。


 まさかエルドラの街を徐々に、侵食する計画とかじゃないだろうな。

 インテリオークならやりかねない。


 しかし良く見れば、安くて良い製品も沢山ある。

 これなら納得も出来るか。


「ラミ、好きな武器を選んで良いぞ」


 するとちょっと驚きの顔をするラミ。


「本当に良いのか?」


 俺がうやずくと、ラミは必死に探し始めた。

 さすが戦闘部族だな。


 逆にハピとダイは暇そうだ。

 ハーピー種は元々手が無い種族だから、武器を使って戦う習慣など無い。

 狼のダイにしろ同じだ。

 あくびをしている。


 しばらくすると、ラミが高そうな剣と大きな円盾を持ってきた。


「これ買ってくれ!」


 お気に入りを見つけた様だな。

 そこで俺は値段を見て腰が抜けそうになった。


「ふたつ合わせて金貨二十九枚……」


 良く見れば二つ共に、魔法石がはめられていた。

 魔道具かよ!  


「えっと、ラミ。魔法石がはめられているみたいだよな………」


 すると全く遠慮なく返答するラミ。


「ああ、強度増しの魔法だよ。普通よりも頑丈らしいぜ。敵をぶっ叩いて剣が折れる、な〜んて事はもうないぜ」


 好きなの選べとか言うんじゃなかったな。

 仕方ない、金はあるからな。

 

 覚悟を決めてカウンターへそれらを持って行くと、店員の獣人女性の様子が変だ。


 獣魔達を見て、次に俺を見る。


「うわっ、ちょ、ちょっとお待ち下さい!」


 慌てて三階への階段を駆け上がって行く。


 客を放ったらかして、何処かへ行ってしまうとはな。

 しかし直ぐに別の店員が、階段を駆け降りてきた。


「お待たせしました、ライ殿!」


 それは人間の高級商人の様な格好をしたオークだった。

 ということは、やはりここも……


「ここもオーク経営の店なんだな?」


「はい、そうです。ちゃんと領主様の許可は頂いております」


 鉱山で儲けさせてもらってるレンドン子爵も、オークが店を出すってくらいで嫌とは言えないだろうからな。


「ああ、それなら良い。それでこれを買いたい」


 俺がカウンターの上に置いた武器をあごで指す。


「はい、どうぞお持ち帰り下さい。ライ殿から金は取るなと言われていますので」


 マジですか?


「えっと、じゃあさ、これ以外も良いかな、俺の槍とか……」


「構いませんよ、とうぞお選び下さい」


 俺は即座にカウンターの後ろに飾ってある槍を指差した。


「あの槍をくれ!」


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・ 


 俺達は店を出る。

 ラミと俺の二人だけはニコニコだ。

 すると何故か店員が全員で、俺達のお見送りしていた。

 おかげで道行く人々の注目を浴びてる。

 やけに丁寧な接客の店なんだな。


 冒険者ギルドに立ち寄った後、適当に食い物を買って、久しぶりの自宅を目指す。


 エルドラの街を出ると、いつものように馬車が待っていた。

 暗色を基本にしたドクロなデザインのあれだ。


 何の躊躇ちゅうちょもせずにその馬車に乗り込んだ自分に、あとになって誰かの術中にはまってやしないかと考える。

 直ぐに頭に浮かぶのは“インテリオーク”の不敵な薄笑い。


 俺は身震いした。

 





 もうすぐ自宅という所で馬車が止まった。

 窓から外を見ると、変な物が出来ていた。


 敷地内へ入る所にゲートが出来ていて、検問所みたいになっていやがる。

 守っているのは、もちろんオーク兵だ。


 ゲートが開くと再び馬車は走り出す。


 すると守備隊のオーク兵が俺達に向かって、次々に見慣れない格好をしていく。

 馬車の両側に掴まる護衛オーク兵に尋ねると、あれは新しく決まった敬礼だという。

 心臓の前に右手のこぶしを当てるのだという。

 武器を持っていても出来る敬礼だそうだ。

 

 馬車が止まり扉が開けられた。

 そこで馬車から降りてビックリ。


 自宅が変貌へんぼうしていた。


 石造りの高い望楼ぼうろうが建てられ、建物も全て石造り。

 弓矢用の狭間はざままで作られている。


 なんか要塞化が進んでいる気がする。


 城の中……家の中へ入ると、部屋が増えているし、上に登る階段があるし。

 新しく厨房も作ったという。


 これは鉱山が調子良く、金回りが良いからだろうな。


 変なデザインじゃないし、部屋は増えてるから、文句は言わないでおいた。

 

 買ってきた食べ物を食おうとしたら、メイドの格好した獣人が現れた。


「お食事のご用意が出来ました」


 まさかと思い付いて行くと、食堂に案内された。


 大きなテーブルに沢山の料理が並んでいた。


「こりぁ凄いな〜」


 早速皆で食べ始めた。

 テーブルマナーは関係ない。


 味はまあまあだな。

 

 オークっぽくない料理ばかりってことは、調理したのは……まさか獣人か?


 正解だった。


 厨房へ行くと何人ものコック姿の獣人が、せっせと働いていた。

 オーク兵の食事も作っているらしい。

 獣人を使うとか良く考えたな。

 獣人は人間からは差別された存在で、中々まともな仕事には付けない。

 優秀な人間は中々引き抜けないが、獣人は全く別だ。


 インテリオークの仕業だろうな。


 恐ろしや、インテリオーク!





 


引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。


書き溜めに入ります。

しばらくお待ち下さい。







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[良い点] インテリオークのレギュラーメンバー入りを切望! 名前も付けてあげてぇぇぇ
[一言] 名前すら分からない魔王軍()の参謀有能すぎる
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