141 魔人族が勢揃いした
魔人女はツカツカと俺の前に来ると、突然平伏した。
「魔王様とは知らず、大変失礼な態度をとりました!」
付き添いの魔人達も平伏している。
その後ろにはインテリオークが後ろに手を組んで立っていた。
インテリオークが連れて来たようだな。
俺と目が合うと薄っすらと笑顔を見せ、メガネをクイッと上げる。
何か腹立つんだけど。
しかしこの魔人共、俺を魔王と勘違いしている様だな。
「ちょっと待て、勘違いするな。俺はまお――――」
だが魔人女は興奮しているようで、俺の話を聞こうともしない。
「我が同胞の魔人が敵対したばかりでなく、魔王様とは知らず魔眼まで使い……謝っても許されるとは思っていませんが、私に出来る事と言えば、この身体、自由にしてくださいまし!」
う〜ん、確かに魔眼を俺に使ってきたんだよな。
でも自由にしろと言われてもなあ。
俺は魔人女をジロジロと見回す。
着てる服の布が少ないんだよな。
そして。
「いらん」
魔人女はガーンといった顔をして、その場に崩れ落ちた。
するとお付の者達が慌てて「ピロリ様!」とか言って寄り添う。
この魔人女はピロリって名前らしい。
そのピロリという女に代わって、今度は魔人男達が俺に懇願を始めた。
「どうか、どうかお慈悲を!」
「我々魔人族をお許し下さい!」
「お許しを〜」
「滅ぼさないで下さい〜」
もしかして、俺を怒らせたから滅ぼされると思っているのか?
あんな強い魔人を抱えていて、魔眼持ちまでいる種族がか?
逆にこっちが滅ぼされかねないぞ。
どんだけ俺達が強いと勘違いしてんだか。
そこで後ろでずっと黙っていたインテリオークが、メガネをクイッと上げるや口を開く。
「ピロリさん、その魔眼をライ殿に説明くらいしても良くないですか?」
するとハッとした様子でピロリ。
「そうでした。私の魔眼は魅了と精神破壊です。入り用でしたらいつでもご用命下さい」
マジか!
そりゃ恐い。
そこで再びインテリオークがメガネをクイッ。
「どうですライ殿、魔人族は有用とは思いませんか?」
言い終わるや、もう一度メガネをクイッ。
確かにそうだな。
これだけ個人力が高い相手だ、敵に回したくはないよな。
「分かった。今までの事、全部許してやっても良い―――」
俺の言葉に魔人達全員が顔を上げた。
俺は更に話を続ける。
「―――良いのだが、条件がある」
魔人達は固唾を飲んで俺の発言を見守る。
やはり同盟を組むのが良いだろうな。
そして俺が条件を言おうとしたところで、またしてもインテリオークが出てきた。
もちろんメガネをクイッだ。
「ライ殿、そういった内容はしっかり文書に残さないといけません。後は私めにお任せ下さい」
何だか今日のインテリオークは乗りに乗っているな。
「おお、そうだな。それじゃ後は頼むぞ」
そういった細かい文書作業、俺は苦手だから助かるよ。
俺がやったら折角の同盟が無効とか、大変なことになるからな。
中々使える様になったな、インテリオークめ。
俺は全てをインテリオークに丸投げしてしまった。
それが間違いだったと気付くのは、さらに後になってからだった。
しばらくして、そろそろ俺達もエルドラの街へ戻ろうかと準備していた時だ。
ピロリに加えて、初めて見る魔人達が俺の前にやって来た。
ピロリ以外に緑色の肌の魔人、赤い肌の魔人、青い肌の魔人がそこにいた。
そして俺の姿を見るなり走り寄って来た。
そしていきなり平伏……
「私ピロリ、約束通り長三人を連れて参りました!」
えっと、どゆこと?
赤い肌の魔人が話し出す。
「赤魔人族の長をしています、レドルと言いますじゃ」
続いて青い肌の魔人。
「青魔人族の長してまっさ、ブルルと言うさね」
そして緑色の肌の魔人。
「緑魔人族の長のグリルと言うんよ」
わざわざ自己紹介の為にここまで来たのか?
同盟を組むだけで、わざわざトップ全員が出張って来たってことか。
律義な種族なんだな。
「ああ、自己紹介は分かった。で、それだけの為にここまで?」
そう俺が聞くとピロリ。
「いえいえ、魔王軍に我々魔人族の忠誠心を見せろとの事で、まずはこうして代表達が魔―――ライ様にご挨拶に参りました」
今、魔王って言い掛けなかったか?
そもそも忠誠心を見せるって何の事だよ。
「忠誠心とは何だ?」
「はい。その答え、必ずやお見せ致しますので、しばしの間お待ち下さい」
何だがピロリがやけに張り切っている様に見えるんだが。
同盟だから忠誠心とか関係無い気がするのだがな。
忠誠心より信頼じゃないのか。
「女、ピロリと言ったな。魔人族の信頼に期待する」
俺の言葉に魔人族達が「はは〜」とか言ってる。
腰が低い種族の様だな、強いのに。
そして俺達はエルドラの街へと向かった。
もちろん暗色を基調とした配色の、乗り心地は最高のあの馬車でだ。
今回は戦利品が多いからな。
特にダンジョン産のドロップアイテムが幾つかある。
ロウソクに柄杓に短剣に指輪。
それに獣になるワンドとか、まだ持っていたよな。
これは相当な金額になるだろう。
ワイバーンモモ肉が食い放題だ!
ドーズの街に寄りつつ、何とかエルドラの街へと戻って来た。
そのまま街に一軒しか無い魔道具屋に直行。
魔道具の鑑定するなら、魔道具屋が安いし高く買取るとハルトに聞いたからだ。
獣魔達と一緒に店に入って行くと、前と同じ様に奇妙なお面を被ってフード付きローブを着た店員が、夢中で水晶を弄っていた。
そこで店員に鑑定を依頼した。
鑑定の魔道具があるらしく、その場で直ぐに鑑定出来るという。
これは楽しみだ!
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