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140 インテリオークに丸投げした








 牛車に一緒に乗れと魔人女に言われたが、断固拒否してやった。

 魔人に囲まれての移動なんて危なっかしい。

 それにまずは吊り橋の仲間のところに行かないとな。


 テクテクと俺の歩く速さに合わせて、牛車がついて来る。

 といっても牛車の速度など、たかが知れている。

 歩く速さと変わらない。

 しかしよく見るとこの牛、魔物だった。

 牛のくせに牙があるのだ。

 その証拠に道端に生えた植物系魔物があると、突然食らいついてモシャモシャと咀嚼そしゃくしている。


 吊り橋まで来ると、常駐していたオーク兵が警戒して牛車を取り囲む。


「ライ殿!」


 そりゃ警戒するよな。

 緑色の肌の魔人だからな。


「安心しろ、魔人族の使者だそうだ。取り敢えず野営地まで連れて行く」


 オーク兵に見守られる中、牛車と俺は進んで行くと、今度は回復したラミとハピが行手をはばむ。


「ライさん、そいつらは何だ。なんで魔人と一緒にいるんだよ」

「そうですわ。散々な目に遭ったばかりですのよ」


 すると牛車が止まり、窓から魔人の女が顔を出す。


「それは、どういうことでしょうか」


 そうか、俺達が魔人と戦った事を知らないのか。


 俺は女に向かって簡単に説明する。


「お前らと同じ緑色の肌の魔人の攻撃を受けたんだよ。魔王の座を奪うとか言ってな」


 すると女が驚きの表情を見せながら言った。


「そ、それで、その魔人はどうなったのですか」


「何度も返り討ちにしてやったよ。だけど何度でもまた返り咲いて来て、さすがに困ってたんだ。お前らの仲間なんだろ」


「その魔人は全ての攻撃を跳ね返しませんでしたか」


「ああ、その通りだな」


「それでその魔人は今どこに?」


 俺は親指で指差した。


「地獄のクソ溜めだ」


「そ、それは本当に申し訳ありません。確かにその魔人は私達の種族の者です。それに関しては魔王様と話し合いで決めますので、今の所はご勘弁願います」


 その辺もインテリオークに丸投げだな。


「そういうことだからラミ、ハピ、手を出すな」

 

「良く分からねえが、分かった」

「分かりましたですわ」


 まずはグースの街のオーク野営地に連れて行かないと。






 グースの街とオーク野営地が見えてくると、魔人の女が突如牛車から顔を出してきた。


「グースタウンはオーク族が管理しているのですか?」


「ん〜、一応だがダック族のグースが管理しているかな」


 名ばかりの管理者だけど。


「そうですか……」


 オーク野営地に到着すると、オーク兵が牛車を取り囲む。

 そこで俺達に付いて来た護衛オーク兵が、魔人族の説明を始めた。

 その後ろから俺は声を掛けた。


「後は任せる。この魔人族達をインテリオークの所に連れて行け」

 

 これで良し。


 俺はさっさと立ち去ろうとすると、こっちに近づいて来る者達いる。


「ライ、その魔人族は何だ!」


 ハルト達だ。

 腰を低くし、剣の柄に手を添えている。

 ヒマリ、リンも身構えている。

 リルとアオだけは棒立ちだが。


 そこで魔人の護衛兵が何故か反応して、一斉に武器を構えた。


 俺は慌てて彼女らが魔人族の使者だと説明する。

 それでハルト達は収まったのだが、魔人の女が激しい口調で俺に聞いてきた。


「何で人間の勇者がここにいるのです!」


 ハルトを横目で見ると、勇者の称号がモロ見えだった。

 この女、あの称号の意味を知ってたのかよ。

 説明に困るなあ。


 俺は女の耳元でささやいた。


「大丈夫だ。勇者達は洗脳して、我々の邪魔者を消してもらっている。だが変に刺激を与えるな。洗脳が解ける」


「ん〜、今代の魔王様は凄いのですね」


 感心しているってことは、上手く騙せたってことだな。


 そこで俺はやっと女魔人と別れることが出来た。

 魔人達はオーク兵の案内でインテリオークの所へと向かった。


 魔人がいなくなるとハルトが話し掛けてきた。

 

「ライ、この間ギルドに進捗状況の連絡を入れただろ」


「ああ、ハルトが連絡してくれたんだろ」


「そう、それだよ。そうしたらな、オーク兵がダンジョンを管理しているってことに問題が出たみたいなんだよ」


「どういうことだ」


「それがな、オーク兵はレンドン子爵の取引相手だろ。だから勝手に人間が手を出せば、オーク族との仲に亀裂が入るってことだよ」

 

 ああ、そういうことか。

 それなら大丈夫。

 俺がオーク兵に言っておけば、人間でも入ることが出来る。


「なんだ、そんなことなら問題ない。ダンジョン前にいるオーク族に許可を貰えば良いだけだろ。黙って入らなければ良いだけの話だよ」


 しかしハルトは首を横に振る。


「そうはいかないだろ。冒険者なんて荒くれ者が多いだろ。オーク兵を蹴散らしてダンジョンへ入ろうとする奴もいるぞ。エルドラの街中とは違うから、そこらでオーク兵を見たら攻撃してくる馬鹿もいるからな」


 確かにそうだな。

 この間のゾエとかいうオリハルコン級の女冒険者もそうだったからな。


「そうか……それでギルドは何て言ってきたんだ?」


「魔王城ダンジョンにギルドの派遣員を置きたいって言ってきたんだよ。だからその話をオーク族との仲介役のライにってさ」


 マジか。

 気兼ねなく潜れるダンジョンだったのに。

 でも仕方ないか。

 トラブルは避けたいしな。


「分かった。族長のオウドールに伝えておくよ」


 これもインテリオークに全振りだな。 

 何だかんだ言ってもインテリオークは使える奴だな。


 それで終わりかと思えば、ハルトが「まだ話があるんだよ」と言って話を続けた。


「実はギルドから俺達に召集が掛かったんだよ」


「指名依頼か?」


「そうなんだよ。こっちの依頼はほぼ済んでいるからね。別の指名依頼が入ってね。直ぐにでもここを発たないといけないんだよ」


「何だ、そんなことなら俺達に遠慮しないで構わない。気兼ねなく行ってくれ」


「そう言ってくれると助かるよ」


 その半刻後にはハルト達勇者パーティーは去って行った。

 アオも一緒に戻るらしい。

 ダンジョン調査の依頼はほぼ終わってるからな。


「ライ、エルドラの街に戻ったら連絡頂戴ね。絶対だよ。必ずだからね!」


 と、ヒマリから何度も念を押された。

 

 こうしてダンジョン周辺には人間がいなくなった。


「よっし、これで気兼ねなく変身してダンジョンに潜れるぞ!」


 そう思って準備をしていると、凄い勢いで先ほどの魔人女とその付き添いの者達が俺の前に現れた。


















引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 勇者パーティーを洗脳wwww どうみても魔王様扱いされるわ
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