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134 扉を見つけた









 今日は珍しく、俺とダイだけでダンジョン探索だ。


 ラミとハピは、荒野で植物系魔物の素材採集係だ。

 「飯抜きは勘弁」ということで、代わりの罰ゲームみたいなものだ。

 荒れ大陸の植物系魔物の素材は、高値で引き取ってもらえるからな。


 俺はダイと二人で、あの暗闇の探索だ。

 今までにかなり広範囲を調べたが、全く先が見えない状況だ。


 入口横の壁を伝って歩いたりもしたが、いつの間にか入り口に戻ってしまう。

 両側の壁を同時に伝って歩いてみたが、驚いたことにすれ違うこと無しに、元の入り口にたどり着いた。


 謎だらけの空間だ。


 相変わらずレイスが出てくるのは変わらない。


 そしてやはり今日も何も見つからない。

 ダイの嗅覚でも何も引っ掛からない。


 今日も駄目かと引き返そうという時だ。


 レイス二体が現れた。


 しかしもう慣れたもので、聖水を使って楽に倒した。

 大錬金術師のルリ・ルールと神官のリンがいるから、時間は掛かるが聖水を安く作って貰える。

 これはかなり助かる。


 さて帰ろうとしたのだが、ダイが何かにつまずいた。


「どうした、ダイ」


『床に何かあるぞ』


 そういえば床も天井も、薄ぼんやりとしか見えない。

 暗いせいかと思ってたが、良く考えると妙だ。


 床にカンテラを近付けてもハッキリ見えない。


 ダイが転び掛けた所を入念に調べる。

 手で触っていくと、そこだけ床に隙間があり、どこかへずっと伸びている。

 しかも隙間には何か液体が入っているらしい。

 地下水かと思ったが、何だが手触りが違う。

 粘り気を感じる。


 まさかと思ってカンテラの火を布に移して、その火を床の隙間に近付けた。


 パッと隙間から炎が立ち上った。

 その炎は床を伝ってどこまでも伸びていく。


「これって、道しるべじゃないのか!」


『この感じだと、そうみたいだな。やったなライ』


 俺は腰をかがめて、ダイとハイタッチした。


「だけど今まで匂いで分からなかったのか?」


 俺の質問にダイは『分かってればこんなに苦労してない』と怒られた。

 確かにそうだ。

 隙間の液体は全くの無臭だそうだ。


 しかし残念ながら、食料の用意があまり無い。

 一旦戻って出直しだ。

 次来た時には見つからない、なんて展開はないだろうな。

 心配だ……


 あきらめて引き返そうとすると、背後に違和感を感じた。

 咄嗟とっさに槍を構えて振り返る。


 目の前に剣が迫っていた。


 たまたまその剣が槍の柄にぶつかる。


「くっ!」


 俺は剣の刃を槍の柄の上を滑らせて横に逸らし、そのまま大きく後ろへと下がる。


 改めて剣の持ち主を見ると、上半身が鎧を着たスケルトンで、下半身がレイスのアンデッドだった。


 つまり空を飛んで移動するアンデッドだ。

 この空間は俺の槍が使えるほど天井は高いから、レイスの様に空中を自由自在に飛び回り、さらにはスケルトンの様に剣を振って物理攻撃をしてくる。

 空飛ぶ魔物は苦手なんだがな。


 ダイなんか速攻で闇に隠れやがった。

 

 再び骨レイスが迫る。


 だが、所詮は骨だ。

 追える早さ。


 俺は槍を大きく振り回す。

 遠心力を乗せたぎ払い攻撃。

 

 直ぐに手応えがあった。


 上半身のスケルトンに槍が命中したのだ。


 その一撃でスケルトンはバラバラに砕け散った。


「大したことない、初撃の不意打ちだけだったな」


 そうつぶやいて背を向けた時だった。

 ダイからの念話。


『まだ終わってないぞ!』


 即座にその意味を理解して、槍を構えて振り返る。

 

 先ほどと同じ状況だ。

 ならば間に合う!


 それが甘かった。


 俺が振り返った時にはすでに、剣が左肩にめり込んでいた。


 即座に剣を払い除ける。


 払い除けた剣だけが空中を飛び交う。


 そうか、実体はこいつだったか。

 くそ、ミスったな。


 肩からあふれる様に血が流れる。


『まだ来るぞ!』


 とダイからの念話が送られてくるが、剣だけの動きは先程までの速度レベルではない。

 目で追うのがやっと。

 来るからといってそう簡単に避けられるものじゃない。

 ましてやこの傷だ。



 このままだと死ぬ。



 この状況でやれること。


 俺は変身した。


 狼の姿の方が、治癒能力が高いからだ。

 それに身体能力も高い。


 だが変身したら実に呆気あっけなかった。

 一噛みで終った。


 剣はパリンッと簡単に砕け散って煙と化した。

 跡に一本の柄杓ひしゃくが残った。


 ドロップ・アイテムだ。


 いつの間にダイが姿を現し、柄杓ひしゃくをくんかくんか嗅いでいる。


 ますば治療しないと。


 人間に戻りポーションを傷口に掛ける。

 これで止血は出来たから、二、三日もあれば治る。


 取り敢えずは柄杓ひしゃくを拾って帰ろうとしたのだが、炎の道筋が気になり始めた。

 帰ろうとした時に、止められる様に骨レイスが現れたからかもしれない。


「なあ、ダイ、ちょっとだけ見に行ってみないか?」


 そう言って炎を見つめる。


 するとダイはあきれたように念話を送ってきた。


『それがどれだけリスクがあるか、分かってるよな?』

 

「ああ、分かってる。だが、ここで帰ったら二度と見つけられないかもしれない」


『分かった、行ってみるか。だけど無茶はしてくれるなよ』


 こうして俺達は炎の道しるべの先を目指した。


 炎の道しるべは、果てしなく暗闇を続くかと思われた。

 実際に俺達にはそう見えていた。


 だが歩き出して間もなく、炎の先に扉があるのが見えてきた。

 炎もその扉で途切れている。


 近くまで行くと、その扉の異常さに気が付く。


 壁なんてない、空間に扉だけがあるのだ。

 後ろに回っても同じ様に扉がある。

 裏表を見比べてみると、引き扉と押し扉で、取っ手の位置も一緒だ。

 つまり繋がった扉の可能性が高い気がする。

 入り口と出口というのも考えられる。


 意を決して引き扉の前に立つ。

 俺は扉に手を掛けてみたが、開くべきか悩んで止まった。


 二階層でスケルタル・ドラゴンだ。

 ここでもそれに匹敵する魔物の可能性もある。

 

 俺は取っ手に手を掛けたまま、ダイを見た。


 すると口の周りをペロリと舐めながらダイ。


『好きにしろ』


 俺は扉を勢い良く開けた。







引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。




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