13 底無し池で裸を見られた
遅くなりました!!
翌日の朝、俺達が冒険者ギルドに着いたのは、まだ夜が明ける前だ。
理由はもちろん、少しでも良い依頼をゲットするためだ。
掲示板には、依頼が入り次第張り出されるのだが、やはり朝早くに張り出される事が多い。
この日も同時にいくつも依頼が張り出された。
すると次々に、冒険者達の手が伸びてきて、依頼の紙が取られていく。
俺も既に二つの依頼を手にしている。
あとひとつ欲しい。
俺達は三人いるから、同時に三つ依頼をこなせるはずだ。
ダイとハピは獣魔登録だから、書類上は俺のソロ活動となる。
ソロで毎日三つの依頼をこなせば、等級の昇格もきっと早いという目論見だ。
そして三つ目の依頼をゲットした所で、冒険者ギルドを出発した。
依頼の一つ目は「紅食いタケの採取」で、これは鼻の利くダイに任せる。
ハピには二つ目の「オウリンの木の枝の採取」を頼んだ。
そして俺は「底無し池の浮草の採取」だ。
全て採取依頼にしたんだが、常時依頼で「ホーンラビットの肉」があるから、各自それは同時進行ということになっている。
ホーンラビットを狩りつつも採取依頼をこなすのだ。
上手くいけば、一日で四つの依頼をこなせる。
ただし、こいつらがホーンラビットを喰っちまわなければの話だが。
集合は俺の場所の底無し池にした。
「ライさん、オウリンの枝とホーンラビット、それとゴブリンもぶっ倒してきますわよ!」
『おおっと、それじゃあ俺もハピに負けられないな、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ、ひゃっ』
二人はやる気満々だ。
ゴブリンの角の回収は、本当に金に困った時の最終手段。
だからそれをやるくらいなら、採集依頼とホーラビットの肉に力を入れてほしい。
だがここで俺は、二人に言わなくちゃいけない事があった。
レッドキャップの山賊リーダーのグイドが逃げたことだ。
あの時のバンパイヤの男女が、手筈して逃がしたんだろう。
恐いのは奴らに俺達の顔を見られたことだ。
天敵のライカンスロープの俺を追って来るだろうな。
しかし今更ジタバタしてもしょうがない。
こっちも顔を見てるからイーブンだ。
という事にしておく。
二人にその事を伝えると、全然気にしていなかった。
ダイなんかは『また賞金首としてグイドを捕まえれば良い』とか言って、逆に金が稼げることを喜んでいた。
そこで俺は忠告をする。
「気にしてないのは良いがな、バラバラで行動するのだから、油断だけはするなよ、いいな」
釘は刺しておいた。
そして、それぞれの目的へと向かって行った。
俺の行く場所は底無し池。
馬車を扱えるのは俺だけだったから、俺が馬車と一緒に行動だ。
変身して狼の姿で移動した方が速いのだが、荷物が増えた場合を考えると、馬車があった方が良い。
だから素直に依頼の浮草の採取だけじゃなく、食べれる肉や毛皮が売れる魔物を捕らえたい。
底無し池に到着してみると、辺りは静まりかえって不気味な雰囲気を醸し出している。
素材が金になる様な魔物が出ないかと期待していたが、そんなのは出ない。
それどころかゴブリンもいない。
これじゃあ、普通に依頼の浮草採集して終わりじゃねえか。
そうだ、忘れていたけど、ここは鉄等級冒険者が来るような場所だった。
そんな強い魔物がいる訳がないじゃないか。
都合の良い考えばかりしてた俺の失敗だ。
せめてゴブリンはいないだろうか……そうだよな、いないよな。
こうなったら変身して臭いで魔物を探すか。
ちょうど誰も居ない様だしな。
俺は服を脱いで変身の準備を始めた、その時だった。
「あっれえ、ライさんじゃないですか~。なに裸になってるんですかあ?」
うげ!
お、女の声。
それも聞き覚えがある。
くそ、よりによってこんな時にか。
ソロリとソロリと振り返る。
「ミリーじゃねえか……」
前にダイをモフモフしてた狼系獣人の女の子戦士だ。
たしか“桃色の月”とかいうパーティーに所属している銅等級冒険者。
彼女の目が俺の下半身を凝視している。
「ミリー、ちょっとガン見しすぎだぞ」
「あ、ああ、ごめんちゃい。魔物かと思ったよ。へへへ」
俺の下半身を魔物呼ばわりかよ!
「で、ミリーはこんなところで何してんだよ……」
「ライさんこそ、こんなところで裸って……何がしたいのかな~?」
俺は服を着ながら答える。
「池でだな、浮草を採取する依頼を受けたんだよ。服が濡れるの嫌だろ?」
素晴らしい答え、模範解答だな。
「ふ~ん、なるほどねえ。私はねえ、ゴブリン討伐で来たんだよ。今さ、パティ―メンバーが偵察に行ってるんだよ。私は留守番ね~」
あっぶねえ、変身するところだった~!
「そうだ。私、暇だからさ、お茶ご馳走するよ。あれ、そう言えばモフモフのダイちゃんは?」
「ダイは別のところへ行ってるよ。あいつは頭が良いからな、離れていてもちゃんと言う事を聞くんだよ」
一応は怪しまれない様に言い訳しておいた。
俺は底無し池のほとりにある、キャンプ地に案内された。
テントが建てられていて、焚火もしている。
ここを拠点にしてゴブリン討伐をしているようだ。
だがこの辺にもゴブリンがいるとはな。
そこで俺もこの地へ馬車を移動し、ついでにミリーに馬車番をしてもらう事にした。
ミリーと交代で留守番すれば、色々と探索に動けると思ったからだ。
最初に俺が留守番をして、その間にミリーは近くを探索して来ると言って出かけた。
ボーっと待っていてもしょうがないと思い、俺はキャンプ地から見える所をうろついてみた。
するとキャンプ地の直ぐ近くの池の浅瀬で、群生している浮草を見つけた。
これはラッキーと思い、浮草の採取に取りかかった。
これだけ群生していると採り放題だ。
しかし余分に採っても金にならないかもしれない。
依頼は五株だけだ。
それ以上は書いてなかったな。
十株ほど採取したところでやめておく。
そして戻ろうと振り返ると、陸地に緑色のうごめく奴らがたむろしていた。
ゴブリンだ。
次回投稿は明日の昼頃の予定です。
多分……
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