129 城ダンジョンに潜った
今日のところは準備のみにして、明日から本格的に城ダンジョンに挑む事にした。
既にダンジョンに潜ったオークもいるそうなので、その情報も聞いてみた。
「どんな魔物が出たんだ?」
「ゾンビ、スケルトン、グール、レイス、出た」
やはり出現する魔物はアンデッドだけで、それ以外の魔物は今の所は出ていない。
アンデッドのダンジョンで確定だろう。
そしてそのアンデッドだが、ゾンビやスケルトンが殆んどだが、稀にレイスやグールが出現するらしい。
そうなるとオーク達のパーティーは苦戦するという。
グールなら苦戦しながらもなんとかなるが、レイスが出ると壊滅するらしい。
レイスには、武器攻撃が効かないからだ。
レイスは実体がないから、物理攻撃は駄目って事か。
魔法攻撃ならいけると思うが、それも試してみないと分からないな。
オークにも魔法が使える者もいるのだが、その数は非常に少ない。
オーク達は祈祷師と呼んでいる。
少ないから非常に貴重な存在だ。
その貴重な祈祷師を呼び出して、危険なダンジョンに潜れというのは酷か。
そして翌日の朝、城ダンジョン前に全員が集合した。
ハルト達の勇者パーティーは、ダンジョンの階層や広さといった規模を調べるから、俺達とは別行動となる。
俺達はアオと一緒に、魔物の種類やドロップアイテムを調べる。
城ダンジョンへと入りしばらく歩くと、早速別れ道となる。
「俺達はこっちへ行くがハルト達はどうする?」
そう俺が聞くとハルト。
「同じ方向へ行ってもしょうがないからな。だから僕達は反対の方へ行くよ」
「そうか、ならここで一旦お別れだな。また夜に会おう」
別れ際にヒマリが俺に声を掛けてきた。
「ね、ね、ライ。あとで一杯お話しようね。バイバイ」
「あ、ああ、そうだな」
「バイバイ、またね」
ヒマリが両手の平を一度口に当て、パッと離して両手を広げた。
そしてウインク。
今のは何の合図だろうか。
ヒマリの生まれ故郷である異世界の、流行りの踊りか何かだろうか。
それを理解しているのか、リンとハルトが呆れた様子で苦笑いだ。
その一連の流れを見ていた後方にいたアオが、「ん」とつぶやいたかと思ったら、トコトコと歩いて前に来た。
そして俺の前でくるっと振り返って止まる。
「一杯バイバイ」
と今聞いたヒマリの省略した言葉をつぶやくと、両目を何度も瞑り俺に抱き着いてきた。
意味不明。
それにウインクが出来ないならやるなよ。
その途端、ヒマリが鼻息荒くふんずと構え、何故か長い詠唱を始めた。
直ぐにハルトが動きだし、ヒマリを羽交い締めにする。
そのまま引きずられるように去って行ったが、ヒマリは大丈夫なんだろうか。
なんか調子狂うな。
ヒマリは最近急に馴れ馴れしくなったしな。
それに、ああいった謎の合図や言葉を使ってくる。
会話するのにも一苦労だ。
こうして勇者パーティーとは、別れての行動となった。
通路は石造りで、二人並んで通れるくらいの幅しかない。
所々の壁には松明が掲げられており、歩けないほど暗くはない。
松明は壁から外すと、どういう訳か火が消える仕様だ。
だから持ち歩く事も出来ない。
窓もあるのだが壁が凹んでいるだけで、実際に外が見えるわけではない。
飾り窓である。
少し歩くとやっと魔物が出現した。
スケルトンってやつだ。
人型の骨だけで出来た魔物である。
先頭を行くラミの剣の一撃で煙となって消えた。
「歯ごたえがねえな、つまらん」
ラミはボヤきながらも先を進む。
次に出て来たのはソンビが三体だ。
こちらも一瞬でラミが片付ける。
別れ道も多くあり、結構入り組んでいるダンジョンという印象だ。
だが今の所、出現する魔物は低レベルのアンデッドだ。
しかし奥へ行くほど、徐々に魔物が強くなってくるようだ。
スケルトンの装備が充実してきて、武器の扱いが上手くなってきた。
こっちの攻撃を盾で防いだりする。
まあ、ラミの攻撃だと盾で防いでも、その盾ごとふっ飛ばして壁に叩き付けるがな。
ラミじゃ強力過ぎるので、先頭をアオにしてみた。
そこへスケルトンが二体接近して来る。
アオが小剣とダガーを構えて待ち受ける。
一応だが二刀流とも言える。
戦闘が始まる直前になって、スケルトンの動きが突然遅くなる。
俺達も急に体が重くなった感じになる。
アオの固有スキルだ。
アオの戦闘範囲に入ると、敵味方関係なく鈍化的なスキルが発動するようだ。
どうせ狭い空間で、二人並んでの戦闘は難しい。
ここはアオ一人に任せるか。
スケルトンというのは、ホネだけで出来ている為、突き刺す攻撃には恐ろしく強い。
強いというより、当たりにくい。
頭部なら刺せるが、それ以外の部位は骨の間をすり抜けてしまう。
それにアオの剣術レベルが低いというのもあって、これは中々当たらないんじゃないかと思う。
だがスケルトンが間合いに入った所で、アオが驚く行動に出た。
小剣とダガーを胸の前でクロスさせ、短い詠唱を発した。
剣で戦わない?
魔法か!
すると瞬時にクロスされた刃から、眩い程の白い光が放たれた。
その光は一瞬だけしか放たれなかったが、スケルトン二体相手には十分だったようだ。
瞬く間に煙となって消えた。
こんな魔法が使えるのか……と思ったら、ダガーの柄に魔法石が取り付けてあるのが見えた。
魔道具か。
はは~ん、アオの奴、それが見せたかった訳だな。
でもさっきの構え……発動条件があるのかもしれないな。
「アオ、新しく魔道具ダガー買ったのか」
「ん」
そう言って、魔法石が付いたダガーを俺の方にズイっと見せる。
ダガーの方だけが魔道具なんだよな。
「何で小剣とそのダガーをクロスさせたんだ?」
するとアオは一言。
「カッコいー」
「……」
言葉を失ったよ!
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