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125 自宅に招いた










 楽団の演奏も相まって、ヒマリのグラスが進む。

 さあ帰るかって時には、結構な量のワインをヒマリが一人が飲んでいた。

 だが加護のおかげなのか、ヒマリの顔はほんのり紅い程度だ。

 ほろ酔いといったところか。


「私〜、ちょっと飲み過ぎちゃったみたい〜」


 そんなことを言いながら、俺にもたれ掛かってきた。


「ヒマリ、そろそろ帰るか」


 気が付けば閉店時間らしい。

 もちろん代金はタダだった。


「ヒマリ、どこの宿に泊まってるんだ?」


「ええ〜、帰るのい〜や〜だ〜。まだ飲む〜」


 面倒くせ〜!


「そんなこと言っても、もうどの店も閉まってるぞ」


 すると急に口調が変わるヒマリ。


「え、えっとぉ、う〜、ラ、ライの家、行こ……」


 は?

 俺の家に来る気か。

 まあ、一晩くらい泊めても良いか。


 店を出ると馬車が待っていた。


「どうぞ、家、送る」


 オーク兵が馬車の扉を開けた。


 もちろん馬車の仕様は、暗色を基本とした配色……以下略。


 一瞬だけ躊躇ちゅうちょしたが、ヒマリと共に乗り込んだ。

 もうこの馬車にも、かなり慣れてきてしまった。

 インテリオークのニヤリとする姿が頭をよぎり、何故か背筋が寒くなる。

 まさか、そういう作戦とかじゃないよな?


 自宅に戻るのは久しぶりだ。

 辺りは暗いが、それでも見慣れた景色に安堵あんどする。


 あれ?


 違和感を見つけた。


 自宅を囲う柵の範囲が広がっている。

 それに柵っていうより壁になっている。

 しかも門が出来ていたりする。

 さらに門番までいる。


「ライ様、お帰り、です」


 オーク兵に出迎えられた。


「なんで柵が壁になって、それも広がっているんだ」


 俺の質問にアタフタするオーク兵。

 下っ端に聞いても無駄か。

 護衛隊長はデグって名前だったか、そいつに聞いた方が良いみたいだな。


 自宅に向う。


 暗闇の中から建物が見えてきた。


 自宅が改築されている……


 物見やぐらが建てられているし、兵舎らしき木造建物まである。


 またオーク共が勝手に造りやがったな。


 ヒマリも驚いて、すっかり酔いが冷めた様子だ。


「ねえ、ライ。ここがライの自宅なの。オークの駐屯地じゃないの」


 ヒマリの言う通りだよな。

 どう見ても駐屯地だ、


 取り敢えず家の中に入る。

 家の外見と内装は、余り変わってないのを確認、ちょっと安心した。

 玄関扉が立派になってるくらいか。


 だがラミとハピとダイがいない。


「ヒマリ、ちょっと家の中でくつろいてもらえるか。俺はデグ隊長……護衛隊長のところへ行ってくる」


「うん、わかった。早く戻って来てね」


 家を出て兵舎に向かう。


「デグはいるか!」


 中に居たオーク兵士達が、一斉に不動の姿勢をとった。

 良く訓練されてやがる。

 

「デグだ、護衛隊長のデグを連れて来い!」


 俺が再び怒鳴ると、奥の部屋からデグが出て来た。


「ライ殿、何か、あったか」


 言葉が少しばかり上手になってやがる。


「デグ、何で壁が出来たりやぐらが建ってるんだ。それにテントだった兵舎が木造建物になってるじゃねえか。ほら、説明しろ!」


 俺の剣幕に動じす、デグは落ち着いて返答した。


「はい、ライ殿、自宅を出て直ぐ、バンパイヤ襲撃、受けた。オーク兵、沢山戦死した。壁造った。兵士呼んだ」


 バンパイヤの襲撃だと!

 クソ、ここがバレたか。


「なら、ラミとハピとダイはどこ行った?」


「バンパイヤ、この周辺、出た情報あった。偵察行った」


 あいつら勝手な行動しやがって!


「直ぐに家の前に馬車をつけろ」


 そう言って、俺は再び家に戻る。


 玄関を入ると、どこから見つけてきたのかテーブルの上には、ワインに加えてチーズが乗っていた。

 そして上着を脱いで薄着になったヒマリが、ワインカップを片手に、イスに足を組んで座っていた。


「もう〜、遅いんだから〜」


 何やってんだこいつと思いつつ、俺は脱いだ上着をヒマリに渡して言った。


「ここは危険だ、バンパイヤが近くをうろついている。オーク兵に送らせるから、ヒマリは直ぐに帰るんだ」


「え、何、意味分かんないんだけど」


 玄関が、ノックされる。


「馬車、準備、出来た」


 馬車担当のオーク兵だ。


「馬車が来てる。直ぐに乗り込んで街に戻るんだ。それからギルドにバンパイヤがうろついている事を知らせるんだ。ほら何やってる、急ぐんだよっ」


 するとヒマリ。


「待ってよ。それならハルト達に今知らせるから」


 今知らせる?


「ちょっと待ってね……」


 ヒマリが何やら詠唱する。

 そして言葉を空に向かって放った。


「ヒマリ、今の魔法は何だ?」


「言葉を送れる魔法みたい。詳しくは私も知らないんだけどね、何か短い文章くらいなら送れちゃうみたいよ。便利っしょ?」


 確かに便利だな。


「まあそれは良いとして、ヒマリは馬車に……」


「あっ、ちょっと待ってよ。返信来たみたい」


 そう言ってヒマリは、自分の両耳に手をあてた。

 そしてこう言った。


「ハルト達、ここに来るってさ」


 マジか!

 この要塞化した俺の家、見られちまうのかよ!

 

 





引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。





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