123 翼の無い鳥連合会が現れた
しばらく休んだ所で、ハルト達は人間領に戻ると言ってきた。
ギルドには魔王城は無かったと報告するそうだ。
ダンジョンについてもいずれバレるのだからと、隠さずギルドに報告してもらう事にした。
それと最後になって、無神経なラミが片耳ルールに耳の事を聞きやがった。
その結果、知りたくない内容を知る事になる。
「前から気になってたんだがよ、その欠けた耳って魔物にでも噛じられたのか?」
すると片耳ルールはその欠けた耳を手で押えると、忌まわしい過去を話し始めた。
「これはかつて私がエルフの村に住んで居た頃の話です。私がまだ子供の頃の、ある日の夕暮れ時のことでした。ダイアウルフの群れが村を襲ったんです……」
あれ?
何か聞いた事あるような……
片耳ルールは話を続ける。
「その夜は大人のエルフの殆んどが狩りで出掛け、帰りが遅い日だったんです。そこへダイアウルフの群れが襲い掛かりました。かなりの被害がでましたが、かろうじて全滅は逃れました。その時、その群れのボス狼に噛じられたのが、この耳なんです。それからというもの……」
片耳ルールの話は、全然止まりそうにない。
俺はチラリとダイを見ると、サッと視線を逸らしやがった。
やっぱりそうか。
俺とダイが会ったばかりの頃に、昔エルフの村を襲ったことがあるって言ってたもんな。
あの耳を噛じったのは、ダイアウルフの族長時代のダイだろうな。
俺がダイをじっと見続けていると、観念したのかダイが念話を送ってきた。
『……あの耳を噛じったのは間違いなく俺だよ。何となく覚えてるし。でもこの姿ならバレやしないって』
確かにバレはしない。
ならば波風はたてないようにしよう。
片耳ルールの長い話も終わり、やっと勇者パーティーが出発という段階になり、「またどこかで会おう」と歩き出した時だった。
突然ヒマリが小走りで走って来た。
そして俺の前で止まる。
「あのね、私達ね、しばらくエルドラの街で活動するの。だからライが街に戻ったら、れ、連絡ちょうだい。だめ?」
何か俺に依頼でもあるんだろうか。
下手な返答すると、また機嫌を損ねるから注意が必要だ。
「了解した。帰ったらギルドに伝言を残す」
「やったぁ、約束ね、じゃあバイバ〜イ!」
無茶苦茶機嫌が良くなったな。
笑顔で行ってしまった。
やっぱ、人間って難しいな。
さて、俺達も早いとこ依頼を終わらせ帰らないと。
依頼にも期限があるからな。
植物系魔物の採集依頼だ。
本当はダンジョン探索したいのだが、時間が無い。
オーク部隊はどうするのかと思ったら、ここに残ってグースの領地を監視するそうだ。
それならと、オーク兵にダンジョン探索と管理の命令も出した。
定期的にダンジョンに入って、魔物を倒してもらい、ドロップアイテムを得ようという考えだ。
ダンジョン産の魔道具は、かなりの高値で売れるからな。
そしてオークの第二陣部隊も到着し、城ダンジョンの近くに野営地を建設し始めた。
そこで俺達は、お目当ての植物系魔物の採集に出掛けた。
もちろん護衛のオークが十人、もれなく付いて来る。
それとダックも四人、グワグワ鳴きながら付いて来る
正直ダックはうるさいから、付いて来てほしくない。
しかし「冒険は家に着くまでが冒険グワ」とか言って付いて来る。
それで相変わらず騒がしい一団となった。
運良く依頼の植物系魔物も直ぐに発見でき、難なく採集する事が出来た。
一旦グースの街に戻り、改めてエルドラへと出発しようとしていた時だった。
身なりの良いダックが一人、付き人ら数人と共に俺の前に現れた。
「よかった、間に合いましたグワ!」
何となく育ちが良さそうな感じだ。
そいつを見た俺の側のダック四人が、慌てて跪き始めた。
ダック族にとっては、かなり地位のある者みたいだな。
「誰だ」
俺が威圧すると、慌てて俺の前に跪くダックの面々。
あれ?
偉いダックじゃないのか?
「は、はい〜、も、申し遅れましたグワ。私は“翼の無い鳥”連合会の会長をしています、ドナ・ルードでございますグワ」
翼?
会長?
ハピが知っていたらしく、小声で教えてくれた。
「ダック族や鳥系亜人みたいな、翼が無い種族の集まりですわ」
ダイの説明もあった。
『荒れ大陸では結構大きな部類の集まりだよ』
ふ〜ん、そんな奴らが何用だろうか。
まさかグースの街を乗っ取ったのが気に食わないとか?
「そのツバッサー会長だったか、何用だ」
ドナ・ルードは跪いたまま話し出した。
「オークの隊長の所へ行ったら、ライカンスロープのライ様の所へ行けと言われましたグワ。ライ様がこのオーク部隊の指揮官とお聞きしましたグワ」
「うーん、一応はそう言う事になってるが、俺に会ってどうするつもりだ。グースの領地を返せとか言うのか」
「いえ、そのことではありませんグワ。我々の“翼の無い鳥”連合は、鳥頭族、ダック族、エミュ族の連合族で、この大陸でも大きな勢力を持っていますグワ。そこで我々との同盟の提案を持ってきましたグワ。ライ様と我々が同盟を組めば敵なしグワ」
グースの領地が落とされたのを聞いて戦う選択でなく、同盟という作戦に出たか。
だが直ぐに答えは出せない。
「ああ、そうだな。考えておこう」
答えを出すのは、オーク族長のオウドールと話をしてからだな。
「それではいつ頃にその答えが出ますグワ?」
しつこいな。
「俺も忙しいからな。一旦エルドラの街に戻ってからだ」
「分かりましたグワ。時間を見計らってお伺いしますグワ」
それでなんとか立ち去った。
これでやっと戻れる。
俺はエルドラの街へと出発した。
引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。
ダイがエルフの村を襲った話は、第二話に少しだけ書いてたりする。