122 魔王城に入った
オーク兵が連れて来たオグル兵の捕虜は、全部で三人だった。
正確には生き残ったのが三人で、他は斬り捨てられたらしい。
「直ぐに尋問しろ」
俺の指示で捕虜は、別の場所へ連れて行かれた。
するとそれを見ていたハルト。
「なんかライって、軍隊の隊長みたいだな」
いや、軍団長なんだが。
「ライ、それより〜、今度一緒に食事―――――」
近くでヒマリが何か言ってる?
しかしハルトが話を続ける。
「あの兵士、千人位いるんだろ、凄いよな」
いや、三千人以上居るんだが。
「ハルト、からかうのはやめてくれよ。俺は単にオーク族の客人だよ。はは、ははは」
「ライは会う度に偉くなっていくよな。次に会う時は魔王になってるんじゃないか、ハハハハ」
それは笑えねえ……
「私の話聞いてるっ!!」
突然怒鳴り出すヒマリ。
もしかしてずっと俺に話掛けていたのか?
それはマズいな。
「すまん、ヒマリ、もう一度言ってくれるか」
「もう、いい!」
怒らせてしまったようだ。
これだから人間は分からん。
皆で適当に腰を下ろしてくつろいでいると、魔王城の中を探索した結果を知らせに、オーク士官が俺の所に現れた。
あの口が達者なインテリオーク士官だ。
「ライ様、魔王城の探索が終了しました」
かなり探索が早い。
まああれだけの人数が居れば早いか。
「それで何が見つかったんだ」
「はい、ダンジョンです」
へ?
まさかのダンジョン!
俺は居ても立っても居られず、「見に行く」と言って歩き出した。
他の皆もついて来る。
魔王城の中に入ると、普通の城の中に見える。
だがそこは紛れもなくダンジョンだった。
目の前で魔物が湧いたのだ。
それはゾンビだった。
まあ、瞬殺だがな。
つまりアンデッドの湧くダンジョンだ。
インテリオークが、捕虜のオグルから聞き出した話を説明してくれた。
それによると、このダンジョンから湧き出したエルダーリッチが、近くに居たオグル族を支配下に置き、ダンジョンの上に城を建てる命令を出したという。
つまり魔王城は城として造ったのもあるかもしれないが、偽装の為に造ったとも考えられる。
するとしばらくして、ダンジョンと城が同化したらしい。
そこで俺が疑問を投げ掛けた。
「そんな事有り得るのか?」
その疑問に片耳ルールが答えてくれた。
「過去に似たような実例があります。帝国で見つかった遺跡ダンジョンです」
俺も聞いた事はある。
西方にある国、つまり帝国で見つかったダンジョンだ。
「俺も聞いた事だけはあるが、詳しくは知らないな」
俺がそう言うと、片耳ルールが説明を続けてくれた。
「通常のダンジョンは洞窟型ですけど、見つかったのは内部の造りが遺跡のダンジョンだったんです。ドロップアイテムも遺跡に関係する物が出る時もあるそうです。研究者によると、ダンジョンが発生した所に、たまたま遺跡があったのではないかと言われていますね」
それは分かった。
それで城型ダンジョンなんだな。
だが、なぜアンデッドなんだ。
「魔物がアンデッドというのは、関係しているのか?」
すると片耳ルール。
「その辺は解りません。もしかしたら、近くに墓地があったか、沢山の遺体が埋められてたのかもしれませんね」
成る程ねえ。
そういえば俺の自宅のダンジョンが見つかった時は、領主の物となるとか言ってたが、ここはグースの領地だよな。
グースの物は俺の物。
言い換えれば俺の領地じゃねえか。
そんな事を考えていると、片耳ルールが話を続けていく。
「このダンジョンは、かなり珍しいタイプのものですね。きっと研究者が殺到しますよ」
そこで俺は疑問を口にした。
「ちょっといいか、質問だ」
「何です?」
「このダンジョンの所有権はどうなる」
すると片耳ルールが腕を組んで悩み始める。
「う〜ん、そう言えば、人間の領地以外でダンジョンが見つかった場合は、どうなるんですかね。荒れ大陸でダンジョンが見つかったのは、始めてですからね〜」
「片耳ルール、一応だが、ここの土地にも領主がいるぞ」
「それって荒れ大陸に住む亜人ですよね」
「ああ、そうだが。まさかそれだと認められないと言うのか」
申し訳なさそうに頷く片耳ルール。
「人間達は、荒れ大陸の亜人領は認めていませんから。恐らくですが、このダンジョンが知られると、冒険者や研究者が殺到するかと……」
ここは荒れ大陸だから、冒険者が来るとしたら金等級以上だよな。
防ぎ切れねえ〜
ダメ元で言ってみる。
「実はだな、ここの領主と知り合いなんだ」
勇者パーティー全員が、一斉に凄い形相で俺を見た。
そしてハルトが口を開く。
「まさか、この荒れ大陸でも客人とか言うのか……」
いや、俺の領地なんだが。
「ま、まあ、客人みたいなところだな。ええっと、オーク族長のオウドールとここの領主と関係があってな。そ、それでオークの鉱山調査隊が来てたんだよ」
するとハルトはこともあろうか、インテリオークに話を振りやがった。
「へ〜、オークの隊長、そうなんだね。では、ここの領主ってどんな人物なんだ?」
インテリオークが俺をチラッと見た。
俺は上手く話を合わせろと、ウインクで合図した。
するとインテリオークは、ニコリと笑顔を見せてから話し出す。
理解してくれた様で助かった。
さすがインテリだな。
「ここの領主は以前、ダック族のグースと名乗る者でした」
そこでハルトの突っ込みが入る。
「以前って事は、今は違うのか?」
ヤバイ、インテリオーク頑張れ!
「はい、その通りです。今は違うからですね」
大丈夫だよな?
余計な事言わないよな?
ハルトは興味津々《きょうみしんしん》のようだ。
「それじゃあ今は誰なんだ」
「表向きはダックのグース……ですが〜」
俺はインテリオークに向かって、必死に威圧感を送る。
それとは裏腹に、ハルトは話に食い付く。
「うん、うん、それで?」
インテリオークが、やっと俺の威圧感に気が付いたようだ。
再び笑顔で話し出した。
「表向きはダックのグースですが、裏で糸引く者が居るんです」
その糸でしばいたろか!
「うん、うん。だからさ、それは誰なんだよ」
そこでインテリオークが眼鏡をクイッと上げて言った。
「はい、その方は謎なんですね。いずれはこの荒れ大陸を統一するお方ですので、その時になればお姿を現すのではないでしょうか」
遠回しに俺が魔王だって言ってるだろ!
引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。
少し書き溜めします。
しばし時間をくだせえ〜