表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/204

121 アンデッドがいた






 

 


 俺はつぶやいた。


「あれはエルダーリッチだな。今のハルト達にはちょっとキツイ相手だぞ」

 

 するとラミ。


「でもよお、さっきのトロル相手でも勝ったんだぜ。いけるんじゃないのか」


 続いてハピ。


「わたくしも勇者パーティーが楽勝すると思いますわ」


 しかしダイの意見は違う。


『勇者パーティーは魔法が得意な相手に弱いと思うな。だからエルダーリッチ相手は分が悪いぞ』


 俺はダイの意見と同じだ。

 魔物が使う魔法は種類が少ないが、魔法使いの魔法は多種多様だ。

 今まで勇者パーティーが戦ってきた相手のほとんどが、魔法があまり使えない知能が低い魔物である。

 だから魔法相手の戦いに慣れていない。

 それに勇者パーティーの魔法レベルは、今まで見た感じだと決して高くないし、ありきたりな魔法ばかりだ。

 明らかにエルダーリッチに劣る。


 それにいつも最後は、前衛であるハルトの魔剣の一撃で終わる。

 そのハルトを魔法で抑えられたら、このパーティーは崩壊する。


 ハルトが剣を構え直した。


 するとエルダーリッチの左右に魔法陣が浮かぶ。

 そしてエルダーリッチが、ハルト達を軽く指差した。


 すると魔法陣から次々にバグベアーが現れる。

 人間より一回りほど大きな魔物である。


 召喚魔法だ。


 大した武器は持っていないが、数が多い。

 ハルトが前に立ち、自分より後ろに行かないように必死で食い止める。

 一撃で煙と化していく程度の強さだが、数が多過ぎて全部をいなし切れていない。


 神官戦士のリンが止む無く前に出た。

 しかしリンでは一撃で倒せない。

 後方からヒマリと片耳ルールが援護するが、目の前に迫るバグベアーに対応するだけで、手一杯状態だった。


 ハルトもこのままだとマズいと思ったらしく、ヒマリに指示を出した。


「ヒマリ、これじゃキリがない。後ろにいるエルダーリッチを狙ってくれるか」


 良い判断だと思う。

 だがヒマリにそれが出来るのか。


 するとヒマリが自信有りげに返す。


「分かった。私に任せて」


 そう言うや、再びあのワンドを取り出した。


 パラライゼーション・ワンドだ。


 もはや勇者パーティーの必殺パターンとなっているみたいだ。


 直ぐにヒマリがワンドを構え、エルダーリッチに向かって魔法を発動させた。


 そこでダイが念話を送ってきた。


『エルダーリッチには効かないよ』


 ダイが伝えてきた通りだった。


 エルダーリッチは、元々魔法耐性がかなり強い。

 それに今は、何らかの防御魔法を掛けているようだ。

 エルダーリッチに対して、魔法攻撃は相性が悪い。


「あれ? な、何で効かないの!」


 ヒマリが大慌てだ。


 そう言えば、エルダーリッチの魔王なんて有り得るのだろうか。

 ダイに聞いてみたその返答。


『アンデッドは魔王になれないって聞いたことあるぞ』


「ダイ、それはもっと早く言え!」


 俺は走り出した。


 ハルト達、勇者パーティーの元へ。


 まずは勇者パーティーを取り囲んでいる、オグル兵を槍で串刺しにしていく。


 すると真っ先にヒマリが反応した。


「あっ、ライ! 来てくれたんだ!」


「ヒマリ、前を見ろ、前を!」


 そう言いながら、ヒマリの前に迫るバグベアーに槍を投擲した。

 一撃でバグベアーは煙と化す。


 弱い!


 勇者パーティー全員が俺に気が付いて、声を掛けてくる。


「ライ、助かる」

「マジ、ヒーロー」

「もう、そんな事されたら……」

「また助けられました」


 そこへラミとハピ、そしてダイも加われば、一気に形勢逆転だ。


 オグル兵を蹴散らし、バグベアーも瞬殺していく。

 あっという間に敵は、エルダーリッチだけだ。


 こうなると、魔法詠唱の隙など与えない。

 もう俺達の勝ちだな。


「最後はハルト、決めてくれ」


 俺が声を掛けると、ハルトは白い歯をキラリと見せて言った。


「分かった。それくらいは任せてくれ」


 ハルトの剣が上段から振り降ろされた。


「スーパー・エキセントリック・エクストラ・スラーッシュ!」


 段々掛け声が長くなっていく気がするんだが。


 一瞬、障壁の様な壁にぶち当たったが、ハルトは強引にそれごと斬り伏せた。


 さすが魔剣、アンデッドにも有効だった。


 エルダーリッチは悲痛な叫び声を上げながら、消えて無くなった。


 残るオグル兵は、逃走して行く。


 勝利したのだ。


 ハルトがつぶやいた。


「勝ったんだよな、俺達」


 俺は言ってやった。


「ああ、勇者パーティーの勝利だよ」


 するとハルトが大声を上げた。


「俺達の勝ちだああああっ!」


 するとヒマリやリン、そして片耳ルールは飛び跳ねて喜んだ。


 釣られて俺達も喜んでいた。


 皆が抱き合って喜んだ。


 ハルトが俺の元へ来て手を握る。


「ライ、ありがとう。本当に助かったよ。ありがとう」


 ちょっと照れくさいな。


 そこでハルトが思い出した様に言った。


「ところでだけど、後ろの大部隊は何だ。オーク部隊ってことはライの味方なんだろうけど」


 忘れてた!


「あ、ああ、そうだな。オウドールの部隊がたまたま来てたみたいだな。たまたま鉱山を探しに来た時に、たまたま遭遇したんだよ……」


「そうか、それじゃあ一緒のダックやゴブリンは何なんだ?」


 んぐぐぐ!


「そ、それは、あれだ。ハ、ハピの獣魔だよ……」


「ハピの獣魔? 獣魔の獣魔ってことか。前にオーク達のことも獣魔って言ってたけど、仲間が多くて良いな」


「えっと、まあ、そんな感じだ、ハピもああ見えて顔が広いからな。はは、あははは」


 ハルトはちょっといぶかしげな表情だ。

 しかし意外と素直に受け入れてくれた。


「凄いな。そうなると大所帯だよな。さすがライだよ。ハハハハ」


「あははははは」


 何か丸く収まった。


 そこで魔王城の中を探って無い事に気が付いた。


「そうだ、オーク兵に魔王城の中を探索させるんで、ハルト達は休んでいてくれ」


「そうか、悪いな。なら休ませてもらうよ」


 そこで俺の前にヒマリが出て来た。


 何だが瞳が、うるうるしてるんだが。


「ライ、ありがと。いつも助けられてばかりだよね。あのさ、もし良かったらね……お祝いに一緒にね、しょ、食事でも―――――」


 そこでヒマリの言葉がさえぎられた。


「ライ様、怪しい奴ら、捕えた」


 オーク兵が数人、捕虜らしきオグル兵を連れて来た。

 





引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。



そろそろストックが切れます。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ