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119 魔王城の扉が開いた








 正式に軍団長になっちまったよ……


 しかしあの頭の良さげなオーク士官、要注意だな。

 よし、インテリオークと名付けよう。


 とにかく早いとこ魔王に会って、友好関係を結ばないと。

 それで俺が人間と魔族の友好を結ぶ橋渡しになれば、軍団も必要なくなる。

 もう少しの辛抱だ。


 オウドールとエルドラの街みたいに、魔族と人間も協力関係になれば良いんだがな。


 そして出発の準備が整い、さあ行こうかという時だ。

 俺の目の前には、屋台みたいな形の何かが停められている。


 全体的に暗色ばかり使ったデザイン。

 ドクロをモチーフとした装飾。

 赤い血管のような模様。

 狼のマークの旗。


 見たことあるデザインじゃねえか。


「おい、誰かこの屋台の説明をしてもらえるか……」

 

 俺の質問に対し、自慢気にハピが答えた。


「ライさん専用のカートですわ!」


 専用カート?


「まさか、それに俺が乗るのか」


「その通りですわ」


「いや待てよ。まあ、デザインは一旦置いておくとして、カートをく魔物がいないだろ」


「それはこういう事ですわ」


 そう言ってハピが鳥の鳴き声を発した。

 するとダック達がバラバラと現れて、そのカートをく準備を始めた。


「まさか、人力なのか?」


「ダック力ですわ」


 ダック達に、俺の乗ったカートを運ばせようというのだ。


「ハピ、ひとつ聞いて良いか?」


「なんですの」


「馬とか猪とかにかせれば良くないか」


「ライさん、それがこの荒れ大陸では、馬やロバは育たないのですわ。かと言ってオークが飼っている猪系や、ゴブリンの狼系の魔物もこの街にはほとんどいないですの。だから人足を使うのが普通らしいのですわ」


「人力なのは理解した。しかしなハピ。このカートのデザインは何とかならないのか。悪趣味というか……」


「そう言われましても、今はこれしかありませんの。それに悪趣味なんて……。嫌なら歩いて移動になりますわよ」


 う〜む、歩くよりは良いか。

 仕方ない、乗って行くか。


 俺は渋々、魔王デザインカートに乗り込んだ。

 獣魔達も乗り込む。


 そしてゆっくりとだが、カートが動きだす。


 二十人近くのダック兵が、俺の乗った特別製カートを引っ張っている。

 後ろからも十人ほどのダック兵が、カートを押している。


 苦しそうだな。


 御者台にはダックの士官が乗っていて、巧みな手さばきで手綱を操る。

 見ていると中々感心する。

 あの人数をよく操っているよな。

 

 ただ遅い。


 非常に遅い。


 歩くのとあまり変わらない。


 下手したら歩く方が速い。


 ラミも「ちょっと遅くねえか」と言っている。

 ハピに言うと「気分の問題ですわね」と返された。


 何の気分だよ。


 だいたい、このカートに俺と獣魔三人は多いのではないか。

 定員オーバーな気がする。

 だがこの大部隊の移動となると、このくらいの速度が丁度良いみたいだ。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 ゆっくりと一日ほど歩いた所にそれはあった。


 丘の上にそびえたつ異様な建物。

 

 暗色の配色をふんだんに取り入れたデザイン。

 ドクロのオブジェを用いた……

 もう説明はいらない。


 魔王城だ。


 それが丘の上に建っていた。


 グースのダック部隊が、丘のふもとで待機しているのが見える。


 俺の命令通りに戦闘はしていない。


 しかし魔王城が騒がしくなっていくのが、ここからでも見て取れる。

 我々、魔物オウドール混成軍団を発見したからだろう。

 グースのダック部隊と合わせると三千人。

 オグル兵の六倍だ。


 よし、敵と勘違いされる前に使者を送って、魔王に謁見えっけんさせてもらうか。


 そう思って使者の準備をしていると、突然ダックの伝令が来た。


「魔王城の東側から何者かが、駆け上って行きますグワ」


 どういうことだろうか。


 直ぐにハピを上空に飛ばした。


 すると慌てた様子で降下してきて言った。


「ライさん、あれはハルト達ですわ!」


 くそ、このタイミングでか!


 ハルト達が魔王城へ突撃を始めてしまったということだ。

 こうなると非常に困る。


 この場面での俺達の行動をどうするかだ。


 魔王に加勢するのも気が引ける。

 そもそもハルト達と剣を交えられるのか?

 かと言ってハルト達に加勢すると、今後の俺の立場が難しくなる。

 

 どうしたものか。


 悩んでいる内に、ハルト達がオグル兵と戦闘になった。

 取り敢えず、ここからだと遠すぎて良く見えない。


 俺は獣魔達を連れて接近する。

 軍団は待機だ。


 オグル兵とハルト達が戦っている。

 その勇者パーティーの中には、片耳が欠けたエルフがいた。

 “片耳ルール”との異名を持つ、大賢者リル・ルールだ。

 

 やっぱり本当に居たか。


 後方支援らしく、スタッフ・スリングで薬品を敵にぶつけている。

 しかしハルト以外が後方支援って、パーティーとしてバランスが悪いよな。

 俺達は逆に前衛ばかりだから、ハルト達と一緒に戦っていた時って、バランスが良かったんだよな。


 ハルト達と行動を共にした頃を思い出した。

 そう言えば、あの時って楽しかったよなあ。


「あいつら、人間のくせに面白い奴らだったよな。肉くれたし」


 ラミの声だ。


「そうですわね。人間にしては意外と親切だったですわ。よく乾燥肉くれたですの」


 今度はハピだ。

 完全に餌付けされてるな。


 ってことは、次は……


『ヒマリとリンは撫で方が上手かったな。痒い所に手が届く』


 ダイはそこなんだ。


 いずれにせよ、獣魔達は勇者パーティーの事が好きなんだな。

 まあ、俺もだがな。


 そんな事をつぶやきながら、勇者達の戦いを見ていると、遂にハルトが魔王城の入り口に到達した。


 すると周囲にいたオグル兵達が、勇者達から離れて行く。

 いや違うな、入り口から離れていってる。

 入り口から何か出てくるのか。


 その俺の予想が当たった。


 入り口が音を立てて開き出したのだ。


 遂に魔王のお出ましか。






 


引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。



連続投稿の方が良さげみたいですな。

取り敢えずある分は放出しますが、それ以降は「書き溜め→連投」の方式でやってみます。




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