表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
114/204

114 植物魔物に捕まった








 道案内であるダック四人を先頭にして、吊り橋を渡って行く。


 慎重に行かせる。

 俺が吊り橋を切った時の魔人の様に、ロープ一本で地獄行きは困るからな。


 ハピには上空から警戒してもらう。

 

 順番にそして慎重にだ。

 なんとか全員が無事に渡り終え、再び荒れ大陸を踏みしめた。


「ここから荒れ大陸だ。油断するなよ、常に周囲を警戒しろ」


 強力な魔物がいる荒れ大陸だ。

 どんな魔物がいるかも分からない。

 

 どうしても戦闘が避けられない状況でも、敵から奇襲を仕掛けられるのと、こちらから仕掛けるのとでは大きく違う。

 その為には相手より先に発見するのが、なによりも重要だ。


 オーク兵十人、ダック兵四人、そして獣魔三人。

 そしてたった一人だけ人間の姿の俺。

 怪しすぎる一団が荒野を歩く。


 俺が狼の姿で歩けば、全員が魔物の集団となって怪しまれなくて良いのだが、そうすると人間の冒険者にあったら面倒だ。

 特に勇者パーティーにあったら大変だからな。

 なので敢えて人間の姿で歩く。


 しばらく歩くと、肉食植物の魔物を発見した。

 残念ながらギルドの依頼のとは違う。


 人間三人分の高さくらいだろうか。

 中央付近に口の様な消化器官が見える。

 複数の長いつたがあり、それがウネウネと動いている。


 この魔物は標的の好みの物を見せておびき寄せ、近付いた所でつたを伸ばしてからめ取り、そのまま消化器官へ運ぶ植物系魔物だ。

 荒れ大陸にしかいない魔物である。


 どうやって標的の好みを知るのか、詳しくは分かってないらしいが、何らかの魔法ではないかと言われている。

 ただ、知能が高い魔物には通じる訳がない。

 どう見てもトラップと分かるからだ。

 ゴブリンでも中々引っかからないレベル。

 俗に“間抜けの罠(ブービートラップ)”と呼ばれて、冗談に使われたりする。


 それを全員に忠告したところ、ラミが興味を持ったらしく近付いて行く。


 するとその植物魔物のつたの先に、骨付きの焼けた肉の塊が現れた。


「おおっ、こんがり肉じゃねーか!」


 ラミがつたに手を伸ばした途端、つたがラミの腕に絡み付いた。


 言ってるそばからこれだ。


「う、うわっ、どういう事だ!」


 ほんと馬鹿なのか?


 すかさずハピが助けに向う。


「今助けますわっ」


 すると別のつたの先に串焼き肉が出現。


「あら、お肉ですわ……うきゃっ、どうしてですのっ!」


 間抜け二名捕まる。


「ネトネトするぞこれ。ライさん、た、助けてくれ」

つたが変な所をまさぐるのですわ。ライさ〜ん!」


 溜め息しか出ない。


 仕方ない、消化される前に助けるか。

 俺が小剣を引き抜いて近付いて行くと、つたの先になにやら出現した。


 魔法のワンドだった。


 一瞬、王様が持つようなしゃくに見えた。

 

 何故そのような物が現れたのか……

 そうか、思い出したぞ。

 ターナー伯爵から奪った、パラライゼーション・ワンドか。

 確かハルト達にあげたんだったな。

 俺はあのワンドに未練があるのか?


 するとオーク兵達が、ニヤリとするのが見えてしまった。


 まさかこいつら勘違いしてないか!


「おいっ、違うからな。あれはワンドであって、王笏おうしゃくなんかじゃないぞ。俺が王を狙ってるとか勘違いするなよ。な、なんだその目はっ、俺は魔王じゃないからな!」


 オーク達が一斉に視線を逸らした。

 だがダック達がまだニヤニヤしてやがる。


 こ、こいつら……


「おい、アヒル共。あの植物魔物の消化液で溶かされるのと、俺に踏み潰されるのと、どっちか好きに選ぶ権利を与えてやる。さあ、選べ!」


 急にダック達が平伏し始めて、命乞いを始める。

 調子の良い奴らめ。


「オーク兵、悪いが頼めるか」


 俺がそう言うと、オーク兵達が「消化液、踏む、どっち?」とかダックに聞いている。


「違うから。ラミとハピを助けるんだよ!」


 オーク達は慌てて植物魔物の方へ走り寄った。


 どいつもこいつも使えんな!


 何とか剣で切り裂いて助け出すと、ラミとハピは切り刻まれたつたを足で踏み潰しながら言った。


「よくも騙してくれたな!」

「こうしてくれるのですわっ」


 子供かっ!


 そこでオーク兵が、この植物魔物は食べれると言うので、食事休憩をすることにした。


 食べられるのは実の部分ということで、人間の頭ほどの大きさの赤い実を採集する。


 ちょうど採集が終わる頃だった。

 小高い丘の上に、いくつかの人影が見えた。


 ダイに知らせるも、風向きが悪くて匂いじゃ分からないという。


 人型っぽく見える。


 白っぽい体色のようだ。


 意外と小さい種族みたいだな。


 口と足が黄色い。


 クチバシ?





「ダックじゃねえか!」





 十人ほどのダック族が、丘の上からこちらを見ている。

 ああ、そうか。

 こっちにもダックがいるからな。

 しかしこっちのダック達は、人間の姿の俺に平伏している。

 彼らにしたら不思議な光景だったはずだ。

 

 そこでダック共に聞いてみた。


「あのダック共は知り合いじゃないのか?」


「荒れ大陸のダック族は別の長に仕切られているグワ。だからまだ魔王軍には所属してないグワ。荒れ大陸の支配はまだ進んでな――――」


 そこまで言ったところで、俺は話を止めさせた。


「おい、ちょっと待てアヒル。今、“何”軍って言った。よく聞こえなかったから、もう一度言ってくれるか?」


「りょ、了解グワ……まだ荒れ大陸は支配が進んでないグワ……だ、だからあのダック族は……我が(・・)軍には所属してないグワ……」


「理解した。ならばダック共、奴らのとこへ行って話を付けてこい!」


 途中で襲われでもしたら、たまらないからな。

 事前に話し合って置けば、無駄な戦闘はなくせる。

 俺達はここを通りたいだけだ。


 味方ダック部隊の四人が、除々に丘の上のダックに接近して行く。

 そして戦闘にはならずに、何とか無事に接触出来た様だ。

 味方ダックが、こちらを指差して何かを訴えている。


 しばらくすると、味方ダックが無事に戻って来た。


「どうだった?」


 と俺が聞くとダック。


おさの所へ案内するって言ってるグワ」


 いちいちおさとか面倒くせえ、無事に通りたいだけなんだがな。









引き続き「いいね」のご協力をよろしくお願い致します。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ