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103 狼の群れが現れた






 



 しばらくすると、前方から狼の群れが見えてきた。


 ラミとハピがやっと起きて来たようだが、顔がまだ寝ている。


 ダイが俺の隣に来て念話を送ってきた。


『ヒマリの様子が変だぞ』


 説明したくもない。


「寝起きで調子が悪いんだろう……それであの狼の群れをどう思う」


 強引に話をそらした。


 するとダイもそれ以上ヒマリに関しては聞かず、代わりに前方の狼の群れに視線を移す。


『なんだ、問題ない。あれはミリーだよ』


 ミリーというと、獣人のライカンスロープ少女の事だ。

 確かに狼の群れを率いていたよな。

 でも数が増えてる。

 十二頭の銀狼の群れだったはずだが、見た感じだと二十頭はいるし、恐らくあれは銀狼ではない。

 体の模様が違う。


 目を凝らして見ると、狼にまたがる人間が確かに見えた。

 狼にまたがれる人間なんて一人しかいない。


「ほんとだ、ミリーじゃねえか」


 間違いなかった。


 ミリーがこっちに手を振りながら、狼の群れと共に近付いて来る。

 銀狼だったはずの群れが、斑目まだら狼の群れに変わっていた。


「皆、大丈夫だ、狼使いの冒険者で俺の知り合いだ。警戒解除して良いぞ!」


 俺の言葉で全員が警戒を解いた。


「久しぶり〜、元気してた。あ、でもかなりメンバー増えたんだね」


 そう言ってオーク達を見回すミリー。

 そしてハルト達で視線が止まる。


 俺は慌ててハルト達の紹介をする。


「あ、ああ、そっちは人間の冒険者だよ」


 勇者って言えなかった。


 しかしハルトはしっかり名乗る。


「僕は勇者ハルト。そっちが仲間のリン、よろしくな」


 ヒマリはまだ馬車の中で、俺の芸術を消しているらしい。

 するとミリーの表情が変わる。


「勇者なの?」


 そう言って俺を見る。


 魔物のミリーにしたら、勇者は敵だからしょうがない。

 その勇者が魔物の俺と行動を共にしている事が、不思議なんだろう。


 するとリンが言葉を挟む。


「何かさあ、嫌われてるっぽいんだけど~」


 するとミリーがリンを睨む。


 リンはそんな事を言っておきながら、睨み付けるミリーとの視線は合わさず、自分の髪の毛をイジっている。


 たまらずハルトが疑問を投げ掛けるのだが。


「勇者に恨みでもあるのかな?」


 するとミリーの代わりに、二十頭もの狼達が唸り声を発し始めた。


 多数の狼達に睨まれて、ハルトは困った様子だが、しっかり手は剣に持っていく。


 一触即発の状況だ。


 何でこうなるんだか。


 そこへ声が掛かった。


「あれ〜、ミリーじゃん!」


 そう言ったのは、馬車の中にいたヒマリだ。

 俺の芸術を拭き終えたみたいだ。


 ミリーがヒマリの方を見て、眉間にシワを寄せる。


「もしかして……ヒマリなの?」


 どうやら二人は知り合いのようだが、ヒマリはスッピンだから分かりづらいみたいだな。

 スッピンのヒマリの顔は、幼く見えるからな。


 ハルトが「知り合いなのか」と聞くと、ヒマリが返す。


「前に話したじゃん。私が一人でさぁ、はぐれちゃった時の話。あの時助けてくれたって女の子がこの子。こんなとこで会うなんてビックリだね~」


 それを聞いて俺がミリーに確認する。


「そうなのか?」


 するとミリーは黙ってうなずいた。

 間違いないらしい。


 空気を読めないヒマリが、嬉しそうに話を続ける。


「あれ、そういえばさあ、狼の群れって、銀狼じゃなかった?」


 するとミリーは渋々といった感じで返答した。


「ワイバーンに挑んで全滅しちゃった……」


 空飛ぶ魔物相手に狼で挑んだのか。

 何て無謀な奴だ。

 全滅ってことはダイの母親の狼も亡くなったのか。

 ダイからしたら特別な感情はないみたいだが、可哀想な事になったな。


 そこで会話が途切れて、気まずい空気が流れる。


「ちょっと、良いかな」


 ミリーが俺に、近くへ来いと手招きしてきた。


 俺が近付くと、ミリーが耳元で小声で話してきた。


「何で勇者なんかと一緒にいるのよ」


 当然の疑問だ。

 俺はやむなく、長いことミリーに小声で説明することになった。

 もちろん、その間は斑目まだら狼の群れと、ハルトとの睨み合いは続いた。


「―――――という訳で勇者と一緒に行動している。これも魔狼を見つける為なんだよ」


 そうだ、魔狼を見つけて勇者と戦わせる事が、今回の最大の目標だった。


 するとミリー。


「それって、もしかしてアイツの事かも」


 アイツとは魔狼の事だ。

 ミリーは魔狼がどんな魔物か知らなかったらしいが、それらしい魔物の居場所なら知っているという。


 そいつは巨大な狼で、言葉を喋る魔物だという。

 まさに魔狼そのものだ。


「ハルト、魔狼の居場所をミリーが知っているそうだ」


「ああ、そうなのか。その前に、この狼達を何とか出来ないかな」


 それもそうだ。

 斑目またら狼達は直ぐにでも襲い掛かりそうな雰囲気で、ハルトも剣の柄に手を掛けたまま気を弛めない状態だ。


「ミリー、もう良いだろう。狼達を引かせてやってくれ」


 そこでやっとミリーは、ハルトから狼達を遠ざけた。


 そして話し合いの末、魔狼の居場所までミリーが案内する事になった。

 その報酬としてハルトが持っている、ワイバーンのモモ肉以外の肉をミリーの狼達へ提供する約束だ。

 ハルトのマジックバッグには、数匹のワイバーン肉が入っているらしい。

 さすが神の加護の恩恵に預かる魔道具だ。 

 

 成り行きではあるが、多数の魔物と勇者パーティーが行動を共にする事になった。

 ラミアとハーピーに加えて、十人ほどのオーク兵と二十頭もの斑目まだら狼、そしてライカンスロープが二人。

 パーティーというよりクラン規模だ。

 そして、その中のひとつに勇者パーティーがいるのだ。


 これを見た者は魔物でも人間でも、敵なのか味方なのかも判断出来ないだろうな。


 恐ろしいのは、魔狼がここにいる全員を敵として攻撃を仕掛けてきた時。

 最悪はその魔狼が魔王であった場合だ。


 その時俺は、どう行動すれば良いのだろうか。










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