おみくじ
あれは忘れもしない、中学三年生のお正月のこと。
高校受験を控えていた冬野は、友達数人と合格祈願に行きました。
電車に揺られること30分。近隣の有名なお寺まで。
初詣も兼ねていました。
皆でワイワイと楽しい雰囲気の中、おみくじを引こう! と、なりました。
そのお寺のおみくじは、まず巫女さんから六角柱の木の箱を渡されます。その箱を振って、長方形の小さい口から出た棒に書かれている番号のおみくじを、巫女さんから渡してもらうというものでした。
皆が引き終わるまで待って、全員で「せーの!」と、おみくじを開きます。
「わたし中吉」
「小吉」
「やった! 大吉」
きゃっきゃっと嬉しそうな声が上がります。
「……」
そんな中で冬野は無言です。
なぜだか、おわかりだとは思いますが。
そうです。
冬野が引いたおみくじは「凶」だったのです。
なんてこった!
合格祈願にきて引いたおみくじが「凶」とは!
友達は慰めてくれましたが、縁起が良いとは思えません。
その光景を見ていた巫女さんは不憫に思ったのでしょう。冬野に六角柱の箱を渡してくれました。
「もう一回、引いていいよ」
ありがとうございます!
冬野は今度こそ! と、ガシャガシャと箱を振りました。
確率的には「小吉」だの「末吉」だの、ただの「吉」だのと、「なんとか吉」が出る確率の方が高いのです。
さっくりと「なんとか吉」を引き当て、スッキリと受験に臨みたいのです。
出た棒を巫女さんに渡します。
おみくじをもらい、皆が注視する中で開きました。
「……」
はい。
その通りです。
またしても「凶」。
いや、あるんですね。こんなことって。
一緒におみくじを覗き込んでいた友達と、思わず顔を見合わせてしまいました。
もう笑うしかありません。
「もう一回引く?」
巫女さんは訊いてくれましたが、もういいです。と、伝えました。
有名なお寺だったので、かなりの人出があり、おみくじも混んでいたのです。
冬野たちの後ろにもかなりの人が並んでいました。
二回も引かせてくれた巫女さんに感謝しつつ、おみくじをくくりつけました。
「凶」を連続で引くなんて。
そっちの方がすごいじゃん! なんて考えながら(無駄にポジティブ)。
そして高校受験ですが……。
第一志望校は、ものの見事に落ちました。
まあ、これはおみくじで「凶」がどうというよりも、完全に冬野の努力不足です。
(T^T)
しょうがない。
それにしても……おみくじって、内容は抽象的なのに、なんだか当たっているような気がするんですよね。
解釈を自分の都合のいいように取るからだと思うのですが。
神社仏閣巡りが好きなので、今でも訪れるたびに、懲りずにおみくじを引いています。
(*´∀`)b
あれ以来、ほとんど「凶」は引いておりません。
物事って、続くときは続くんですよね。
不思議です。
(°▽°)




