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第1話:2歳、ステータスバー

 (転生ものって、なんかこう貴族令嬢にうまれたり、伝説的の冒険者になったりするんじゃないのか・・・。な、納得いかねぇ。)


 2歳になったコンスタンツはよちよち歩けるようになっていた。

孤児院の中をよちよち歩きながらコンスタンツは絶望しかけていた。ゼンデン孤児院も環境が悪い。悪すぎる。控えめに言ってクソだ。おっと言葉がお下品だった、控えめに言ってウンチである。


 大人は孤児院長のアヒム一人。これがまるで仕事をしない。娼婦を買って部屋にしけこんでいるか、お酒を飲んでいるか、さもなくば大いびきをかいて寝ている。子供を見かけてもさも汚物でも見たかのように舌打ちするだけだ。口も臭いし、腹も出ている。お前が汚い。おっと言葉がお下品だった、院長先生はウンチ野郎だ。

 そこで孤児の世話はコンスタンツを拾ったカルラをはじめとした年長の孤児がみる。といっても、衣食住の世話がせいぜいで、教育と言えるような贅沢なものはない。子供たちはみな痩せて、たかる蠅を払う気力もない程無気力で覇気がない。未熟な心身を育てるための十分な食事すらないからだ。うんちウンチ言った後では気分が悪い。


 年長者のカルラによると、孤児院は15歳になるまでに出ていかなければいけない。どこかの下男・下女にでもなれたら運が良い。そうなれば、探さなくても毎日仕事があって、ご飯も毎日食べられるのだ。カルラはうっとりとシンデレラストーリーでも語るように話をしてくれた。

 実際のところは、孤児院の裏に拡がる貧民街のどこか片隅に身を潜め、せいぜい日雇いの労働者、それができないなら乞食にでもなるか、その辺の草むらで体を売るか、というのがほとんどだ。何とか貧困から抜け出そうともがいた結果、犯罪者になったり拐かされたりして奴隷になる者も少なくないという。

(泥水すすって終わるなんて冗談じゃない。なるだけ早く定職の手がかりを探さなきゃ。ステータスバー(仮称)を見る事と喋る事の次に頑張るのが就活とは思わなんだ。)


 ただ、悪いことばかりでもない。ステータスバー(仮称)がハッキリ見えるようになっていた。それぞれの先頭と末尾に文字があることも分かった。何せ勉強する機会がないので、文字の判読はできていないが、それは追々の課題という事で良いだろう。

 孤児たちを観察した結果、おおよそ内訳も分かった。お腹を下したり、風邪をひいたり、怪我をしたりしている子は赤のステータスバーが下がるので、これが体力という認識でいいだろう。緑がスタミナや持久力に相当するようだ。行動に合わせてあがったり下がったりして、完全に尽きると動けなっている。放っておけば回復する。

 青は不明のままだ。人により多少減っているところも見る事もあるが、相関性は分からなかった。

 ということで、ステータスバー(仮称)はめでたくステータスバーに昇格した。


 そして、ステータスバーのそれぞれに余白があることも分かった。余白部分を含めたステータスバーの長さは個人差がある。

年齢が低ければ低いほど余白が大きく、年長者であれば余白部分が小さくなることから、潜在能力と仮定した。

現状で体力のある子は赤い部分が長く、体が強くいかにも体力が伸びそうな子は余白が大きい。逆に病弱で体の弱い子は赤い部分も短いし、余白も短い。言い方を変えれば才能の差といえるかもしれない。

その余白部分をどれだけ実際の能力として発揮できるかは、成長の結果という事だろう。良く寝てよく食べる、学ぶ、努力するという事だ。

(いや、人のステータスを覗くなんて下世話なスキル何の役にたつんだ・・・。その人が将来体力がつくか分かる?いや、いらないな?)


 役立つとは思えなかったが、ボンヤリしていたものがハッキリ見えるようになるなら、そのうち他に進化があるかもしれない。現状、喋る食べる寝る以外にできる努力もない。

 孤児院なら両親の二人だけの時より観察のしがいもある。コンスタンツは孤児院で人のステータスを見まくることにした。こうして、いつも人の頭の左上をジロジロ凝視する不気味な子供ができあがった。


 コンスタンツ2歳、人のステータスを見ることと、孤児院の周辺での体力づくり、そして熾烈なごはんのおかわり獲得競争にあけくれた。孤児院のご飯はまずくて薄いが、ハトの餌でもとにかく食べなくてはいけない。就活以前に、町に出るまでに疲れるようでは何もできない。

普段は人の斜め上を凝視しているし、ご飯となると食い意地がとにかく汚い。目標のためとはいえ、そう誹られても何も否定できない。

(貧困から抜ける前に、孤児院から抜けなきゃならんとは・・・。)


ハトの餌って書きましたが、公園のハトって結構いいもの食べる気もしますね。

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