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プロローグ

(おぉぉ!勝ち組決定だよ!)


温かい母の腕に抱かれて、赤ん坊は覚醒すると同時に認識した。自我がある、前世の記憶まである。


生まれたその日から頑張れるなら、きっと未来は自分の思うままだ。

前世、できなかった事をいっぱいやろう。

怠けてしまった自分をきっと克服しよう。

出会った人を大切にしたよう。

また間違うだろうし、後悔することもあるだろう。

それでもやりきったと言える人生を送るんだ。明るい未来が約束されたものだと感じ、赤ん坊は心の中で快哉を叫んだ。


といっても新生児、できることなど多くはない。もぞもぞ手足を動かし、泣く程度だ。

(まぁ、こんなもんだ。焦っても仕方ないよね。)


 しかし覚醒して1週間、気づいたことがある。母の母乳が満足に出ない。父の頬はげっそりとこけている。二人ともいつも疲れていて、苛立っている。自分を包む毛布はゴワゴワしていて、すえた油っぽい臭いがして、ところどころ穴が開いていて指が引っかかる。赤ん坊は冷や汗をかいた。

 (確実に貧しいな。控えめに言ってド貧乏。ゲーム難度設定厳し過ぎんか・・・。)


 しかし、こちとら首も座らぬ新生児である。やはりもぞもぞ手足を動かし、困りごとがあれば泣いた。泣きながらさらに気付いたことがある。父も母も、ぼんやり頭の上に左上に棒みたいなものが3本ずつ横に伸びて見える。ちょうどゲームのステータスバーのような赤と緑と青の棒。

 (おん?ゲームに転生したってことか?しかし、ボンヤリしていてハッキリ見えないなぁ。)


 赤ん坊はそのステータスバー(仮称)を見つめることにした。新生児は視力が未発達で弱いと聞いたことがあるし、そのうちハッキリ見えるようになるかもしれない。赤ん坊はそのボンヤリを見つめながら、もぞもぞ手足を動かし、泣くことにした。生まれて1月足らずでできることが増えたじゃないか、そう納得することにした。

顔ではなくすこし斜め上を凝視しながらワンワン泣く赤ん坊を、明らかに母親は不審がっていたが、かわいい我が子の明るい未来のためだ、飲み込んでもらおう。

 (ただ、人のステータスバー(仮称)て・・・役に立つか・・・これ?)



 そしから数週間、生まれて5週間。赤ん坊は両親に捨てられた。


 

 赤ん坊は泣いていた。両親に捨てられて悲しいのではない。真冬の空の下、脂っぽい毛布(おまけに臭い)一枚だ。このままでは早々に凍死する。

捨てられたと気付いた瞬間、驚きのあまりに泣くのを忘れた。泣き縋った所で捨てるのを止めてくれるとは思えないが、そこにあったチャンスを逃したと赤ん坊は全力で泣きながらさっそく後悔した。

(やばい、やばいよ!ふざけんなって!開始5週間で死亡て!)


 結局、渾身の大泣きの甲斐あって、赤ん坊はその小さい命を繋いだ。両親が孤児院の前に捨ててくれた事に感謝すべきか、ゼンデン孤児院のカルラという少女が泣き声に気付き、孤児院の中に入れてくれた。赤ん坊はゼンデン孤児院に保護されたのだ。カルラの腕は母に比べればずいぶん頼りなく細かったが、柔らかく優しかった。


優しい腕の中、赤ん坊は両親のこと少しだけ思い出した。もう会うこともないだろう。名前も知らない。捨てられた時、茫然としていてどんな表情をしていたかも覚えていない。生後間もない赤ん坊を真冬の外に放置するなど下手をせずとも死んでしまう。ひどい仕打ちだ。でも、きっと彼らは望んで自分を捨てたのではないと思おう。彼らに差し迫る現実が今日の日のように厳しく冷たいものだったのだ。

(ただまぁ、もしもう一度会えるなら全力でぶん殴る。)


赤ん坊はコンスタンツと名付けられた。孤児院の院長が過去にいた孤児の名前から適当につけたらしい。もしかしたら両親がつけた名前もあったかもしれないが、もはやそれを知る術はない。


赤ちゃんがムズムズ動くのは筋トレなのだそうです。

著者は米を買って帰るだけで余裕で筋肉痛になるわけですが、当然それがやってくるまでに3~4日の時間的猶予が必要であり、その前に熱を出します。生命力がやばい。

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