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だから僕は君に片思いをする  作者: 江戸 清水
201X年
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元夫婦のしがらみ

 ひろの体調は良く、検査結果も問題なし。私は今、普通であること、ただ恋をした人が毎日目の前にいる幸せを噛み締めている。


 高校の頃、幸せってなんだろう。自分は不幸なんじゃないかなんて思ったりした。だけど私は全然不幸なんかじゃなかった。夢を追っても何一つ上手く行かず才能の無さに嘆いた日々もあったけど、そんな一日一日って振り返れば何にも無駄じゃなかった。

 ひろ、あなたが居るからそう思える。


「帆乃花、そろそろ本気でさ」

「本気で?何?」


 ひろは、思わせぶりに溜めて口を噤む。なに?すっかりひろの本質だか、いじわるぶった話し方が板についたようで、度々私は振り回されている。それは何よりの喜びだったりする。


「奄美大島!行く?」

「なんだ……奄美」

「なに?何を期待したの?帆乃花」

「あっいじわる!」

「ふっ可愛いな帆乃花は」


 こんな、朝っぱらにパジャマでプロポーズするわけ無いだろと言わんばかりの顔。まだまだ結婚なんて先だとひろは思っているのかもしれない。

 私はおとなしく従うつもり。今でも、まだでも、いつでも……いつまでも。


 奈々は、結局、実刑判決がでそうだ。殺意があったと本人が認めた。私は本気で殺されそうだったんだ……と改めて怖くなった。同類だとしても辛うじての元夫婦の情があったからか、卓也が止めてくれたのは不幸中の幸いかも知れない。


「帰り迎えにいくね」

「うん。帰りにスーパー行こう」


 ひろは在宅ワーク、私は仕事へと向かった。



 ◇



「すいません (さかき) 帆乃花さんですか?」

 仕事場の近くで、声をかけてきたスーツ姿の男性。もしかしたらまた警察の方かと私は返事をする。


「はい。そうですが」


 次の瞬間隣に止まっていた車から人が降りてきて私はその車へと乗せられた。


「離してください!!」

「ごめんなさいね。倉持を呼ぶためだからちょっと我慢してね」

「…………」


 手足を縛られ口にテープを貼られる。一人がスマホで撮影を始めた。

 涙だけが流れる。どうしてまたこんなことに……ひろ……ひろ


 男のスマホが鳴りビデオ通話になる。私を映し、向こうには卓也が映っていた。


「おーいっ倉持 飛ぶ気か?!金の回収もできねぇで、何してんだ!!」


『帆乃花……帆乃花か?』

 卓也の声もいつもの調子は無く怯えて力が無い。それを見たらより恐怖が増す。


「ああ そーだよ。てめえ呼ぶにはこれしか無いからな。言っとくがこのまま逃げて、最近てめえの周りうろうろしてる刑事にたれこめば、この子……死ぬよ?」


『や やめてください それだけは……やめてください』


「じゃあどーすんだよ?てめえ分とりあえず三百持って夜八時までにこっち来い。来なかったらこの子消して次はてめえの親だ。分かったな?」


『……はい、あの絶対何もしないでください』


「場所は後から知らせっから」


『はい……帆乃花 ほの』


 通話は切られた。


 どうしよう……。あ、職場に休む連絡入れろと言われたら……?あと十分経てば職場は連絡してくる。つながらなければ、親かひろに連絡がいく。それから……警察に……でも車が移動していたら分からなくなるんじゃ。ひろ……。私はあなたと居たいのに……ただあなたと居たいのに。絶対に……死にたくない。

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― 新着の感想 ―
[一言] あの卓也とかいうクソッタレ殺人鬼め…どこまでひろと帆乃花に薄汚い悪意を撒き散らす気なんだ!? ひろ、急げェ!
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