〈短編〉ステータスを開くだけの無能と追放された宮廷鑑定士【透視スキル】でダンジョン攻略
「勇者候補生たちにステータスの鑑定は不要。また、魔王討伐クエストの説明は、我ら召喚士が今日からおこなう。お前はクビだ」
「え、今なんていったの?」
聞きまちがいだと思った。
「おいおいおい。俺は宮廷鑑定士だぞ。王様にも認められてるっての」
これは国家資格。分かる?
それに、ステータス画面を見ずして、冒険者の冒険ははじまらないんだぞ?
俺はゲームのチュートリアルでいうところの案内人なんだ。
自覚はなかったけど、召喚されて出てきた日本人にそう言われたことがある。
「クラン・アメルメ・ルシリヴァン。本日をもって解雇する。ここにあるのが王の署名だ」
羊皮紙に記載されているのはまちがいなく、俺のフルネーム。
王様の字。そして字がめっちゃきれい! だが美しい字面で、これまたガキみたいな内容を……。
『汝は、クビ。宮廷鑑定士、クラン・アメルメ・ルシリヴァン。さよならー。二度とくるなよー』
くそ王様め! お情けってもんはないのか!
俺はこの職業を神様からもらったと思ってるんだぞ! この職は、まさに俺にぴったり!
俺のほかにできる人はいない!
「召喚士師範パエラ・ボルバック様」
フルネームで呼ばれたから、フルネームで聞きかえすのが礼儀だよな。
俺のことにむっとしているパエラ様。
女性で身長が高い。金髪のポニーテール。かりに騎士と名乗ってもとおる。うん、かっこいい。ひきしまった体。実際、召喚士師範ともなれば、戦場の最前線に出たこともあるはずだ。
「お言葉ですが、ほら、うしろでたった今、召喚された勇者候補たちが困惑してるぞ」
ここは宮廷の地下、召喚の間。
大理石の床。青白い光を放つ魔法陣。音もなく消える。代わりに現れたのは少年少女。三十名。勇者候補となる冒険者たちだ。
異世界、日本というところからやってくるらしい。
くわしいことは、召喚士に聞かないとわからないが。
俺はそいつらに、ステータスオープンのやり方を教える。
これが宮廷鑑定士という職業。三年目のベテランになる。
この職業、できたてほやほやで、新しい。宮廷では採用されたの俺だけ。町では宝石商とかが、同じスキルを持ってるけど。俺は給料のいい宮廷で働きたかったから。
「こら待ちなさい」
俺はいつも通りに勇者候補たちを集める。俺がいなくなったらこいつらが困るだろう。
「ステータスオープン」
失礼ながら胸をおさわりします。
女の子でも、さわります。うわ、小さい。
スィン! と画面が出ましたねと。勇者候補たちから「おお」っと声があがる。
「はい、ハナコちゃん」
「ハナです」
「そこ古いとか笑ってごまかしてよ。これやると毎回うけるのに」
異世界人は、俺のジョークなんかよりステータス画面に夢中だ。ざわめきが心地よい。ハナちゃんのステータスぐらいで感動すんな。だめだぞ。これは、異常に低すぎる。
「静かにしないと教えてやれないぞ。ほら、レベル22。低いね。攻撃力40。低い低い。でも、女子にしてはあるってことで。裏ステータスも見とこうかな」
指でつまんでひっくり返す。
これは教えてやっても、できる人いないんだけど。
俺固有の【透視スキル】の一つ【裏ステータスオープン】は俺しか使えない。
「うん、握力18。低いね。原因はこれだな。握力18」
次に男も見てみよう。男の胸にさわっても、なにも面白いことないけど。
「ステータスオープン。コウタくん。けっこうふつうの名前。コウザブロウとかの方が好きなんだけど。え、冗談じゃない? ま、いっか。お、レベル398来ました! 三桁来ました!」
俺は拍手する。すると、勇者候補生たちもつられて拍手する。
「おめでとう。攻撃力799いいね。防御力も問題ないし。魔力ちょっと低いけど。固有スキルは【魅了……特に女を】? 大丈夫心配するな。黙っててやる」
これらのデータを紙にまとめて。旅に出る前には俺が手とり足とり、冒険について教えてやるんだ。
「勝手なことは許さないぞ。クラン」
割って入ってきたのは、召喚士の一人ドリアン。
「なんだよ。俺がいなくなったら、こいつらパニックになって逃げだすぞ。お前ら召喚士は、召喚しただけで、いつも汗だくじゃんか」
「口をつつしめ。誰もが王に認められてここで、つとめているのだ! ここは実力がものをいう場所だ。近頃のお前ときたら、冒険者たちに意味の分からない裏ステータスの説明をするだけじゃないか」
「え? 裏ステータスには意味があるぞ」
「少なくとも冒険者たち本人は、開くことができない。裏ステータスなど無意味で無価値だ。それに、お前はくだらない冗談ばかりを話して、時間を浪費している。召喚の間は、本来お前のような、無能が授業をする場所ではない」
えええ、いくらなんでも言いすぎだろ。お前、今年入ってきた新入りのくせに。新入生はひっこんでろよ。俺は古株だぞ。
面食らっていると、パエラがとどめのように言い放った。
「クラン、今日の召喚が終わったので、今日はこれで帰ってもらおう」
「まだ、二十八人の鑑定してないけど……」
「これはもう、議会で決定したことだ。我がネリリアン国は、財政赤字だ。ダンジョンの奥にいる魔王討伐のために、冒険者を送り続けて三年になる」
「はいはい、そうでしたね。でも俺のお給料はどうなるんです?」
宮廷鑑定士になるために、どれだけがんばったと思ってる?
勉強が苦手だったから面接の熱意で突破した。
魔力も並みだから戦闘の実技試験では、ぎりぎりだったし。
だいたい鑑定士は戦闘に出ないのに、実技試験があるのがおかしいよな。
でも、念願の仕事だったから。
絶対に手放したくない。
ここをはなれたくない。
それに、給料。最前線で戦う騎士団と違って安月給だけどさ。
それでも、下町で恋愛占鑑定士として占いをやるより絶対にいい。
道で座って待ってても、男の占い師ってだけで気持ちわるがられるし。俺だって男に恋愛事情に口だしされたくないもん。
「とにかく稼がないといけないんだよ」
俺には幼馴染のステフがいる。
獣人ってだけで多くの人に嫌われている。
狼の獣人の一つ年下の少女だ。狼だから怖がられるし、あいつの加入できるギルドは限られる。
入れたのは人外をとりまとめる鳥蛇ギルドだけだ。
給料はほかのギルドの半分以下だと聞いた。俺があいつの分まで稼いでやらないと。
ギルドのやつら、狼だからそのへんの野生動物でも殺して、食っていれば死なないと本気で思っていやがるからな。
「自分の食いぶちは、自分で探すことだ。もしかしてあの狼の女のため? 自分の身の心配をした方がいいと思うわ」
現在、長編化して投稿できるように執筆中です。
3月7日投稿予定です!!!
https://ncode.syosetu.com/n4089gu/
今、7万文字ぐらいまで書けていますが、投稿するのには自信がないのでもう少しお待ちください。
そんたくない、みなさまのご意見、ご感想をお待ちしております! 今ならまだ加筆修正できます!
どうか、辛口でもかまいませんので少しでも気になったところがあればコメントお願いいたします。
もう、バシバシ叩いちゃってください! こんなクズ主人公書きやがってとか、タイトルへたくそとか、あらすじへたくそとか、フルボッコ、ウェルカムです。(ちょ、長編ではやめてね。参考にして改善していくから)