表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
間隙の恋  作者: 吉祥天天
第一章
1/30

1 憂鬱な朝

初投稿ですがよろしくお願いします。


*この物語はフィクションです。

*登場する会社等の名称、仕事内容や世界観など、全て実在のものとは無関係であり、作者の想像上の産物ですのでご了承下さい。


 ホームから電車の発車音が聞こえてきた。

 毎朝乗っている7時38分のに違いない。

 普段なら残りの階段を急いで駆け上がって滑り込み、セーフのタイミングだ。

 だけど今朝に限っては急ぐ気にならない。



 一段一段足を上げるのも億劫だ。

 この電車はやり過ごそう。

 なんならホームに上がらず引き返して会社に行かない選択肢を選びたいがダメなのだ。

 ああ、今日で無ければ良かったのに!



 我が社で花形部署と謳われるのが私の所属する企画部だ。

 その部内で毎月第一月曜日に開かれるのが月例報告会。

 この報告会、朝九時から始まって丸一日掛けて部長に各テーマの責任者が進捗状況を報告し検討する会なのだが、時には社長自ら足を運んだり、広報のカメラが入ったりと大変盛況で毎回注目を集めている報告会なのだ。

 主にというか殆どを一課のテーマで占められていて、二課は最後の方におまけのような扱いだが、入社して二課で二年目、折角自分のテーマで十分貰ったのだ。

 この機会を逃すなんて悔しすぎる。

 私は走り去る通勤電車を見送り、四分後に来る次の電車を待つ間、何度も溜め息を堪えた。



 花形部署と名高い企画部だが、その場合企画部一課を指して評されている。

 綺羅星のごとき将来有望で優秀な若手社員を多く配し、それらが新規・大規模プロジェクトの企画関与に日々しのぎを削っている。

 その中で特に今目立つ存在として、若手のエース級ツートップとも言われているのが私より三年先輩になる乾さんと倉吉さんだ。

 同期入社の彼ら二人は、精鋭ぞろいの一課の中でも頭一つ二つ飛び抜けた存在で、入社一年目から積極的に提案し任されて経験を積むと共に、それ以上の成果を上げてきたと聞いている。

 更には低俗ながら女子社員の間で密かに行われている『社内男前総選挙』では、この二人に秘書課の沢内さんを加えて三羽ガラスとも、営業部の小松原さんも加えて四天王とも呼ばれ、毎年上位に君臨しているほど、その人気は不動のものだった。

 そしてそして、私の今朝の憂鬱の原因がーーーーその内の一人である倉吉さんなのだ。



 一課と違い、私が所属する企画部二課は、定番物や一課から回ってきた整理・終了案件を扱う地味な存在だ。

 そんな中、昨年より業務の合間に定年間近の松澤さんと地道にコツコツ調査し温めていたテーマが主任に認知され、話題の提供として報告会に出してみろと言われたのが先週の頭だった。

 連日通常業務を終えた後に、これまでのデータを再調査して修正し、パワポの出来映えに一喜一憂しながら、松澤さんの指導の下、十分きっかりに纏めて話す練習もして、さあやるぞ、と前途洋々意気込んで企画部を後にしたのは週末金曜日の午後七時だったーーーー。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ