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5.数年振りの再会

ここからはまたクレトたちの話です。こちらがある程度進みましたらまたヴォルフ視点を挟みたいと思います。

けっこうゆっくり目に話が進む予定ですのでお付き合いしていただけると嬉しいです。

 レッドリオを出発して5日後に王都カブルードが見えてきから予定よりも2日早い計算だ。特にこれといったトラブルが起きなかったのも一つの要因だと言えるが、一番はノワールの筋力、体力面の向上が大きかった。


「王都が見えてきたからサフィは擬人化をといてくれ」

『…これでよいか?』

「あぁそれじゃああの長い列に並ぶか…」


 この国――カラフルーマの王都周辺にはSランクダンジョンが1つ、Aランクダンジョンが2つ、BとCランクダンジョンも数個ありその恩恵を得るため多くの人が集まっている。ランクを問わず冒険者にとってはいい拠点となり、Sランクダンジョン――スクディンは未制覇ダンジョンだけでなく、宝石関連のドロップが多いことでも有名だ。

 しかしダンジョンが多くあると利益だけでなくリスクも高まってしまう。もしスタンピードが同時発生した場合王都崩壊の可能性が非常に高くなるためダンジョンは国が管理し、無断での立ち入りは禁止され定期的に騎士がダンジョン内を調べている。そして王都の城壁は強固かつ巨大な造りとなっておりダンジョンに備えた態勢が施されていると言える。そこまでの費用を国が賄うには多額なため王都住民には少額のダンジョン税が課されている。過去の文献にスタンピードで相当な被害が出た事例があり、住民からの反発はない。

 ―閑話休題―


『人が多いな…』

『王都じゃからの。ずっと待ち続けるのは退屈じゃぞ…』

『こればっかりはどうしようもない』

『私の上で寝る?』


 口に出して喋ると視線が煩わしいので意志疎通で会話をしている。従魔の上に乗ってると悪目立ちもするので降りて並んでいるが、ノワールはサフィほど並ぶことに嫌気がさしてないようだ。


『ならばお言葉に甘えるぞ。妾はしばし寝る』

『入場が近づいたら起こすからな』


 ――――ようやく俺たちの番が来て身分証の提示と従魔に関する注意を受け入場が許された。この数分のために一体何時間待ったことか。


『先に宿屋を確保しに行くが、二人はどっちの姿で過ごす?』

『従魔小屋は寝にくいのじゃ…だから人の姿で泊まりたいぞ』

『私も同じかな』

『なら人気のない所に行くか』


 大通りから離れて擬人化を使用するが、相変わらずメイド服で人目を引きそうだ。


「そう言えばサフィは王都に来るの初めてだよな?ノワールは覚えてるか?」

「その通りじゃ。レッドリオと比べると人も建物をすごいぞ」

「もちろん!」


 軽い雑談を交えながら過去に宿泊した宿屋を目指す。…やはり二人は目立つのか視線が突き刺さる。


「お忍び貴族か?でもメイド連れとか隠す気無いのか?」

「めっちゃ美人だな。うらやましいこったなぁ」


 こそこそと邪推されるがそんなご身分ではない。美人なのは共感できるがな!


「部屋がとれたら次はギルドに行って二人のステータスカードを作ろうと思う。それがあれば人の姿でも不便がないからな」

「それは助かるの」

「私はお腹空いたな…」


 ノワールはぶれないな…。でも入場待ちが長かったせいでもうじきお昼だ。


「これから行く木漏れ日亭は宿と食事処を兼任してるから、部屋を確保したら昼食にするか」

「ッ!!ご主人様早くいこ!」

「わかったから引っ張るな」


 現金なやつだなぁ。サフィもお腹が空いてるのか場所を知らないのに先頭を歩いている。

 逸る二人を宥めながら歩いてると目的地に着いた。


 三階建ての建物で中は清潔感があり、食事も美味しいと人気な宿屋だったと記憶している。また冒険者ギルドが近いのも魅力の一つである。


「三人部屋って空いてますか?とりあえず一週間の宿泊希望です」

「申し訳ございません。現在二人部屋しか空いていない状況でして…」


 これは困った…他の宿屋を探すにしてもここ以外は知らないからな。予定を変更してギルドを先にして、何処かオススメの宿屋でも聞いてみるか。


「主よ別に妾たちはそこでよいぞ。ノワールと一緒に寝ればすむ話じゃ」

「私もそれでいいよ。……私とご主人様が一緒でもいいけど?」


 二人がいいならここにするか……小声だったからいいものの、レッドリオの宿屋で一悶着あったのを忘れたのか?大変魅力的ではあるのだが――。


「なら二人部屋を一週間でお願いします。あと今すぐ食事することはできますか?」

「ありがとうございます。はい大丈夫です。空いてるテーブルにてご注文を承ります」


 無事に?部屋は確保できたのでよしとする。お腹が空いていたので多めに注文をした。


「これからの予定を話すけど、二人も冒険者として登録をしてもらいランクを上げてもらうが、これについては俺も該当する。Aランクパーティーを追放された今、俺個人はCランクしかない。Sランクダンジョンを攻略するためにはAランク以上の資格がないと、そもそもダンジョンに入ることができん。ここまでで何か質問はあるか?」

「妾たちのランクはなんじゃ?」

「最低のFランクだな。でも四人パーティーまでであれば、一番高い人のランクがパーティーランクとなる。そのランクと同等以下のダンジョンなら入ることが出来る、つまりはCランクダンジョンから順に制覇してランクを上げていくってことだ」


 さすがにBランクダンジョンからは、パーティーメンバー全員のランクがC以上ないとダメだけど。王都周辺のAランク以下のダンジョンは制覇済みなため、地図や魔物の情報があるので何とかなるとは思っているが、二人の実力は未知数だからな…。


「つまりいっぱい稼いで美味しいごはんを食べるってことだね!」

「本当ノワールはぶれないな…」

「Sランクダンジョン攻略は時間がかかりそうじゃな」

「まぁしゃーない。決まりには逆らえんからな。お!ようやくきた、とりあえずは腹ごしらえだ」


 頼み過ぎたかと思ったが、ノワールのおかげで残すことはなかったがその体型でよくそれだけの物が入るな。食べ終わったので次は冒険者ギルドへと向かう。


 王都のギルドは四階建てで、他の建物よりも頭一つ分大きいので見つけるのは簡単だ。

 中も広く多くの冒険者がいる。ダンジョン内は外の時間帯と連動していないので昼過ぎだろうが人は多い。それでも多くの人は朝から攻略して夜には寝るが、ダンジョン内での魔物の取り合いや諍いを避けるために、深夜に攻略する変わり者もいるためギルドは24時間運営している。


 ここでも二人の容姿と恰好が目立ったいるな……冒険者にメイド服はどうかと思うので、登録が終ったら王都散策のついでに服屋にでも寄ろう。


「おいてめぇら、なんだその恰好は?冒険者をなめてんじゃねーぞ!ガキはママにでも遊んでもらえ」

「…()れ者がその汚い口を閉じろ」

「何だと!?ちょっと面がいいからって調子乗ってんじゃねぇ」


 おいぃぃ何でそんな喧嘩腰なんだよ!…決して誉め言葉ではないぞノワール。わざと相手を煽っている……わけではなさそうだな。食いしん坊で小悪魔、その上天然って属性多すぎじゃないですか?


「弱い犬ほどよく吠えるとは其方(そなた)にお似合いな言葉じゃ」

「ふざけんな!痛い目見る前に謝罪するなら迷惑料だけで許してやる!」

「全くこれだから凡愚は困るのじゃ」

「もう我慢ならねぇ…後悔しても遅いからな!」


 さすがにまずい……サフィよりも相手の方だが。今は人の姿をしているが彼女はドラゴンだ。並大抵の相手では太刀打ちできないし力加減を間違えたら無事では済まない。だか俺の心配を余所にダンスでも踊っているかの様な足さばきで攻撃を避け、お返しと言わんばかりに腹パンを決めた。流れるような一撃に思わず見惚れてしまったが、服を引かれ我に返る。

 うまく手加減がされていたのか、相手は(うずくま)りながらも未だ闘志溢れる目でサフィを睨んでいた。


「ほう手加減したとは言え意識があるとは中々じゃ。これ以上痛い目見る前に謝罪するなら許してやるぞ」

「くぅ…舐めん…じゃ……ね…ぇ…」


 辛うじて意識を保っていたが限界だったみたいだ。傍観者たちもようやく事態に追いつき職員は担架を準備して―――医務室でも運び込むのだろう。


「今の一撃見えたか?やばくねぇかあの女…」

「いや躱したと思ったら相手が倒れていた。何者なんだあいつらは?」

「…素敵!!お姉様のお名前は!?」

「あぁ…罵られながら踏まれたい…!!」


 ん?変な言葉が聞こえたが気のせいか?まさかサフィが好戦的だとは思わなかった。


「あそこまでやる必要はあったのか?」

「つい主を馬鹿にされてカッとなっただけじゃ…」

「…俺のために怒ってくれたのは素直に嬉しいが穏便にことを済ましてくれ」

「力を見せつければ同じ様な輩への牽制になるじゃろ?」

「ねぇ早く登録しよ?」


 まぁたしかに一理あるが問題事へ発展する前に止めてほしいものだ。いや俺が止めるべきだったな……そして毎度のことながら、ノワールさんにはこの状況が見えてないのか?転がっているのは路肩の石ころじゃないからな。これ以上の問題事が起きる前に本来の目的へと動き出す。


「二人の冒険者登録をお願いします」

「あ、はい。畏まりました。………クレト君?」

「え?―――ルミアさん?」


 数年ぶりで一瞬誰か分からなかった。まさかこんな所で再会するとは――。

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