51.ニンヘルダンジョン②
大変お待たせしました…。
2階層は案の定荒野だった。1階層と景色が変わってないため後ろの階段を見てここが2階層だと実感できた。それくらい代わり映えしない景色だ。
「このまま進むか?それとも少し休むか?」
『まだまだ余裕だよ!』
「なら水分だけ取って先に行こうか。次は真ん中からでいいか?」
「よいのではないか?」
『いいよ~』
今更だけど荒野は意外と暑くはない。しかし砂埃が肌につきその所為で水分が奪われるし、ベタベタして気持ち悪い。ノワールの綺麗な毛並みもゴワゴワしている所もあり――――本人に言うと間違いなく傷つくので言わないけど、てか言えない…。一度帰還したらブラッシングをしてやろう。
おっと話が逸れてしまったが二人にも水筒を渡してしっかりと水分補給を行う。ノワールは狼状態だと飲みにくいと言われ、擬人化を使ってから飲んでいる。すっかり人に慣れてしまっている証拠だなと、ダンジョン内にも関わらずホッコリとした気分になった。
「よしっ、小休憩もとれたし攻略を再開しようか!」
「役割は先程と同じでよいか?」
『はぁ~い!』
サフィにそうだと返事をして、いつの間にか黒狼になっているノワールの背に乗って攻略をスタートさせる。
その後はマッピングをしながら2階層を進み、時折宝箱を見つけるが一向に魔物は現れない。魔物が出現しないダンジョンは不気味に思えて仕方ない。心当たりがなくもないが、注意深く攻略を進めて行こう。
「そろそろ日が落ちる時間帯か?」
1階層よりも攻略に時間を費やしているが未だ3階層へ続く階段は見つかっていない。正午から攻略を開始していて俺の腹時計が間違っていなければ、それくらいの時間だろう。
「そうじゃな。多少お腹が減ってはきたの」
『私もお腹空いたよぉ~』
どうやら二人もお腹が空いているらしく、ちょうどいいやと思い夕食をとることにしてその準備を始める。
と言ってもアイテムボックスから調理済みの料理を出すだけなのだが。その前にテントを設営し体についた砂を落とし、濡れたタオルで体を拭く。
「風呂にでも入ってサッパリしたいの」
「うぅ~砂で髪がごわごわだよ…」
二人も砂埃にまいっているのか気分が落ち込んでいるようだ。黒狼から擬人化を使い人間に戻っても砂埃が無くなる訳ではないようだ。もしサフィがドラゴンでいたら龍鱗の間に砂がたまるのだろうか?そもそも砂が入る隙間があるのだろうか?
「どうしたのじゃ?」
「いや、何でもない。夕食をとったらゆっくり休もうか」
今日の攻略はこれで終わりであとは寝るだけだが、魔物と遭遇をしていないからといって見張りを怠ることはしない。サフィ、俺、ノワールの順でどうかと訊いたが特に反対意見はでなかった。
ダンジョン内なので特にやることもないので、夕食後に軽く雑談を交え寝ることにした。
夜営や見張りにもだいぶ慣れてきたのもあって特に何事もなくなく朝をむかえた。テント内で寝ている二人を起こし朝食を取り次第攻略に取り掛かる。
昨日と打って変わって魔物の襲撃があることもなく、依然として現れていない。見飽きた景色のせいで緊張感が欠けてくるが罠の類いには十分警戒をし攻略をしているが、どうしても気が緩んでしまう。
「主よ見えてきたぞ」
そこへサフィの声がかかるが、声音からして危険が迫っている訳でないように感じた。砂埃の所為で視界不良かつサフィと比べると明らかに視力は低いため俺には何も見えない。
だがノワールには見えたのか気持ち足取りが速くなっている様に感じ取れる。
「お!漸く発見したな」
進むに連れて俺にもサフィが伝えたい事がわかり、2階層にきて幾分か時間が経ちやっと3階層へ繋がる階段が見つかったが―――
「残念ながらここにも転移ポイントはなかったな」
「妾はまだまだ余裕ぞ?」
『お風呂が恋しい…』
まだ一夜しかダンジョン内で過ごしていないがノワールに同意だ。サフィはまだ余裕がありそうだが、ノワールのやる気が下がってきているのは少し心配ではある。いつ転移ポイントが見つかるかわからないため自力で戻る引き際を間違えないようにしないといけない。
「早いとこ攻略を進めて転移ポイントを探そう。もし10階層に到達しても見つからなかったらその時は戻ることも視野に入れよう」
「ならばその際は妾の奥の手を見せてやるぞ」
サフィの奥の手って何だ?ブレスは前に見たし、ダンジョンで効果を発揮する力なのは間違いないはずだが見当もつかないな。
つい気になって訝しんで見ているとサフィと目が合い、ニヤリと口元を歪めていた。どうやらその時がくるまでは秘密にしたいようだ。
「3階層も頼むな」
『うんっ!』
未だに誰とも遭遇していないのも気がかりではあるが、目に見えて危険がある訳でもないため気を取り直してこれまで通りに攻略を進めていこう。
今回は区切りの都合で短いですが、次話はもっと早くに投稿できるように頑張ります。