39.タドリングを観光
少しずつ話数が増え、自分自身見直す際にタイトルがないと不便だと今更ながら感じ、昼時にタイトルをつけました。
タドリングは活気溢れる街といった印象を受けた。屋台が多く連なり、人の行き交いが活発であるためそう感じられる。王都では見慣れない食べ物や料理、魔道具など見ているだけで楽しい。ルミアとも一緒に巡りたかったけど、仕事がある所為で残念ながら来れなかった。
現在はサフィとノワールと一緒にぶらぶらして、気になった物があれば立ち寄り、時折買ったりしている。
「主よ次はあっちに行くぞ」
「えぇ~こっちの方がよくない?」
狙われている可能性があるってのに、存分に観光を楽しんでいるし。最近は緊張の糸を張りっぱなしだったからその反動だとは思う。それでも羽目をはずし過ぎではなかろうか。
「なんじゃ妾たちとのデートがつまらんのか?」
「疲れてるの?」
表現に出ていたのかそんな指摘をうけてしまった。別に楽しくない訳ではなく、どうしても周囲が気になってしまう。
「いつ襲われるか気が気でなくてな」
「主は心配しすぎじゃ。妾とノワールがいれば怪しい輩には気づくぞ」
「そうそう!だから私たちに任せて存分に楽しもう!」
「そうか…ならもう少し気を抜いて楽しむことにするよ。そんで行くならあっちがいいな!」
二人に甘える形になってしまうものの、内心では初めて訪れた街の観光を楽しみにしていた。
自分が選ばれなくて残念がっているノワールには悪いけど、時間があればそっち方面も回ろう。
「ふぅーいっぱい歩いて疲れたな」
「見る物が新鮮で、時間が経つのがあっという間じゃったの」
「ダンジョン制覇が終わったら四人で回ろうね!今度は私の行きたい所を巡りたい」
「一日じゃ到底全てを見ることは不可能だったからな」
宿屋に帰りゆったりと今日の出来事を振り返っていた。当然ながら、と言ったら語弊が生まれそうだけど俺たちは同じ部屋で泊まる。一緒の部屋は慣れたとはいえ従業員の獣を見るかのような眼差しだけは慣れない。100%誤解だって言おうとするも、納得しないだろうと思い甘んじて受け入れている。
コンコンコンとノックされ入口に近いノワールが声をかける。
「誰ですかぁ~?」
「あぁーわい、エーガや。クレトに用があるんやけどいるか?」
訪ねて来たのはエーガらしくベッドから立ち上がり扉を開ける。
「急にどうした?もしかして夕食は皆でとる感じか?」
「いやそうじゃない……でも半分正解かぁ?リーダーだけで話したいからってキースが呼んでるんや。ついでに夕食でもどうやって言ってる」
「うーん…分かった。場所は一階の食堂か?」
「そうや、一緒に行くか」
二人に向き直ると視線でどうぞって言われたためキースの誘いを受けることにした。
「悪いが先に食べてるから、適当な時間になったら二人も下に降りて食べててくれ」
「「承知した(わかった)」」
エーガと共に食堂へ降りると既にテーブルにはキースが座っていた。俺たちも空いているイスに座り、適当に飲み物と食事を頼んだ。
「集まってもらいありがとうございます。夕方前にギルドに依頼の確認へ行ったらBランクの冒険者パーティーが受けてくれるそうです。よって我々は馬車で国境まで行けることになりました」
「すぐに受けてくれる人がいてよかったぁ」
「歩いていくには多少距離があるしな」
もし歩きならノワールに乗せてもらおうと思っていたのは内緒だ。運ばれてきた料理に舌鼓を打ちながら話を続ける。
「最終確認ですが我々はニンヘルダンジョンの制覇が求められています。しかし各パーティー事に依頼料とは別に成功報酬が用意されているため、連携して攻略する事はありません。ですが、あくまでも我々が先に制覇する必要があるため、ダンジョン内での情報共有はある程度行おうと思っています。例えば出現する魔物や罠などについては共有して、地図の開示などは各パーティーの判断に委ねるといった感じで考えています」
「いいんじゃないかぁ?わいは賛成や」
「俺も異論はない」
俺たちにとっては初めての未制覇ダンジョン攻略となる。サフィとノワールがいるから内心有利だとは思っているけど、何が起きるかわからないのがダンジョンだ。特に懸念している罠についてはむしろ教えてくれるのは有難い。
「ではそういう事でお願いします。次にもし怪我や何らかの理由で攻略が不可能になった場合は依頼の破棄は認められるそうです。ただこの場合再度攻略に参加は不可能との伝言をギルドマスターから受け取りました」
詳しく聞けば国境と王城を繋ぐ通信用魔道具と似たような魔道具がギルド間で繋がっているそうだ。それを使って俺たちの誰かが来たら教えるようにギルド職員へ通達されていたらしい。
「やはり帝国には不穏な動きが見受けられるため十分に警戒して攻略に当たってほしいとの事です。もし自分達で判断がつかないことがあれば国境警備隊に事情を説明すれば、通信用魔道具で連絡をして欲しいとも言われました」
「ダンジョン内では要注意やなぁ。わいらみたいな冒険者か帝国騎士かは不明やけど悪どい奴が来ないといいなぁ」
「魔物や罠だけでなく帝国にも注意を払うのは大変だな。ダンジョンくらい正々堂々挑んでもらいたいものだ」
全くだ、と二人も同じ気持ちのようだ。他にも軽く内容を話し合い、明日の早朝は遅刻しないようにと言われ解散となった。みんな同じ宿屋で泊まるか寝坊しても最悪誰かが起こしてくれるだろうが、それに頼ることなく起きることを心がける。
三人で話し合っている最中にサフィとノワールの二人も夕食を食べていたのを横目で見ていたので、今は部屋で休んでいるはずだ。
部屋へと戻ると案の定二人はベッドで休んでいた。ほんのり髪が湿っているように見えるためお風呂にも入ったのだろう。ギルドが手配してくれた宿屋だけあって中は綺麗だし各部屋にお風呂が備わっていた。
二人に声をかけ、俺もお風呂へと入ることにした。久しぶりに入れたのできもちいつもより長風呂をした。その後睡眠準備も済ませたので明日に備えて早く寝よう――――
「さて主よ、昼間ルミアにしたことを妾たちにもしてくれるかの?」
「平等に接しないと拗ねちゃうよ?」
毎度のことながらすんなりとは寝れそうにないみたいだ。どちらが先にやるかと言い争が始まったものの、どうやらサフィが先と決まったみたいだ。
そっと二人の唇が触れ抱き締め、応えるようにサフィも背中に手を回してきた。未だ恥ずかしいため目を閉じているけど、無言の圧力を感じるためきっと横でノワールが見てるのだろう。満足してくれたのか、腕の力が抜け視線が合う。頭を撫でてノワールへと向き合う。
お待たせと一言告げノワールとも唇を重ねる。待たせ過ぎたのかサフィよりも力強く抱き締め返してきて少し苦しかった。唇が離れるとノワールは舌舐りして、不意にドキッとされた。悟られたのか妖艶な笑みを浮かべる。
「ふふふこれからは毎日してほしいね!」
「そうじゃな、妾もそう思うぞ」
「…善処する」
気恥ずかしくなり布団で顔を隠す。これから寝るってのにドキドキしてすぐには眠れなさそうだ――――
ノワールだってやる時はやるんです!決して深い意味ではありませんよ?
制覇まではお預けですし、抜け駆けはルミアに怒られてしまいます!