32.原因究明
本日2話目です。
その後各パーティーの斥候担当が周囲を調査しにいった。とはいっては街道のど真ん中で少し先に森が見えるだけだ。仮に森からゴブリンが溢れたのであれば森の中に集落が形成されていることになる。
サフィには空から一帯を俯瞰してもらいダンジョンの有無を確認してもらう。森の中は嗅覚に自信のあるノワールと斥候担当のメンバーか分担して調べてる。残った俺たちはゴブリンの後処理だ。魔石を剥ぎ取っても微々たるお金だし何より手間がかかる。サフィの一撃でほとんどは跡形もなくなったが、それでも多くの死骸が残っている。アイテムボックスがあるから荷物が嵩張ることはないけど、如何せん面倒くさい。ダンジョン攻略の期日に遅れるとさすがにやばいので街道に被害が出ないように穴を掘っての処理と、火魔法で処理をしてもらっている。
数十分かけてようやく終わった。やはり高ランク冒険者は魔法の威力、規模が共に違うため早く終わったのだ。タイミングよく調査をしていたメンバーが帰還し、少ししてサフィも戻ってきた。一旦皆で集まり情報を共有することとなった。
「まず森の調査を報告するし。いたって森は正常で集落が形成された形跡はなかったし。魔物の数も異常は見られなかったし」
「私も血生臭い匂いはしなかったよ」
代表としてイリーカとノワールが報告をしてくれた。内容を聞いた限り森が原因ではないってことだが、そうなるとこのゴブリンは何処から生まれてやってきたのかの説明がつかない。となるとダンジョンが原因かと思いサフィに視線を向けると―――
「上空から見た感じダンジョンは見当たらなかった。ゴブリン共が移動したら冒険者が気づくと思うのじゃが、特に冒険者の数も多くはなかったの」
「つまり原因は不明ですか…」
「先を急がないかんからよぉ、次の街にあるギルトに報告だけしておく進むぞ」
この一団のリーダーはエーガだ。エーガの決定に異論は出なかったので俺たちは先を行くことになり、次に立ち寄るのはナトヘンという街だ。元々ここで一泊する予定だったので、そのついでにギルトへ報告をする流れになった。
その後の道中も警戒を怠らずに順調に進んだ。御者の都合で昼からの出発になったためそろそろ夕陽が沈みかけている。想定外の襲撃にあったけど夜営予定地には何とか到着できた。ここは多くの商人や冒険者が夜営する場所として知られている場所らしいが、今回は他に夜営する人は見当たらなかった。
各パーティーで寝ると夕食の準備を開始する。彼らはアイテムバックを持っているためそこから出しているが、俺はいつも通りアイテムボックスから愛用しているテントを出す。
「アイテムボックスは便利やのぉ。わいらは劣化版やから羨ましいで」
「私達はAランクになってから漸く買えましたけど、やはり荷物が減るのは便利ですね。確かアイテムボックスは時間経過しないそうで、暖かい食事が摂れるのはいいですね」
「テイマーにはなくてはなりませんから」
暗くなる前に立てる必要があるけど雑談を興じながら夜営準備をしていく。食事はパーティー単位でとり、それぞれ別れた方面の警備も兼ねて食べている。食事が終わるとエーガ、キース、俺のパーティーリーダーが集まった。
「予定通り見張りはキースが最初で次にわいら、最後にクレトの順でやってもらうでぇ。昼間はよう分からん襲撃があったから十分に警戒を怠らずにしてくれやぁ」
「言われるまでも有りません」
「俺たちは楽な時間帯だけど気を抜かずにやります」
あとは見張り時間などを決めて解散となった。なるべく守りやすい様にテントの間隔は狭くなっているが、テントの形や色が違うため間違えることなく自分のテント内へと戻る。
中に入ると事前に出しておいて布団が既に並べられていた。最初は別々のテントで寝ようかと提案したのだが、女性陣から反対され同じテントで寝ることになった。まぁ普段からそんな感じだから特に問題はないけど、だいぶ俺も慣れてきたものだな。
「俺たちは最後の見張りになったから早めに寝るぞ。夜中見張りのためにごそごそして起こしてしまう可能性があるけど、ルミアは気にせず寝ててくれな」
「わかりました。見張りの方よろしくお願いします」
「ゴブリン共のせいで主からの褒めが後回しになったのじゃから今夜は一緒に寝るぞ」
「もう片方はルミアちゃんに譲るよ!私は見張りの時にイチャイチャするから」
「では有り難く寝させてもらいますね」
俺がいるのにあたかもいないかのように勝手に決められる。ノワールに関しては見張りをする気があるのか、それにイチャイチャって一体何するつもりだ?
「それじゃあ食事も済んだことだしもう寝るか。もし何かあったら誰かが入ってくるけど、よく顔を見てから攻撃的してくれな。もしかしたら交代のために起こしにきたかもしれないからな。特に入口で寝るノワールは注意してくれ」
「私は匂いで判断するから大丈夫!」
ノワールの嗅覚には一目おいているから安心はできるか。俺たちは途中で起きるためルミアは入口から遠い端っこで寝ることになる。それ以外にも敵襲の時に安全でもあるからな。
さて問題は寝る体勢だ。仰向けとなって腕枕をしているのだが、これがけっこうむず痒い。密着具合は普段と変わらないのだが腕に感じる感触がなんと表現すればいいのだろうか。それに身動きがとれないのは如何なものだろうかとも思うが合えて口にはしない。ここにはサフィとノワールがいるから危機感には敏感だ。
「昼間はからかいすぎて悪かったな。明日からも頼りにしているよ。ルミアは慣れない移動だったけど疲れてないか?まだ国境までは日数がかかるから何か心配事が合ったら早めに言ってくれな」
「寛大な妾は見ずに流してやる」
「私には皆さんがついてますので安心です。多少お尻や腰が痛くなりましたが慣れれば我慢はできます」
初めての馬車は揺れでお尻が痛くなるからな。クッションを敷いていても痛みはあるものだ。その後二人と夜の挨拶を交わして眠りに―――
『後で私にもしてよね』
つこうしたらノワールからの声が届いた。まさか見られていたとは思ってもいなかった。
『起きた時にな』
『忘れないでね!おやすみ~』
ノワールにおやすみと言い今度こそ眠りについた。
――――何やら地面が揺れてる?それとも夢か?まだ見張りの時間には早いと思うのだが念のため起きる。
「ご主人様起きた?たぶん襲撃かな。人の匂いがけっこうするよ」
「……マジか!?とりあえずサフィとルミアも起こ―――」
「妾も起きてるぞ」
どうやらサフィも起きていたのでルミアだけ起こす。せっかく気持ち良さそうに寝ている所悪いが、緊急事態っぽいから致し方ない。
「サフィとノワールは外に出て状況の確認を―――」
「クレト起きてるかっ!多分盗賊の襲撃だがどうも様子がおかしいから外に出てきてくれぇ」
頼もうとしたら、それよりも先にエーガの声がテントの中まで響いた。どうやら今回の依頼は波乱続きのようだ。
さてさて今度は何が起きたのか!?