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30.合同依頼

エーガの一人称を俺からわいに変更しました。


 光が消えると親の顔より――――は言い過ぎだけど目に飛び込んでくるのは黒狼であるノワール。突然魔物が現れればどんな行動を起こすか分からないので、ノワールの元まで駆け寄り安全だと証明する。それを察しているのかいつものように頭を擦りつけてくるので、つい流れで頭を撫でる。


「あらあら相変わらず仲がよくていいわね。私も触りたいわ」

「いつもの癖でつい―――」

「おいおいっどうなってやがる!?お前は奇術師か?」

「はぁあんたは鈍いし。あの人はテイマーで目の前にいる黒狼は彼の従魔だし」

「黒狼をテイムだと!?いやそれよりもメイドが変身したのも訳が分からん!」


 驚くのも無理はない。俺も初めての時はそれはもう心臓が止まるんじゃないかって程驚いたからな。エミリーさんとルミアが平然としているのは当然として、イリーカさんと"永遠の旅"の女性二人は然程表情が崩れていないから噂なりで知っていたのだろう。


「人間が魔物に―――いえ魔物が人間の姿になるなんて聞いたことがありません。カリンとコリンは知っていたのですか?」

「……仲のいい冒険者から聞いた」

「……噂で知った」


 よく見たら彼女たち二人の容姿は似ているため双子なのだろう。無表情は素なのか判断がつかない。カリンと呼ばれた女性は20代後半くらいにみえ身長はノワールと同じくらいだ。コリンさんの方も同じ外見だが髪色が決定的に違う。カリンさんは燃えるような赤色に対して、コリンさんは真逆の青色なので一度覚えれば間違えることはない。


「どうかしら?彼らには実績はないけど、実力は問題ないわ」

「ちなみにもう一人の女性も黒狼ですか?」

「あらキースも気になるの?彼女はもっとすごいわよ」


 冷静沈着そうに見えた"永遠の旅"のリーダーらしいキースさんも驚きを隠し得ない表情をしている。さらにエミリーさんが煽ったせいでサフィに視線が集まる。

 流れを理解しているサフィは席を立ち堂々とした姿勢で歩く。そして俺たちの前に来て、くるっと半回転して光に包まれる。全てを無理潰す漆黒(ノワール)とは対極な鮮やかな蒼。陽の光を浴びればサファイアにも引けをとらない美しい輝きを放つが、室内でもその輝きは決して淡くない。小柄でも龍なので武器に手をかける者もいるが、パーティーメンバーによって制止されている。


「まさか龍までもテイムしているとは末恐ろしい。もしかしてあなたも人ではないのですか?」

「いやいや俺は人ですよ!」

「今回の依頼には打って付けでしょ?狭い入口の所為で本来は入ることのできない黒狼が攻略に参加するなんて誰も予想していないでしょうからね。さらに龍も加わるなんてね。そしてこれは最近得た情報だけど、1階層の荒野では低ランクの魔物しか遭遇していないそうだから、高くてもBランクダンジョンだと判断されたみたいよ」

「どうやって情報を得たのですか?」


 つい気になってしまい話の腰を折ってしまったが、嫌な顔することなく教えてくれた。

 どうやら国境と王城を繋ぐ通信用の水晶があるらしく、それで日々新しい情報が得られるそうだ。以前エミリーさんと交わした契約の水晶の通信版らしく、これまたダンジョン産とのこと。そして王城からギルド本部へと手紙が届けられるといった流れらしい。


「”蒼黒の絆”だけだと王国が舐められるし、不測の事態が起きないとも限らないので”獣の魂”と”永遠の旅”にも声をかけたの。それぞれのパーティーは優秀な人材が揃っているし十分単独で制覇できるとは思っているけど、やっぱり荒野を自分たちだけの足で攻略するのは厳しいからね。果たして帝国はどんな人物を派遣してくるのかしらね」

「選抜理由は分かりましたがAランクパーティーとして彼らに負けるつもりはありません。勿論Sランクパーティーの貴方方にもですが」

「はっ!わいらも負けてられねぇな。獣人の凄さを見せてやる!」

「切磋琢磨するのはいいことだけど、まだ説明が残っているから席に戻ってくれるかしら」


 サフィとノワールに擬人化のスキルを使ってもらい同じ席へと座る。スキルを使ったことでまたも注目を集めることになったが、さすがは高ランク冒険者、順応能力が高い。


「今回の依頼内容は言うまでもないけど新ダンジョンの制覇よ。仮に帝国が先に制覇した場合でもその時点で依頼は達成とみなされ、追加分の成功報酬はなしよ。そして期間はダンジョンが制覇されるまで。ただしダンジョンのランクが未知数なため制覇に時間がかかると判断されれば、追加の派遣や交代も認められるわ。最低限の食事は向こうで準備されるし、仮設テントを設置するからそこで寝泊まりすることになるわね。他に聞いておきたいことはあるかしら?」

「ダンジョンで入手した物の所有権は我々にあるのか?」

「残念ながらダンジョン制覇の証である魔石だけは国が買取決まりになっているわ」

「国境まで各パーティーで移動か?それともよぉ俺たち全員でか?」

「纏まっての移動になるわ。後でまた詳細を伝えるけど移動は三日後の予定よ。攻略開始日に間に合わないと攻略資格がなくなって王国側が不利になってしまうわ。これに関しては上の決定だから異論は認めないわ」


 説明を聞く限りはそこまで悪い条件ではないように思える。ただ依頼期間が不明なのが気がかりではある。そして俺も気になることを聞いておく。


「食費や宿泊代は自腹ですか?」

「配給分はこちらが負担するし仮設テントはタダで使えるわ。足りない食事やダンジョンに必要な物資はあなたたちの負担よ。ただし急にあれがいるこれがいると要望しても、国境にいるのだからある程度の時間がかかると思ってちょうだい」


 きっとノワールは多く食べるだろうからまた買い出しに行かないとな。他にも物資の買い忘れがないかを見直さないと。


「それからダンジョン内で入手した魔石や素材をずっと保管しておくのも大変でしょう?だから三人のギルド職員を随行させるわ。これは選抜メンバーとは別扱いで連れて行けるけど、国境と街を行き来するからほとんどいない者と思ってね」


 もしかしてこの部屋にルミアもいるってことはそういうことなのか?エミリーさんと目が合うとウインクされた―――つまりはそういうことだ。ただウインクの所為か両隣から不機嫌そうなオーラが感じ取れる。


 その後は移動日の日程や場所の説明がされ、各パーティーリーダーで軽く話をして解散となった。ルミアはまだ仕事が残っているため帰りは遅くなったが、ダンジョンへの随伴に選ばれた様だ。離ればなれになることは回避されてとても嬉しかった。

次回ダンジョンへ向けて出発!!

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