29.高ランク冒険者
本日2話目です。
あれから三日が経過し今日は顔合わせのために再び、ギルマスことエミリーさんからの招集がかかりギルトへと出かけている。実際はルミアからその伝言を受け取ったのだが。
ここ数日は買い出しやら王都をぶらぶらしたりとまったりしていた。十分に疲れをとったので体調もバッチリだ。
そうこうしているとギルトへと着き勝手知ったる執務室―――ではなくその隣の会議室へと足を運ぶ。
余裕を持って来たつもりだったが既に他のパーティーは来ており、部屋に入った瞬間視線が集まった。様々は感情が見え隠れしているが、一番多いのは誰だお前って視線だ。まぁそれが普通の反応だろうが特に気にせず三人で中へと入り、適当に空いている席へと座った。
いつものごとくサフィとノワールはメイド服で、左右に女を侍らせている糞野郎、とでも思われているのか先程よりも鋭い視線が突き刺さる。だが一部はお前が噂のやつか、という雰囲気を醸し出している人もいる。早くエミリーさんが来てほしい――――願いが届いたのかギルマスが部屋と入ってきた。何故かその後ろにルミアもいた。
「……みんなお揃いのようね。それじゃあ依頼内容を説明するから適当に座って――――ってもう座ってるわね」
「それよりもこいつらは何だ?恰好もそうだけどよ、俺が見覚えないってことは高ランクじゃねぇのは確かなはずだ」
「順に説明するから待ってちょうだい」
「ちっ、しゃーねぇな」
ぐるっと会議室を見渡し説明しようとすると、俺たちに難癖をつける狼獣人の男。彼は頭からは耳が、お尻付近からは尻尾が生えている。ノワールの狼形態の時と似たような耳から彼も狼だと思ったが、さすがに人の姿であるノワールも狼だとは気づいていない様だ。
自信に満ち溢れた物言いから高ランクだと推測でき彼の周りには猫、兎などの獣人たちがいるため獣人だけでパーティーを組んでいるのだろう。残念ながら俺も彼らのことを知らないためギルマスからの説明に耳を傾ける。
「まずは緊急招集に集まってもらいありがとう。聞いてるとは思うけどもう一度簡単に説明をするわね」
序盤の説明は前回聞いた内容と同じだったので軽く聞き流す。本題はここからだ。
「およそ一週間後に各国が選抜した冒険者パーティー、もしくは騎士団がダンジョン制覇に動くわ。しかし選抜人数は15人と制限されているわ。各国はスタンピードが起こる前に制覇をしたいのだけど、人数に制限を設けないと侵略行為と疑われる可能性があるためそうなったわ」
その割には集められたのはギルマスとルミアを除けば13人しかいない。普通は定員ギリギリまでを選ぶはずだ。
「王国としては騎士団の派遣も検討されたけど、少数精鋭では十全に力を発揮されないとしてダンジョン攻略のプロである冒険者だけが選抜されたってわけ。そして選定を私に一任されあなたたちを呼んだ次第ってわけ」
「ようは実績だろ?わいら”獣の魂”はSランクパーティー、そっちにいる”永遠の旅”はAランクパーティーとして王都じゃ有名だ」
「でも実績だけが全てではないわ。あなたが気になっている彼ら”蒼黒の絆”はCランクパーティーだけど一番に制覇すると私は確信しているのよ」
明らかに挑発するような言い方の所為で余計に反感をもたれる。でもエイミーさんがそこまで期待してくれているとは思ってもみなかった。過分な評価だとは思うけど素直に嬉しい。
「聞き捨てなりませんね。私達”永遠の旅”よりもランクの低い彼らが制覇できるとは到底思えません。パッと見強そうに見えませんし、メイド服とは何ですか?我々を馬鹿にしているのですか?」
「そんなつもりはない。彼女たちの服装は確かに可笑しいとは思っているが、見た目よりもずっと丈夫だ」
ずっと黙っていたもう一方のパーティーリーダーらしき男が痺れを切らしたのか、それとも何か彼の琴線に触れたのか俺たちに話しかけてきた。Aランクパーティーらしいがこちらも初めてみる顔ぶればかりで、"獣の魂"とは真逆で人族だけのパーティーだ。メンバーは男が二人で女が三人とどこぞのパーティーを連想させる。思考をリセットする意味も含め頭を軽く振る。
今まで余り触れてこなかったメイド服だが、ダンジョン攻略中に敵の攻撃を受けたり防御しても破れた所を見たことがないためただの服ではないはずだ。断定的でないのは当の二人もよく分かってないからだ。神様からの貰い物だから詳細は神のみぞ知るのだが肝心の聞く手段が分からない。
「だからと言って彼女達にメイド服を着せる答えにはなっていない。それに女性に前衛を任せるのは男してどうかと思うがね」
「妾たちは好きでこの服装をしておる。憶測だけで物事を決めるのはどうかと思うぞ?」
「彼らの肩を持つ訳ではないけど実力は私が保証するわ。むしろ高ランクであるあなたたちでも彼女たちの実力が分からないのかしら?特に狼獣人であるエーガ、あなたは気づいてもいいと思うのだけどね」
「あぁん?何で俺だけなんだよっ!」
俺よりも先にサフィが言い返しその後エミリーさんが続き完全にタイミングを失った。エミリーさんはやれやれとでも言いたげな仕草でこちらを見つめる。
事前にルミアからの伝言で顔合わせの時にサフィとノワールの正体を明かしてほしいと言われている。理由としては俺たち以外のパーティーを納得させるためらしい。俺たちのランクは低いしこれといった実績がないが、彼女たちを見れば納得してくれるだろうと言われれば否とは言えない。それに彼女たちのスキルは多くの冒険者の前で見せているため彼らが知らない方が意外だ。まぁ俺たちも彼らを知らないからお互い様ではあるけどな。
「そう分からないのね。後ろにいる彼女は知っているようだけど?」
「何でイリーカは知ってんだ?」
「そりゃあうちはパーティーの頭脳だからね!それにけっこう有名だし。うちとしてもあんたが気づかないのは確かにどうかと思うし」
「さっきからそればっかりじゃねぇか!いい加減教えろ!!」
「うちよりもノワールさんだっけ?彼女が教えてくれるし。それからもう一人のメイドさんも」
どうやら兎獣人であるイリーカさんは知っていたみたいだ。別に正体を隠し通すつもりもないため、ノワールからの視線に首を縦に振り承諾する。皆の注目が彼女に集まるがエミリーさんはどこか愉快そうにこの状況を楽しんでいる様に感じられる。
ただ座ったままでスキルを解くのはまずいので広い壇上の方へと歩みより―――――彼女の全身が光輝く。
軽く新しい登場人物の絡みも入れたら区切りタイミングが分からなくなりました……。
中途半端なので次話も近日中に投稿致しますのでお待ち下さい。