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25.ボックタダンジョン④

 攻略を再開した途端魔物と遭遇した。たまたまセーフティエリア周辺をうろうろしていたのか、その場所から出た瞬間鳴き声をあげ突撃してきた。


『あれは…ホーンディアだったか?』

『そうじゃな』


 悠長に確認してる場合でなく、突撃を躱し情報を思い出す。

 鹿の魔物で体長はノワールよりも大きいが、特徴はその横にまで伸びた角だ。顔と同じくらい大きな角が左右に突出していて、大きく避けないと角とぶつかる。

 たが逆に弱点でもあり、どちらかを折るとバランスがとれなくなり立つことすらもままならない。


『角の付根を狙ってくれ!』

『妾がやろう』


 サフィの機動力ならうまく狙えるだろうが、脆い付根とはいえそれなりの強度を誇るホーンディアだが大丈夫なのか?

 俺の心配を知る由もない彼女は加速したまま彼処(ひが)の距離をつめ―――一思いに噛み砕いた。

 ドラゴンとは言えなんちゅう咬合力(こうごうりょく)だ!驚いたのは俺だけでなく、その身で味わったホーンディアはまるで絶叫の様な悲鳴をあげ地面に横たわる。そこへ宙返りの勢いをのせた爪撃(そうげき)を喰らわせ、致命傷な一撃だったのだろう―――ボリゴン状の霧散がまるで爆散したかのように見えた。


『こんなもんじゃろ。群れなら面倒じゃが単騎の突撃など容易い』

『サフィちゃんカッコいい!』

『(ドヤッ)』


 ニヤリと口元を歪め照れながらも満更でもない表情(かお)をしている。相性がいいと言えランクDを赤子の手を捻るかのようだ。


『お疲れ様。悲鳴を聞きつけて他の魔物が現れる前にここを離れるぞ』

『サフィちゃん真っ直ぐでいい?』

『よいぞ』


 無駄な戦闘は避けつつ5階層へ続く階段を見つける。1~9階層はずっと草原が続くので同じ攻略方法を取り続けた。

 そしてその調子でセーフティエリア内で睡眠や休憩をとりつつ10階層のボス部屋までやって来た。


 疲労よりも同じ景色が続くのが精神的に堪えた。それは俺だけではなかったようで二人も似たような表情をしていた。


『ボス討伐したら地上に帰還するが気を抜かずに行くぞ』

『当然じゃ』

『たしかボスはミノタウロスだっけ?』


 まさかノワールが覚えてるとは――しかしミノタウロスは単体ではなく2頭いる。牛頭人身の魔物で身長は3~3.5mありその半分の長さはありそうな巨大な鉈を持っている。それが2頭もいるのだ。

 全員で情報を摺り合わせて攻略の作戦を練る。


『俺が片方を引き受けるからその間に二人で残りの方を倒してほしい』

『大丈夫かえ?』

『足止め程度なら余裕だ』

『ならば妾たちは倒し次第加勢に参る』

『気をつけてね』


 心配そうな顔をしているノワールの頭を撫で大丈夫だとつげる。サフィは言わずとも信頼してくれているのかうなずく仕草をして扉の先を見据える。


『よし!行くぞ』

『『うむ(うん!)』』


 気合いを入れ直し扉を押し開く。

 中は闘技場に似た感じだが、当然観客席などはなくおおよそ直径200m程の広さがあり、ミノタウロスが十全に力を発揮できる造りとなっている。

 三人が中へと入ると扉は閉まり反対側から赤い魔方陣が二つ光輝きミノタウロスが現れる。お決まりの様な威嚇する雄叫びを二つ轟かせそれぞれ臨戦態勢をとる。


 サフィとノワールには左側の若干背の低い方を任せる。示し合わせた訳ではないが、同時に駆け出し敵との距離を詰める。

 約2倍の身長差は闘いにおいて不利になるが、そんなことはお構い無しと言わんばかりに攻撃をしてくる。得物が大きい分一手一手の間はあるが一撃の威力が重い。剣で受け止めようとした――――呆気なく弾き飛ばされた。


「恐ろしい威力だな」


 悪態をつきながらも決して目を離さず再び肉薄する。今度は剣で受け流す様にして攻撃に耐える。一瞬でも気を抜けば先程の二の舞になりかねなく嫌な冷や汗が流れる。受け流しつつ足へと切りつけることを繰り返すが、皮膚が固いせいで薄皮をめくるくらいにしかダメージが与えられない。


「このままだと剣が持たないな…」


 どうしたものかと思案を巡らせていると戦況に大きな変化が訪れた。ズドンと大きな地響きがしたと思えばもう一方のミノタウロスが地面へと倒れていて、心臓めがけてノワールの爪が貫く所だった。

 足元でさえ切りつけるのがやっとだったのにいとも容易く貫いて見せた光景に、戦闘中にも関わらず暫し唖然としてしまった。


『主よ此方は片付いたぞ』

「アウォーン!」


 不敵な笑みを浮かべるサフィと勝利の雄叫びを上げるノワール。俺も負けてられないが……やはり一人では部が悪い。


『俺が奴の攻撃を受け持つからもう一度地面に倒せるか?』

『任せておけ』


 全く…頼りになりすぎる従魔たちだよ。自然と口角が上がり、仲間が殺られて尚戦意を失う所か咆哮を上げ怒りの形相で剣を振るうミノタウロス。両手に力を込め受け流していく。しかしジリジリと後ろへ押され始める中隙を見て二人が顔面へと襲いかかり、逆に奴の体勢を崩し重心を後ろへとずらす。


『ナイスアシスト』


 勝機をこぼすまいとミノタウロスの体を登り、止めの一撃を放とうする―――だが心臓付近は固い皮膚だけでなく強靭な筋肉にも守られており切りつけることが叶わない。よくもこれを貫通させたなとノワールを末恐ろしく思いながらも思考を加速させる。

 今の俺では心臓に切りつけることは不可能。ならば一点集中の突き技で決めるほかない。狙いは確実に仕留められる場所―――喉元だ。

 喰らえば一溜りもない急所であるものの、阻むものは固い皮膚のみだ。体格差のせいで届かなかったが援護(ふたり)のおかげもあり今は届く。倒れ行くミノタウロスを踏みつけて跳躍し、落下速度の勢いをつけ狙いを定める。


 それを防ぐべく反撃を繰り出そうとするミノタウロスの両腕をそれぞれサフィとノワールが阻止をしてくれる。目線でありがとうと送り渾身の一撃を突き付けた。剣は半ばほどで折れてしまったが奴の命を奪うには十分な役割を果たしてくれた。


『お疲れ様。俺だけだと倒すのは無理だったよ…フォローありがとう』

『妾たちはパーティーぞ。よい連携であった』

『ご主人様もお疲れ様!』


 二人を労いつつ人の顔程はありそうな魔石が二つと鉄のインゴット五つを回収した。

 これでようやく地上へと戻れる。まだ制覇には程遠いが地上で気持ちをリセットして11階層の攻略へと挑む。


『ドロップ品も回収したことだし転移ポイントで帰るか』

『ようやくあの景色とはおさらばじゃ』

『ベッドが恋しい…』


 サフィにはずっと偵察と道案内を任せていたから、9階層までの風景は俺よりも見飽きてたことだろう。

 ノワールは前回のように安眠はできず、途中起きたり変な時間に寝たりと辛かったはずだ。

 斯く言う俺も魔物の脅威よりも草原エリアに苦しめられた。数日は休みに当てたいところだ。


 外に戻るにあたり二人は擬人化を使い仲良く手を繋ぎ転移ポイントへと足を踏み入れる。別に一人ずつ入ってもいいのだが両手を握られたのでなし崩し的にこうなった。


 ダンジョン内も明るいが久しぶりにみる地上の光(たいよう)は―――とうに沈んでおり闇夜が出迎えてくれた。


「もう夜か…ダンジョン内だと時間感覚が狂うな。ささっと部屋を確保して休むとしよう」

「先にご飯!」

「「……」」


 さっきまではベッドがどうのこうの言っていたのは誰だったか……俺とサフィはついつい苦笑いになる。でも制覇はしてないがボス撃破を祝って乾杯するのもありか。


「一先ず宿の確保をしてなから―――」

『クレト君聞こえてますか!?』

『…ルミアかどうしたんだ?』

『ようやく繋がりました…。それよりも緊急事態です!今すぐ王都へ戻ってきて下さい』


 ルミアが慌てるなど珍しいく、どうやら意思疎通は全員と繋がってたらしく二人にも聞こえてたらしく顔が強張る。


『分かった。今すぐ王都へ向かうがそのままギルドまで行けばいいのか?』

『そうです。ギルマスがお待ちになってます』

『ルミアよ要件はなんじゃ?』

『何でもカラフルーマ王国と隣国のジュエリーム帝国との国境を跨ぐようにしてダンジョンが出現しました!各国は相手よりも早く制覇するために冒険者や騎士を召集しています』


 ここ何年間はダンジョンが出現することはなかったが、まさか帝国との国境にできるとは…。

 別の意味で悲壮感が漂っているノワールには悪いが、急ぎ王都へと向かうことになった。

戦闘シーンをかくのは難しいですね…。


あと1話くらいは年内には投稿できる予定です。

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