22.ボックタダンジョン①
途中関西弁擬きがでてきますがもし使い方を間違っていましたらご指摘いただけると幸いです。
たっぷりと英気を養いボックタダンジョン攻略へと動き出した。昨日は体力面よりも主に精神面を疲労したが回復して万全の状態であるが――
『まだ少し違和感があるよ~』
『なんじゃもっとマッサージをしてやるぞ?』
『ううん気のせいだったみたい!あははは』
相当堪えたのかいつになく弱気なノワールだが、本当に違和感があるならまずいけどどうやら大丈夫そうだな。
「さぁ気合いを入れ直して頑張るぞ。ノワールは道なりに進んでもらえば目的地着くからそのまま真っ直ぐな」
『は~い!』
気合いが抜けそうな返事だがこれでこそノワールだな。
「サフィは警戒頼むな」
『抜かりないぞ』
道中同じ目的地を目指してそうな冒険者と何回かすれ違ったが、トラブルもなく予定通り着いた。
『ここからは意思疎通で話をしてくからな。ダンジョン内ではノワールはそのままで、冒険者の数によってはサフィは切り替わってもらうからそのつもりで』
それぞれ返事が流れてきたのを確認してダンジョンの入口に並ぶ。Bランクダンジョンともなれば人が多くすんなりとは入ることかは叶わなかったが、王都の待ち時間に比べれば短いものだ。
中へ入ると一面草原と言うよりも芝生に近い印象を受ける。そのため目印になりそうなものは岩くらいで、道などない。
『これだと地図があっても迷いそうだな』
『全くその通りじゃな』
『どうするの~?』
さてどうしたものか……サフィに偵察をお願いして情報を集めよう。
『ざっと階層を見てもらえるか?他の冒険者には十分気をつけながらにはなるけど…』
『よかろう妾に任せておけ』
『俺たちは入口から離れた場所で待機だ』
『わかった!』
攻略には時間がかかりそうだな。これ以降も同じ感じだと全てサフィに頼むことになり負担を強いることになってしまう。サフィからの連絡があるまで打開策が見つかればいいのだが―――
『主よ、草原だらけでこれと言った目印はないが、冒険者が皆一様に同じ方角を目指しているぞ』
『いい情報だな。寄生みたいだが俺たちも同じ所を目指そうか。大体の位置は把握出来そうか?』
『問題ないぞ』
『じゃあ一旦合流しようか』
『承知』
サフィのおかげで1階層から躓かずにすんだ。
うん?なんか頭の中というかこれは感覚か……もしかしてサフィの位置か?だんだんとこっちに近づいている。
『なぁノワールもサフィの位置が分かるか?』
『う~ん言われてからわかったけど、これがサフィちゃんなの?』
確証はないが俺の直感がそう告げている。宿屋にいる時は二人の位置は分からなかったが、何かしらの条件があるのか………いくつかの仮説を立てていたらサフィが戻ってきた。
『戻ったぞ。主よ悩み事か?』
『あぁ実はな――』
仮説も含め説明をする。お互いを強く意識したら位置情報も分かるってのが一番しっくりくる。宿屋の時は俺だけが場所を知りたいと思っていたが、サフィたちはただ話をしている感覚だったと思う。
さらに先程のノワールも意識をしてから分かるようになったから、可能性は高いと思う。
『なるほどの。ならば妾が次階層まで案内する故ノワールと主はついて参れ』
『一人で大丈夫か?冒険者も多いんだろ?』
『なに見えない上空にでもおるから安心せい』
『…危険が迫ったら迷わず避難するのと、連絡をいれること。それだけは守ってくれ』
『主は心配性だな…だが肝に銘じておこう。ノワールよ主を守る役目は託すぞ!』
『うん!サフィちゃんも気をつけてね』
頼れる従魔で嬉しい反面そこは俺にノワールを託して欲しかった。まぁノワールの方が強いから仕方ないかもしれないが、男としては負けた気分だが、気持ちを切り替えて攻略を優先しよう。
『せっかく合流したんだから1階層はこのまま三人で進もう。サフィが戻ってきた方角に向かえばいいのか?』
『そうじゃ』
『了解。ノワール頼む』
『頼まれた!』
草原エリアは目印になるものがない分、魔物を発見しやすいメリットがある。上階層はコボルトやゴブリンなどが出現する。余談だがゴブリンはどのダンジョンでも出現する一番有名な魔物だ。
『前方に冒険者がコボルトと戦闘中じゃがどうするのじゃ?』
『そうだな…迂回しても方角は大丈夫か?』
『問題ないぞ』
『なら迂回していくから冒険者を刺激しないように、ゆっくり動いてくれ』
どうやら冒険者が戦闘中だが余裕がありそうなので先を目指す。ぐるっと回り込み、サフィには近くにいてもらい冒険者を刺激しないように心がける。戦闘時は五感や神経が鋭敏になっていて無闇に近づくと魔物と勘違いされて攻撃を受けることがある。特にサフィとノワールは魔物の姿なので単独行動をしていると誤認される可能性が高くなる。
「リーダー!ウルフがおるで」
「ああん!?バカ野郎!ウルフやのうて黒狼やないか!?ってよう見たらああれは従魔やないかい!」
「マジっすか!?てかあれは龍っすよ!」
「戦闘の邪魔はしない!悪いが迂回して先を行かせてもらう」
「そうかぁ。気いつけやぁ!」
良識のあるパーティーで助かったが陽気なメンバーたちだな。十分な距離を確保したらスピードを上げ次の階層を目指す。コボルトの群れと鉢合わせたが難なく倒し、ゴブリンよりも本の少し大きい魔石がドロップした。稀に革がドロップしいい値段で取引されるが、残念ながら今回はなかったみたいで魔石だけ回収した。
『このまま真っ直ぐ進めばいいか?』
『 ……少し様子を見てくるのじゃ』
『もし階段が近いならサフィの位置を感じて向かうから、サフィはその場で待機してくれ』
返事とともに飛び去って行ったが、まさか1階層からここまで時間がかかるとはな。おそらく現在は昼過ぎくらいでこの調子だと10階層まで到達するのは4~5日は必要な計算だ。サフィやノワールの疲労を考えるともう少し遅くなるかもしれないな…。
先行きの不安を感じながらも、思ったよりも階段が近く2階層へと辿り着いた。
明日の更新は勝手ながらお休みとさせてもらい、24日(木)の7時に次話を投稿いたします。