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18.王都のギルドマスター

 何とか倒せたがギリギリだった。剣術スキルを持っていても剣の扱いがよくなるだけで強くなったわけではない。それでもスキルがあると上達が早くなるのは間違いではないが、努力で覆すことは可能だ。何が言いたいかと言うとスキルがなくてもスキル持ちの人に勝つことは出来るってことだ。


「今の見えたか?」

「いや見えなかった…。もしかしてあいつもランクの高い職業を持っているのかもしれない」

「だがそれならもっと有名になっているはずだろ?」

「何者なんだあいつは…」


 珍しい職業や元から高いと国が把握している可能性が高い。洗礼式は教会で行いそのを管理しているのが国なので情報が筒向けになっている。例え国の目に留まらなくてもランクが高ければ、それだけで優遇されるので必然的に名が知れ渡る。残念ながら俺は最近までFランクだったので皆が知らないのも無理はない。


「誰かこいつを医務室に運ぶの手伝ってくれないか?」


 このまま放置しておくのは偲びないが、一人で運ぶのはきつそうで助けを借りようとしたらコソコソと話すだけで、挙句目が合うと逸らされる。仕方ない、大変だけど一人で運ぶか…。


「あ、クレト君大丈夫ですか!?」

「大丈夫ですけど、どうしてここにルミアが?」

「訓練場で決闘が行われてると聞いて止めに来たのですが――すでに決着はついているようですね」

「ええお騒がせして申し訳ないです」


 外まで騒ぎが広がっていたとは…。しかもただの鍛錬が決闘に間違えられているのは納得がいかず、それだと本当に騒ぎを起こしたみたいじゃないか。


「大変言いにくいのですが上の方にもこのことが耳に入っていまして、説明のために同行してもらえますか?」

「一体誰ですか…情報を流したのは」

「私も噂を聞きつけただけで、事情は当事者から聞きたかったのですが、これだと無理そうですね…」


 サイクは未だに気を失っていて俺が肩で支えている。華奢なルミアに手伝ってもらうわけにもいかず、とりあえずは医務室まで運びその後三階にある執務室に通された。


「マスター決闘騒ぎの当事者を連れてきました」

「入ってくれたまえ」


 三回ノックをしてルミアが声をかけると入室の許可が下り入ることにしたが、声音は年若い女性の声だった。


「失礼します。残念ながら一人は気を失っていますので彼一人だけになります」

「ご苦労様。ついでに紅茶も頼めないかしら?」

「はぁマスターもそれくらいは一人でやって下さいよ」


 ギルドマスターが女性で、しかもエルフだとは――噂通りに美しい容姿をしていた。見た目からしても到底冒険者のトップに立つ人物には思えない。


「クレト君見過ぎです」

「……すいません」


 どうやら見惚れていたらしく横腹を突つかれた。絶世の美女とは彼女に相応しいと言葉だろう。彼女を初めてみて見惚れない男性はいるだろうか?否、いないと断言できる。つまり俺は悪くないからそんな目で見るのはやめてほしい…。


「二人は随分と仲がいいみたいだね?」

「えぇクレト君とはその、お付き合いしていますので」


 一瞬こちらをみてから、恥じらった様に告げる彼女はとてもかわいい。ここが執務室でなければたぶん抱きしめていただろうほどに。


「まぁいいわねぇ!でも仕事とプライベートは混同しちゃダメよ?」

「わかっています。クレト君はそこのソファーに座って下さい、紅茶を準備してきます」

「分かりました」


 ここに来たのはいいけど何を話せばいいんだ?決闘騒ぎはむしろ俺も被害者のはずだ。


「とりあえず自己紹介からかしらね?私はギルドマスターをしているエミリーよ」

「俺…自分はクレトと申します」

「そんなに畏まらなくてもいいのよ。気軽に話してちょうだい」


 ギルマスことエミリーさんは見た目通りなら20代前半くらいに見える。だが彼女から漂う気品や色気が半端なく、彼女が紅茶を飲む姿をつい目で追ってしまい、それに気づいたのか目が合いウインクをされた。恥ずかしいやらかわいいやらで顔が赤くなっていくのが自分でも分かるが、準備を終え隣に座っているルミアからは絶対零度のごとく冷たい瞳で見られて背筋が凍る思いをした。


「クレト君を誘惑しないでもらえますか?」

「あらそんなつもりはなかったのだけど、彼の視線が情熱的過ぎて、ついね」

「断じて違います。見惚れていたのは事実ですが……って今のは言葉の綾でつい―――」

「あとでお二人にもお話しますのでそのつもりで」

「はい…」


 エミリーさんは人のことを揶揄って楽しんでやがるな。帰ってからはお説教コースか…美人に見惚れるのは男の(さが) みたいなものだから大目に見て欲しい…。


「うん?他にも女性がいるのかね?」

「えぇまぁそうですね。アハハ」

「色男君だったか、それはそれはルミアちゃんも難儀だねぇ」

「そんなことはありません」

「おぉそうかそうか君は愛されてるね」


 改めて俺は何しにここへ来たのだろう、間違っても惚気話をするために来たのではないことだけは確かだ。このままルミアまでもエミリーさんのペースに巻き込まれては、よくないことが起こりそうだ。


「コホンッ、それよりもここへ呼ばれた理由は何ですか?」

「あー何だったかしら?…冗談ですよそんな顔しないでください。何でも決闘騒ぎを起こしたそうね?詳しく聞かせてもらえるかしら」


 わざとらしく咳払いで注意を集め軌道修正を試みると、見事成功した。ようやく本題に移りありのままを話して聞かせた。


「……そうですか。サイクにはこちらからも厳重注意をしておくわ。それよりもクレト君だったわね、他の彼女さんはもしかしてメイド服を着た女性かしら?」

「そうですけどそれがなにか?」

「興味本意ですよ。ついでにお名前を伺っても?」

「…サフィとノワールです」


 一体彼女は何を考えてるのかさっぱり読めずルミアも困惑してるのか浮かない表情をしている。言外に何かと目で訴えても気づいていないのか平然としているが、ギルマスほどの人物が気づかないはずはない。


「もしや君は従魔が恋人なのかね?」

「なっ!!どうしてそれを!?」

「まさか本当とはね。これはますます君に――君たちに興味が湧いてきたわ」


 何故知っている…根本的に俺が従魔を連れていると知ってるんだ?王都内では魔物の姿になどなっていないし、俺がテイマーだと言い触らしていない。知ってる人はルミアくらいだが、彼女は手で口許を隠してひどく驚いてる様子からして、エミリーさんに教えていたとは考えにくい。

 しかし核心をつかれて動揺してしまったのがいけなかった。どうやって言い訳をしたものか……そもそもどうやって知ったのか分からなければ打つ手がない。


「そんなに警戒しないでちょうだい。純粋な知的好奇心ってやつでね、他人に言い触らしたりはしないから安心して」

「あなたを信じろと?」

「うーんならこうしましょう」


 そう言って彼女が机に向かい取り出したのは丸い水晶だった。もしやこれは魔道具か?


「これは契約の水晶って名前の魔道具なの。その名の通り契約を結ぶもので、契約内容は絶対遵守されるわ」

「便利な魔道具があったもんですね。これさえあれば犯罪事は無くなるんじゃないですか?」

「生憎と相互の同意がないと発動されないのよ」


 さすがに万能とまではいかないが十分すごい代物であるのは違いない。果たしてどうしたものか―――




中途半端ではありますが、ここままだと長くなりそうでしたのでここで区切りました。

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