16.次なるダンジョン
長い長い話し合いが終わったのは朝日が昇ってからだった。途中からウトウトはしてたがようやくちゃんと寝れる。1、2、3で夢の世界へ堕ちた。
「あぁーよく寝た」
夢の世界から目覚め室内を見渡すが誰もおらず、時間を確認したら14時を過ぎた頃だった。よく寝てたせいか今度は空腹を訴えだし一息つく暇がない。仕方なしに一人で食事をとりに行こうとしたがふとあることを思いつく。
「サフィとノワールはここにはいないけど、意思疎通で会話ってできるのかな?」
物は試しと思い実行してみる。できなかったとしても何もデメリットは起きないしな。
『サフィ、ノワール聞こえるか?』
『急になんじゃビックリするじゃろ』
『お寝坊さんが起きた!』
誰のせいだと思っている!俺にも原因の一端はあるにはあるが―――って今は関係ない。思いの外普通に繋がったが、よくよく思い返せばダンジョン内よりも近い場所なら繋がるのも頷ける。果たして何処にいるのだろうか。
『起きたら誰もいなかったから意思疎通で確かめようと思ってな、驚かせるつもりはなかったんだがすまない』
『妾も言い過ぎてしまったようじゃ』
『お互い様ってことで水に流そう!それでご主人様はどうしたの?』
『お腹が空いたから、飯でも食べようと二人にも声をかけたんだ』
『そういうことじゃったか、あいにくと妾たちは忙しい故一緒には食べれんのじゃ』
『ごめんね』
タイミングが悪かったみたいで一人で食べることにするが何をしてるのだろう。
『夜には帰ってくるのか?』
『その予定だよ!』
『なら夕食の時にでも何をしてたのか教えてくれ』
『は~い!』
一人飯なんていつ以来だろう、二人がいるのが当たり前だったせいで寂しく感じてしまう…。
黙々と食べ進めすぐに部屋へと戻った。まさか一人の食事がここまで辛いとは――。二人が帰ってくるまでアイテムボックス内の整理と、消耗品の確認をして補充リストを作成しておこう。これまた黙々と作業を進め、気づけば外は真っ暗で帰ってくるのが遅いなぁ。
「今帰ったぞ」
「おかえり」
噂をすればなんとやら、タイミング良く帰ってきたがノワールの様子がおかしい。グッタリとしていていつもの元気はどこへいったのかと疑いたくなるほどだ。
「ノワールは大丈夫なのか?」
「心配はいらん。頭を使いすぎただけじゃ」
「うえ~んサフィちゃんはドラゴンじゃなくて鬼だったよ!」
おーよしよし、泣くほど辛かったのか。一体何してたんだ?
「妾を悪者にするでない!ノワールが真面目にやらなんだのが悪い」
「説明を求める」
俺には何が何だかさっぱり分からん。多少分かることと言えばノワールがいつもの調子でいたら、サフィに怒られたってことくらいか。
「さすがに妾たちも昨日――いや今日か。主に負担をかけ過ぎたと思い、次の攻略ダンジョンを調べようとしたのじゃが、ノワールが真面目に働かなくての」
「だって私はそういうの苦手なんだもん」
かわいくいっても今回ばかりはサフィが正しい。俺としては助かるからノワールにも頑張ってほしい所ではあるが、ノワールの様子をみる感じサフィがほとんどやってくれたのだろう。
つまりは意思疎通で話した時はギルドにいたってことになり道理で繋がるわけだ。
「二人ともありがとな」
「まぁなんじゃ気にするでない」
「照れてるね!」
「戯け!頑張ったのは妾ぞ!主にベタベタするでない」
「は~い。早速調べたことを報告するね」
「しれっと妾の手柄をとるでない!!」
その時の状況が手に取るようにわかるな。大方サフィが指示するもノワールがやる気を見せず、一人でこなすはめになったのだろう……苦労人だな。
「もう冗談だよ。そんなに怒らないでよ~」
「怒ってなどいない。呆れてるだけじゃ」
「大変だったみたいでご苦労様サフィ」
「私には~?」
「はいはいお疲れ様」
「えへへ」
サフィの苦労が偲ばれる。ノワールばかり労うとサフィが拗ねかねないので、あとで褒めるのを忘れないでおこう。
「Bランクダンジョンはボックタとバルクスの2つ存在するのじゃ。ボックタは全25階層、バルクスは全30階層になっておる。残念ながら地図はちと高いと感じたの。詳しくは紙にまとめたから見てほしいのじゃ」
「……すごい丁寧にまとめてあるな。これだけでお金がとれそうだな」
出現する魔物や階層毎の注意点、さらには簡易的な地図まで描かれていてサフィの努力が窺える。
「見た感じはボックタが良さげだな。草原エリアがメインな点や魔物の種類も相性がいい」
「妾も同意見じゃ」
バルクスは洞窟エリアがメインでサフィの機動力が十全に発揮されず、さらにはアンデット系の魔物が出没するが弱点となる聖魔法を持っていない。もう一つの弱点でもある火は洞窟内のため使うのが憚られる。以上の点からもボックタがいいと結論できたが、これもサフィのおかげだ。
「本当にすごいな。あとは前回消耗したものを買い揃えばすぐにでも攻略へ行けそうだな」
「ボックタでは妾も出番も多そうじゃな」
「むむむ…私も負けてられない」
今後の予定が決まったのでサフィを手招きして存分に撫でておく。これに触発されてノワールも次回からは頑張ってくれるといいのだが。
「もっと妾を労うのじゃ。昨日から寝ずに調べたのだからの」
「私だって寝てないよ」
「はてお昼の後にうたた寝してたのは誰じゃったかの?」
「わ、私じゃないよ!!」
動揺しすぎてもはや白状してるのと変わらない。昼ごはんの後は眠たくなるもんな。
「そう言えばルミアはどうした?普通に仕事してるのか?」
「あの後ルミアは家で寝て昼から仕事しておったはずじゃ。夜にはこっちに戻ると言っておったから―――」
「ただいま帰りました」
「ちょうど帰ってきたの」
「お帰りルミア。それにしても眠そうだね」
「えぇ昨日は少し白熱し過ぎました。お二人は元気そうですね?」
帰宅早々に欠伸を連発していて相当眠いのだろうが、あれで少しなのか……末恐ろしい。ぐっすり寝たはずの俺でもまだ眠いのだから彼女の眠たさは相当だろう。
「妾たちは魔物故数日程度は大丈夫じゃが、決して眠くないわけではないぞ」
「私もそうだよ!」
「「ジトー」」
ルミアだけは不思議そうな顔をしているが、俺とサフィはそうではなかった。サフィの密告を聞いてしまっているせいでノワールのそれは強がりにしか聞こえない。
「あっお風呂に入る時間だ!」
「ではその後にでも入らせていただきます」
形勢が不利になり足早にお風呂場へと逃げていった。まぁこういう所がノワールらしいけどな。
「明日は一人で買い物に行ってくるから、二人はゆっくりしててくれ」
「ならば久しぶりにノワールとぐうたらするかの」
三人で買い物に行ってもいいがこれだけ調べてくれたので、俺も頑張らねばなるまい。昼に買う物をピックアップしていたのでそう時間はかからないだろう。
「それじゃあ俺は先に寝てるから今夜は早めに寝るんだぞ」
「勿論じゃ」
「おやすみなさい」
ノワールには悪いが先に寝させてもらう。朝にたっぷり寝たつもりでもまだ睡眠が必要らしく、瞼がすぐさまおりてきた。