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15.ルミアとデート

少し長めです

 木漏れ亭をでて最初に立ち寄ったのはおしゃれお店だった。まぁ単純に朝食を食べてないからである。


「初めてのお店ですか?」

「何回か来たことがあって美味しかったので、クレト君にもどうかと思いまして――」


 ギルドにも近い場所ではあったが全く知らないお店だったが知る人ぞ知る名店なのか朝から人が多い。

 運ばれてきたのはサンドイッチで朝食には持ってこいだった。


「…ッ美味しい!」

「気に入ってもらえて良かったです」


 こんな美味しいお店を知らなかったとは衝撃的だ。普段通る道でも意識しないと気づかないことがあるのだと感心しつつ、あまりの美味しさに無心でバクバクと食べ進めていく。


「いやー美味しかったです!また来たいですね」

「ええ次回はお二人も連れて行きましょう」

「この後はどこに行くんですか?」

「王都をぶらぶらするつもりですよ」


 てっきり王都の観光名所を巡るのかと思っていたが違ったみたいだ。王都はとても広いので半日程度では行ける所は限られる。

 お互いに食べ終わり早々に店をでたが、チラチラとこちらを見てくるルミアさん。


「何か付いてますか?」

「そうではなくて、私たちはデートしてますよね?」


 もじもじと今一つ核心が掴めない。デートと言えば、待ち合わせやデートスポット巡りなどが思い浮かぶが、たぶんそういうことではないのだろう。手をくねくねして―――そうか謎は全て解けた!


「気づかなくてすみません」

「あっいえ、ありがとうございます」


 ルミアさんの手を握りようやくデートらしくなり、照れてる彼女は新鮮で思わず見惚れてしまう。

 その後はルミアさんの案内で、有名な屋台や劇など王都を満喫した。昔来た時にはなかったものばかりで、子どものようにはしゃぎ興奮しっぱなしになり喫茶店で一息つくことにした。


「ルミアさんと俺の好みって合うんですね!」

「間違いではありませんが、今回はクレト君が好きそうな場所を選んだのですよ」

「でもよくわかりましたね?」

「ふふっ事前に調査済みです」


 小悪魔的笑みを浮かべるルミアさん。しかし王都で俺のことを知っている人っていたかな……いたとしても好みまでは分からないと思うんだけどなぁ。


「不思議そうな顔をしていますね。ヒントは昨日ですよ」

「昨日ですか……ひょっとしてサフィですか?」

「大正解です」


 それゃあ詳しいわけで昨夜の言い回しはこのことだったのか。だから敢えてサフィと一緒に帰ったのか……俺に送られるのが嫌とかではなくて本当に良かった。


「サフィさんはクレト君のことをよく見てますからね。意外な一面なんかも教えてくれましたよ?」

「一体何を教えたんだ!?」

「内緒ですよ、次はノワールさんにも聞きたいですね」

「その際は是非俺もいるときにしてください」


 帰ったら何を言ったのか聞き出すとして意外な一面ってなんだろう。


「三人の仲がよくて良かったです。喧嘩でもしたらどうしようかと思っていましたよ…」

「時々ノワールさんは容赦ない時もありますが、お二人とも良くしてくれてます。初めて三人で話した際は何を言われるのかと内心ビクビクしてましたよ」


 ―――お二人には内緒ですよと付け足したが、成る程ノワールは俺にだけじゃなく素でSっ気なのか。たまに覗かせるあの笑みは肝を冷やされるからな。


「サフィは如何にも頼れるお姉さんって雰囲気ですが、何処か抜けてる所もあってそこがかわいい所でもあります。逆にノワールはいつも何を考えているのか分からないけど、甘えん坊な時もあれば妙に恐ろしいと感じる時もあって不思議ちゃんですね」

「よくお二人のことを見ているのですね。人になったのは最近ですよね?」

「一週間前くらいですかね……あの時はひどく驚きましたよ。その反面嬉しくもありました」


 あの時は一人ぼっちで心が参っていた。その時に駆けつけてきた二人は、まるで姫を助けに参上した勇者の様に見え心が高鳴ったものだ。


「やっぱり羨ましいですね……そろそろ宿屋に帰りましょうか」

「わ、分かりました」


 ボソッと何か溢した様な気がしたけど、暗い表情が一点いつものルミアさんに戻っていた。それにしても帰るにはまだ明るい時間だけど、予定でもあったのかな。

 幾分か足取りが早いように思え何処と無く焦ってるみたいで声を掛けるのを憚られ無言で帰路に立った。


 宿屋の人に一人追加で泊まることを伝えたら、「さらに女性を増やすのですか?」とでもいいだけな視線を向けてきたが、他に空いてる部屋もなかったらしく渋々了承してくれた。


「本当にルミアさんも泊まるんですか?今住んでる家はどうするんですか?」

「私がいてはダメですか?」

「…全然いいですよ!」


 否とは言えず変な言葉遣いになってしまった。

 腰を落ち着かせゆっくり話をしようとするが、既に結果は出てるのかもしれない。


「私はギルドの寮に住んでますので空けてても問題ないです」

「俺が問題あるんですがね……何でもないです!」


 ボソッと呟いたのを聞こえてしまったのか、女性がしてはいけない顔をしていた。彼女は立ち上がりそのままベッドへと腰掛け目の前にやって来た。まさか怒ってらっしゃる?


「私だってもっとクレト君と一緒にいたいです。でも私にはダンジョン攻略できるほどの力は持ってません。だからこういう時くらいしか――」

「ルミアさん――」

()()()。私だけさん付けはやめてください。それから敬語も不要です」

「あ、はい」


 有無を言わせない迫力で言われ反射的に返事をした。ルミアさん――ルミアはお姉さんって感じだから、少し抵抗がある。


「では早速呼んでください」

「えぇと……ルミア」

「照れますねクレト君」


 このかわいい生き物は何だ!?思わず抱きつきたくなり、気づけば実行していた。


「すみません、あまりにかわいくて――」

「嬉しいです。クレト君からしてもらえるとは思ってもいなかったです」


 距離を取ろうとしたらルミアも手を回し離そうとはしなかった。この流れは昨日もあったような……遠回しにヘタレって言われてる?

 そのまま上目遣いで見つめ合いルミアが目を閉じ、デジャヴを感じた。三度目ともなればテンパることもなくそっと唇を落とす。


「嬉しいのですが慣れた感じがしますね」

「あはは気のせいですよ」

「冗談ですよ。すごく幸せを感じています」


 やはり女性は顔を隠したくなるのか胸元に埋めてきて、これまた押し倒される。もしかして世の女性たちはこれが当たり前なのだろうか。

 そのまま視線が合い唇が触れ合った。啄みから情熱的なものへと変化していった。もしやここで大人の階段を登ってしまうのか……すまないサフィ、ノワール。


「ルミア」

「クレト君」


 最早言葉は不要とばかりに目を閉じその瞬間が―――


「たっだいま~」

「もっと静かに入らんか」

「「……」」

「「あっ」」


 訪れることはなく二人が訪れた。とても気まずい…果たしてここで取るべき行動は何が正しいのか誰か教えてほしい。意外にも最初に動いたのはルミアだった。


「お早いお帰りでしたね。絶賛お取込み中ですのでお引き取りを」

「無理だよ!私たちがいないことを見越して計画していたの?」

「危ない所じゃった、やはりルミアは侮れんの」


 これが修羅場と言うやつか。打つ手がなくどこか他人事の様に感じてしまうがそれは許されないらしい。


「どうしますかクレト君?どうせなら二人っきりが良かったのですが、見られながらでもいいですか?」

「よくないです!!」

「ふふっからかい過ぎましたね。お二人とも落ち着いてください」


 そっと横を向くと(ノワール)と視線がぶつかり、まるで獲物を狙っているかの様な臨戦態勢で物理的に食べられそうだ。サフィはいつもと変わらず冷静かと思えば目がやばい。縦に大きく見開かれいてあの目はドラゴンが怒っている時に見られるものだ。血の気が引いていくようで、桃色空間から地獄の淵へと叩き落された気分で生きた心地がしない。

 二人を落ち着かせ何とか人の姿に戻らせ説明をしようと―――


「ルミアの冗談だから一旦冷静になろう!」

「「()()()?」」


 ますます殺気が強まった…。


「お、落ち着け彼女だけさん付けだったから名前呼びに変えたんだよ」

「ふ~ん今夜は寝かさないからね」

「朝まで話し合いじゃ」

「ふふ望む所です」


 いやいやいやいや寝させてくださいよ…ダメ?俺が悪い?

 やれやれこうなったら俺も黙ってはいられない。そっちがその気はなら俺にだって考えがある。(おもむろ)にベッドから立ち上がり地面へと膝をつき―――


「どうしたのじゃ?」

「「??」」

「寝させてください!!」


 土下座した。人生初の土下座ではあったが完璧だと自分を褒めたい。これを見せられた相手は受け入れること間違いなし――


「「「却下です(じゃ)」」」


 なんだけど……。渾身の一撃(どげざ)は見事に打ち砕かれ、結局陽が昇る頃に(ようや)く睡眠にありつけた。

長くなりましたが次回からはBランクダンジョン制覇に向けて動き出します。

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